■事業内容
富士ソフト (TYO:9749)の報告セグメントは、SI事業、ファシリティ事業、その他の3つから成る。
主力のSI事業はシステム構築とプロダクト・サービスに大別され、さらにシステム構築は組込系/制御系ソフトウェアと業務系ソフトウェア、プロダクト・サービスは狭義のプロダクト・サービスとアウトソーシングに細分化される。
また、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他はBPOサービスやコンタクトセンター、再生医療等を行っている。
1. 屋台骨である組込系/制御系ソフトウェア
SI事業のシステム構築区分に属する組込系/制御系ソフトウェアは、全社売上高の25.8%(2022年12月期上期)、同営業利益の33.5%(同)を占める屋台骨であり、セグメント利益率も全社ベースを上回っている。
2022年12月期上期の実績は、売上高が前年同期比10.0%増、営業利益が同35.1%増、セグメント利益率は同1.6ポイント上昇の8.3%であった。
大幅増益・利益率向上の主因は、業況感の回復が続くなかで不採算案件を抑制できたことである。
四半期ごとの受注獲得状況(前年同期比)を見ると、2022年12月期第2四半期にかけて5四半期連続で増加している。
具体的には、2021年12月期第2四半期5.7%増→第3四半期14.4%増→第4四半期に同3.8%増(受注計上方法の見直しによる見掛け上のマイナス影響を含む)→2022年12月期第1四半期8.3%増→第2四半期11.7%増と増勢を維持している。
結果、2022年12月期上期末の受注残は従来計上方式ベースで前年同期末比4.4%増の積み増しとなった。
組込系/制御系ソフトウェアは、特定の機能を提供するために当該機器に組み込まれたマイクロコンピューター等で動作するソフトウェアであり、同社のテクノロジーは、自動車や携帯電話、TVやエアコンなどの家電製品、プリンター等のOA機器、ロボットや半導体製造装置の生産設備、信号機などのインフラ設備、CTやMRIといった医療機器など、多種多様な製品・機器で活用されている。
同社は、同領域で国内トップクラスの実績を蓄積しており、FA(Factory Automation)等の機械制御系や自動車関連に強みを有する。
車載向けに限定すれば実質的にすべての国内完成車メーカーに納入しており、国内トップシェアを誇っている。
AIやロボットによる生産性革命や自動車産業におけるCASE(Connected:コネクティッド化、Autonomous:自動運転化、Shared/Service:シェア/サービス化、Electric:電動化)の推進、社会インフラ系でのIoT活用、といった大きな潮流に対応する同社の「AIS-CRM」戦略は中長期的な収益機会の獲得につながる公算が大きいと考える。
2. 業務系ソフトウェア区分ではシステムインフラ構築を中心に各分野好調が続く
SI事業のシステム構築区分に属する業務系ソフトウェアは、全社売上高の31.0%(2022年12月期上期)、同営業利益の23.6%(同)を占める大きな柱である。
2022年12月期上期は売上高が前年同期比16.4%増、営業利益は同0.2%減となり、セグメント利益率は4.9%と同0.8ポイント低下した。
2ケタ増収ながら減益を余儀なくされたのは不採算案件の影響によるものである。
なお、不採算案件の発生は新たな分野に挑戦した結果ではあるものの、同社はプロジェクト・マネージメントの強化が重要課題であることを認識している。
四半期受注高の前年同期比は、2020年12月期第2四半期をボトムに7四半期連続で増加、2022年12月期上期においても、第1四半期8.7%増→第2四半期16.6%増と好調な受注獲得ペースを維持している。
2022年12月期上期末の受注残高は従来計上方式ベースで前年同期末比7.1%増となった。
同領域は、オーガニックな事業拡大に加え、補完的M&A戦略が奏功し、現在では、流通業、金融業、サービス業、製造業、ネットビジネス、社会インフラ、教育、文教、医療、公共機関など幅広い業種に対し、店舗・受発注システムや生産・販売・在庫管理などの基幹システム、勘定系システム、情報システム、ネットサービスといった様々なソリューションを、コンサルティングから開発、システム構築、サポートまでワンストップで提供できる体制を確立している。
国内ITサービス市場の主戦場に位置する業務系ソフトウェア領域については、1)オンプレミス(サーバー等のITシステムを自社内の設備で運用すること)からクラウドサービス利用へのシフト、2)「守りのIT(業務の効率化がメイン)」から「攻めのIT(事業の創造がメイン)」への進化、など既存プレイヤーにとって逆風になりかねない市場の構造変化が起こっている。
このなかにあって同社は、「変化はチャンスなり」の精神で積極的な人財投資による受託開発強化を明確に打ち出し、実行している。
まさに、「挑戦と創造」という社是にふさわしい経営判断であったと弊社は考える。
この点、近年の業務系ソフトウェアの好調は、「AIS-CRM」戦略の推進を含めて、流通・サービス分野のeコマース化やデジタルコンテンツ分野の需要拡大、システムインフラ構築を中心とした分野における様々なデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)対応の加速、働き方改革をテーマとしたICT利活用の推進、セキュリティ強化等を目的とする仮想化技術導入の高まり、といった時代の流れや市場構造の変化に応えるサービスを的確に提供した結果だと言える。
また、同社は既存プレイヤーにとって「不都合な真実」という一面を持つ「アマゾンエフェクト」(アマゾン・ドット・コム (NASDAQ:AMZN)の急成長に伴い、様々な市場で進行している混乱や変革などの現象)を直視した事業戦略を推進、2020年1月には事業部を新設してネットビジネス分野での取り組みを一段と強化している。
コロナ禍での巣ごもり消費拡大には一部変調が見られるものの、小売業におけるDXニーズはBtoCとBtoBいずれの分野でも高く、中長期的な成長トレンド持続が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
