[ワシントン 9日 ロイター] - 米道路交通安全局(NHTSA)は9日、米電気自動車(EV)大手テスラの運転支援システム「オートパイロット」を巡り、テスラ車83万台への調査を強化していると発表した。新たなエンジニアリングの分析を進めているという。この種の分析はリコールを求める場合に事前に実施しなければならないとされている措置。
NHTSAは昨年8月、テスラ車の止まっていた緊急車両への衝突事故や、同様の内容の10件以上の事故を理由として、76万5000台を対象にオートパイロットの性能についての予備的な調査を開始。その後にさらに同様の事故6件を確認したという。
NHTSAは、運転者が注意を払うのをこうしたテスラ車が適切に担保しているかどうかを調べている。同局によると、調べている事故事例の大半で運転者は、注意を払わせるための機能の使い方を守っていた。このことから、機能の有効性についての疑念が生じているという。
米運輸安全委員会(NTSB)は2020年、オートパイロットのテスラ車による18年の死亡事故を受けて、運転者の動きを監視する機能の「効力がない」としてテスラを批判。NHTSAについても、監督を怠っていると指摘していた。
NHTSAによると、直近の調査は衝突についての現行の分析を強化し、追加のデータを評価する狙い。運転手自身がきちんと注意を払うことをオートパイロットがどの程度損ない、人間の行動上の安全リスクをどの程度悪化させているかを調べているという。
NHTSAによると、止まっていた緊急車両や道路工事車両に衝突したオートパイロットのテスラ車事故では死亡が1件、負傷が7件報告されている。調べている事例の大半で、前方衝突警告が作動したのは衝突のまさに直前で、自動緊急ブレーキが作動したのは衝突事故事例の半分程度にとどまっていた。オートパイロットの車のコントロール機能が解除されたタイミングは、平均して最初の衝突の1秒前よりも余裕がなかったという。
NHTSAによると、オートパイロットの衝突事故106件も調べており、このほぼ半数で、緊急の運転操作が必要な際に運転者が十分に反応できていないことが示唆された。
同局は事故に際して運転者が車の部品を正しく使っていても、正しい操作をしていなくても、あるいはメーカーが意図しない使い方をしていても、いずれにおいてもシステムの欠陥が存在する可能性が排除されないとしている。車両数が抑制される高速道路ではない一般道路や、雨や雪や氷など視界に問題がある際にオートパイロットの機能が制限されるかもしれないとテスラが認めている点も、調査の対象にしているという。
NHTSAは米ゼネラル・モーターズ(GM)やトヨタ自動車、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)など十数社の自動車メーカーにも運転支援機能についての質問を送っている。