[13日 ロイター] - 米ドラッグストア大手CVSヘルス (N:CVS)などのヘルスケア関連企業は今年、インフルエンザの予防接種の開始時期を早める予定だ。例年より多くの予防接種を発注しているほか、インフルエンザと新型コロナウイルスの両方を判定できる検査を確保しようとしている。製薬企業の幹部や専門家がロイターに話した。
インフルエンザと新型コロナの両方にかかった場合、深刻な症状が出る可能性があることから、今秋のインフルエンザ予防接種は緊急性が高い。
米国予防接種活動連合の最高戦略責任者、LJ・タン氏は、ワクチンの製造企業が今年、通常より20%上回る2億回分近くのインフルエンザ予防接種を米国で供給するという。
CVSは例年の倍以上となる約1800万人分のインフルエンザ予防接種を提供する予定。同業のウォルグリーン・ブーツ・アライアンス (O:WBA)も通常より在庫を増やしている。
英製薬のアストラゼネカ (L:AZN)はこの日、インフルエンザの予防接種「フルミスト」を米国で今年初めて出荷したと発表。当初の計画よりも米国での生産量を25%増やしているという。
インフルエンザの予防対策を失敗すると、新型コロナの検査能力が逼迫する可能性がある。新型コロナ検査は依然として1日に必要な量を600万─1000万回分下回っている。
CVSのラリー・マーロ最高経営責任者(CEO)は「症状が出た際に『これはインフルエンザなのか、新型コロナなのか』と迷う事態を防げれば、新型コロナ検査の需要も減る」と指摘。CVSはまた、インフルエンザと新型コロナ双方を同時測定できる検査も確保しようとしていると述べた。米当局は同時測定できる検査を7月に承認した。
新型コロナの感染件数が再び増加する中で、米国の医療機関では秋に負担が増すことがすでに見込まれている。保険指標評価研究所は向こう数カ月間で新型コロナ感染件数が増え、死者数が現在の約16万人から12月までに約30万人に上ると試算する。入院患者は75%近く増えるとみている。
米疾病対策センター(CDC)によると、新型コロナの感染拡大を抑えるためのソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)対策が、インフルエンザの感染も抑えることが示されている。対策を続ければインフルエンザの感染拡大を今季、抑えられる可能性があるということだ。
ただ、患者や医療従事者を新型コロナ感染から守る必要があるため、インフルエンザの予防接種が困難となる状況も想定できる。ウォルグリーンの報道担当者は「熱やその他の症状が出た場合、その患者は医者に相談するように言われ、予防接種は先送りされる」と述べた。
CVSは例年よりも早く予防接種を開始する予定だ。今月末から始める可能性がある。例年は10月ごろに始めるが、今年は早くインフルエンザの季節に備える。
ただインフルエンザの予防接種が早すぎると、時間の経過とともに効果が薄れた場合、冬の終わりにインフルエンザにかかる恐れがあるとする研究結果もある。