[キーウ 17日 ロイター] - ロシアは17日、黒海経由のウクライナ産穀物輸出に関する合意の履行停止を発表した。食料価格の高騰を招いて低所得国が危機的状況に陥る恐れがあり、国連のグテレス事務総長は「あらゆる場所で世界の困窮している人々に打撃を与える」と非難した。
合意停止の数時間前には、ウクライナ南部クリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋で爆発が起き、橋が破損して2人が死亡。ロシア政府はウクライナによる海上ドローン攻撃との見方を示し、道路橋に対する「テロ攻撃」だと非難した。
ロシア大統領府はクリミア橋が破壊されたことと、穀物合意停止は関係ないと説明。
ペスコフ大統領府報道官はロシアが見返りに求めた同国産食料・肥料輸出の促進に関する合意が「残念ながら実施されていないため、合意の効力は消滅した」と述べた。
グテレス国連事務総長は、ロシアの決定により同国産穀物・肥料の輸出を促進する合意も停止したと示唆した。
ペスコフ報道官は「ロシア関連の部分が履行され次第、合意に復帰するだろう」と述べた。
米ホワイトハウスはロシアの合意停止が「食料安全保障を悪化させ、多くの人々に痛手を与える」と非難。ブリンケン米国務長官はロシアの合意停止を非良心的と断じた。
<アフリカに深刻な影響も>
ウクライナとロシアは穀物や食料の世界有数の輸出国で、輸出停止が国際的な食料価格の高騰を招く恐れがある。
国際救助委員会(IRC)の東アフリカ緊急ディレクター、シャシュワット・サラフ氏は「アフリカの角」と呼ぶアフリカ東部が過去数十年で最悪の干ばつに見舞われる中、ソマリア、エチオピア、ケニアに深刻な影響があると予想した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアが合意に不参加のままで穀物輸出を再開するシナリオを提示。
恒例のビデオ演説で「ウクライナ、国連、トルコが共に(貨物船が安全に航行できる)食料回廊と貨物船検査の運用を保証できる」と述べ、国際社会にとって「脅しが通用しないことを示す機会」で「ロシアの狂気からの保護を図る必要がある」と訴えた。
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