[パリ 21日 ロイター] - パリに本部がある国際獣疫事務局(WOAH)のモニーク・エロワ事務局長は、世界各国が家禽に対する鳥インフルエンザのワクチン接種を検討し、この病気が新たなパンデミックに転じるのを防ぐべきだと訴えた。
現在鳥インフルは猛威を振るい、経済的な被害をもたらしているだけでなく死者まで出ているため、一部の国ではワクチン接種を改めて検討する動きが見られる。ただ米国などは、ワクチンを打った家禽の輸出が制限されることなどを理由に、接種に消極的な姿勢を変えていない。
こうした中でエロワ氏はロイターのインタビューで、「われわれは新型コロナウイルスの危機から抜け出しつつあるところで、そこではいずれの国でも仮説に過ぎなかったパンデミックが現実化したのを実感した」と訴えた。
その上で「国際貿易を行っているほとんど全ての国が今、鳥インフルの感染に見舞われており、恐らくは(感染をコントロールするための)主な手段であるシステマティックな殺処分に加え、ワクチンを議論するべき時だ」と語った。
WOAHの調査では、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)向けワクチンを接種した家禽の輸入を認めるとした加盟国は全体の25%にとどまっている。
それでも欧州連合(EU)は昨年、鳥インフルのワクチン戦略を実行することに合意。2021/22年に家禽の殺処分に伴って業界向けに約10億ユーロの補償を支出したフランスが、EU域内で最初にワクチン接種を開始する見通しだ。
エロワ氏は、EUの動きで他の地域にもワクチン接種が拡大することを期待。「EUのような大規模輸出ブロックがワクチン接種に乗り出せば、波及効果があるだろう」と述べた。
WOAHは21日から、HPAIの世界的な抑制を話し合うための総会を5日間の予定で開催している。