[ニューヨーク 9日 ロイター] - 米国の大手銀行は、融資先のエネルギー企業が経営破綻した場合に、担保となっている油田・ガス田などエネルギー関連資産を引き取って一定期間保有できる態勢作りを進めている。事情に詳しい関係者がロイターに明らかにした。
米銀がこうした取り組みに乗り出すのは、やはり原油安から多くのエネルギー企業が破綻した1980年代末以降初めてだ。
新型コロナウイルスの世界的流行と供給過剰による原油価格急落がエネルギー企業を直撃した。米国でシェール油田・ガス田の開発を手掛けるエネルギー企業は負債を抱えている。
埋蔵石油・ガス資産を担保にした銀行融資は推定で2000億ドル余りに上るが、エネルギー企業は売上高が落ち込み、石油・ガス資産の評価額が低下。一部の企業は返済が不可能となる恐れを明らかにしている。
銀行は、融資先のエネルギー企業が破綻して担保となっている油田やガス田を引き取っても、こうした資産を維持しなければ、安い時価で手放さなければならない。一方、銀行が別会社を設立して石油・ガス事業を保有させれば、資産の価格が持ち直すのを待ってから売却できる。
関係者3人によると、JPモルガン・チェース (N:JPM)、ウェルズ・ファーゴ (N:WFC)、バンク・オブ・アメリカ (N:BAC)、シティグループ (N:C)の大手米銀は、いずれも石油・ガス資産を保有する別会社の設立を進めている。大手銀はこの分野で経営のノウハウを持つ人材の獲得も検討しているという。
関係筋によると、大手銀は現物コモディティー業務で制限を受けており、こうした計画を実行するには規制の緩和が必要。銀行側は、エネルギー関連資産の保有が1年程度であるため、長期間の保有を認めないとする米連邦準備理事会(FRB)の規制をクリアできると期待している。