暗号資産上場投資信託(ETF)は、デジタル通貨市場への投資を比較的容易にし、投資家は仮想財布や鍵の管理に伴う手間やセキュリティ・リスクを回避することができる。
しかし、そのようなETFにはかなりのデメリットも存在する可能性がある。SECの規制によると、現在市場に出回っている暗号資産ETFは、スポット暗号資産に直接投資することはできない。その代わり、個人が暗号資産の先物契約や暗号資産を保有する企業に投資することを認めている。
2021年11月に3兆ドル近くまで急騰した世界の暗号資産市場は、その後10億ドル以下にまで急落している。リスクオフといくつかの暗号資産取引所が資金の引き出しを停止したことが重なり、Bitcoin の価格は2万ドル以下まで下落した。デジタル通貨は、年初来の価値の半分以上を損失している。
一方、今年これまでで最もパフォーマンスが悪かった非レバレッジ型ETFの中には、暗号資産やデジタル資産に関連するETFがすべて含まれている。例えば、Valkyrie Bitcoin Strategy ETF (NASDAQ:BTF)とGlobal X Blockchain & Bitcoin Strategy ETF (NASDAQ:BITS) はそれぞれ年初来約56.9%と66.5%下落している。
しかし、暗号資産の暴落は、最もホットなデジタル資産とそれらにアクセスできるETFのいくつかに投資の機会を作り出したのも事実である。しかし、多くのアナリストは、暗号資産市場がこうした下落から回復するには数カ月かかると指摘している。
このような背景から、暗号資産のブルとベアの両方へのエクスポージャーを提供するProFundsの2つのETFを紹介しよう。
ProShares Bitcoin Strategy ETF
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現在の価格:12.35ドル
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経費率:年率0.95%
ProShares Bitcoin Strategy ETF (NYSE:BITO) は、2021年10月19日に始値40.88ドルで取引を開始した。それは、ビットコインのリターンへのエクスポージャーを提供する米国初の暗号資産ETFとなった。過去数ヶ月の間に、他の同様のETFが米国でデビューしている。
BITOはビットコインに直接投資するのではなく、期近のビットコイン先物のパフォーマンスを連動対象としている。多くの読者がご存知のように、ビットコイン先物のパフォーマンスは、ビットコインのスポット価格を正確に反映するものではない。
先物市場は通常、ある資産の先物価格がスポット価格より高い「コンタンゴ」で取引される。これらの先物ETFは、定期的に、通常は毎月、先物の契約をロールする必要がある。そのため、BITO株はロール・イールド・リスクを抱えている。
設定以来、BITOは約70%急落して12.3ドルとなり、現在は史上最安値付近で取引されている。また、同ETFは前年同期比57%の値下がりとなっている。
BITOやその競合は、その高いボラティリティのために、資産クラスとしてほとんどの投資家に適切ではないかもしれない。とはいえ、BITOは証券口座を通じて便利に暗号資産に投資できるため、長期投資家にとってビットコインをより身近なものにしている。BITOは現在、約6億5100万ドルの運用資産額を誇っている。
ビットコインとBITOは現在、株式市場と相関して取引されているような状況である。しかし、マクロ経済の逆風の中、暗号通貨市場はさらに下落する可能性があり、BITOの見通しは弱気かもしれない。
2. ProShares Short Bitcoin Strategy ETF
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現在の価格:41.30ドル
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経費率:年率0.95%
ProSharesは現在、ビットコインの強気派のみならず弱気派のためのETFも提供している。現時点では、個人投資家が暗号資産取引所でビットコインをショート・スポットすることは容易では無い。
ProShares Short Bitcoin Strategy ETF (NYSE:BITI)は、投資家がビットコイン先物契約を通じてビットコインのショート・エクスポージャーを得るのを助けることによって、この難題に取り組んでいる。BITIは暗号資産の価格下落から利益を得るように設計されており、CME Bitcoin Futures Indexの日々のパフォーマンスのインバース(または-1倍)を提供する。過去に取り上げた他の多くのインバースETFと同様に、BITIはビットコインの価格に対する短期的な投資に適しているのだろう。
このインバースETFは、6月21日に発売されたばかりである。BITIは38.51ドルで取引を開始した。このETFは取引開始2日目に87万株以上、金額にして3500万ドル(約35億円)の取引があった。このETFへの関心は、今のデジタル通貨市場のもろさを浮き彫りにしている。
BITIは、特に短期の暗号資産の弱気派、または現在の暗号資産の保有を回避したい人に魅力的に映るだろう。日次リターンの複利効果により、保有期間が長くなると、目標リターンとは大きく異なるリターンになる可能性が高いだろう。