富士ソフト (TYO:9749)の報告セグメントは、SI事業、ファシリティ事業、その他の3つから成る。
主力のSI事業はシステム構築とプロダクト・サービスに大別され、さらにシステム構築は組込系/制御系ソフトウェアと業務系ソフトウェア、プロダクト・サービスは狭義のプロダクト・サービスとアウトソーシングに細分化される。
また、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他はBPOサービスやコンタクトセンター、再生医療等を行っている。
1. 屋台骨である組込系/制御系ソフトウェア
SI事業のシステム構築区分に属する組込系/制御系ソフトウェアは、全社売上高の25.8%(2022年12月期上期)、同営業利益の33.5%(同)を占める屋台骨であり、セグメント利益率も全社ベースを上回っている。
2022年12月期上期の実績は、売上高が前年同期比10.0%増、営業利益が同35.1%増、セグメント利益率は同1.6ポイント上昇の8.3%であった。
大幅増益・利益率向上の主因は、業況感の回復が続くなかで不採算案件を抑制できたことである。
四半期ごとの受注獲得状況(前年同期比)を見ると、2022年12月期第2四半期にかけて5四半期連続で増加している。
具体的には、2021年12月期第2四半期5.7%増→第3四半期14.4%増→第4四半期に同3.8%増(受注計上方法の見直しによる見掛け上のマイナス影響を含む)→2022年12月期第1四半期8.3%増→第2四半期11.7%増と増勢を維持している。
結果、2022年12月期上期末の受注残は従来計上方式ベースで前年同期末比4.4%増の積み増しとなった。
組込系/制御系ソフトウェアは、特定の機能を提供するために当該機器に組み込まれたマイクロコンピューター等で動作するソフトウェアであり、同社のテクノロジーは、自動車や携帯電話、TVやエアコンなどの家電製品、プリンター等のOA機器、ロボットや半導体製造装置の生産設備、信号機などのインフラ設備、CTやMRIといった医療機器など、多種多様な製品・機器で活用されている。
同社は、同領域で国内トップクラスの実績を蓄積しており、FA(Factory Automation)等の機械制御系や自動車関連に強みを有する。
車載向けに限定すれば実質的にすべての国内完成車メーカーに納入しており、国内トップシェアを誇っている。
AIやロボットによる生産性革命や自動車産業におけるCASE(Connected:コネクティッド化、Autonomous:自動運転化、Shared/Service:シェア/サービス化、Electric:電動化)の推進、社会インフラ系でのIoT活用、といった大きな潮流に対応する同社の「AIS-CRM」戦略は中長期的な収益機会の獲得につながる公算が大きいと考える。
2. 業務系ソフトウェア区分ではシステムインフラ構築を中心に各分野好調が続く
SI事業のシステム構築区分に属する業務系ソフトウェアは、全社売上高の31.0%(2022年12月期上期)、同営業利益の23.6%(同)を占める大きな柱である。
2022年12月期上期は売上高が前年同期比16.4%増、営業利益は同0.2%減となり、セグメント利益率は4.9%と同0.8ポイント低下した。
2ケタ増収ながら減益を余儀なくされたのは不採算案件の影響によるものである。
なお、不採算案件の発生は新たな分野に挑戦した結果ではあるものの、同社はプロジェクト・マネージメントの強化が重要課題であることを認識している。
四半期受注高の前年同期比は、2020年12月期第2四半期をボトムに7四半期連続で増加、2022年12月期上期においても、第1四半期8.7%増→第2四半期16.6%増と好調な受注獲得ペースを維持している。
2022年12月期上期末の受注残高は従来計上方式ベースで前年同期末比7.1%増となった。
同領域は、オーガニックな事業拡大に加え、補完的M&A戦略が奏功し、現在では、流通業、金融業、サービス業、製造業、ネットビジネス、社会インフラ、教育、文教、医療、公共機関など幅広い業種に対し、店舗・受発注システムや生産・販売・在庫管理などの基幹システム、勘定系システム、情報システム、ネットサービスといった様々なソリューションを、コンサルティングから開発、システム構築、サポートまでワンストップで提供できる体制を確立している。
国内ITサービス市場の主戦場に位置する業務系ソフトウェア領域については、1)オンプレミス(サーバー等のITシステムを自社内の設備で運用すること)からクラウドサービス利用へのシフト、2)「守りのIT(業務の効率化がメイン)」から「攻めのIT(事業の創造がメイン)」への進化、など既存プレイヤーにとって逆風になりかねない市場の構造変化が起こっている。
このなかにあって同社は、「変化はチャンスなり」の精神で積極的な人財投資による受託開発強化を明確に打ち出し、実行している。
まさに、「挑戦と創造」という社是にふさわしい経営判断であったと弊社は考える。
この点、近年の業務系ソフトウェアの好調は、「AIS-CRM」戦略の推進を含めて、流通・サービス分野のeコマース化やデジタルコンテンツ分野の需要拡大、システムインフラ構築を中心とした分野における様々なデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)対応の加速、働き方改革をテーマとしたICT利活用の推進、セキュリティ強化等を目的とする仮想化技術導入の高まり、といった時代の流れや市場構造の変化に応えるサービスを的確に提供した結果だと言える。
また、同社は既存プレイヤーにとって「不都合な真実」という一面を持つ「アマゾンエフェクト」(アマゾン・ドット・コム (NASDAQ:AMZN)の急成長に伴い、様々な市場で進行している混乱や変革などの現象)を直視した事業戦略を推進、2020年1月には事業部を新設してネットビジネス分野での取り組みを一段と強化している。
コロナ禍での巣ごもり消費拡大には一部変調が見られるものの、小売業におけるDXニーズはBtoCとBtoBいずれの分野でも高く、中長期的な成長トレンド持続が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)