[ロンドン 15日 ロイター] - 世界は慢性疾患罹患率の上昇と伝染病のまん延および公衆衛生政策の失敗という二重苦に悩まされているとする論文が、医学誌「ランセット」に掲載された。
論文は、新型コロナウイルスの出現が肥満や糖尿病といった慢性疾患の罹患率の上昇と重なり、さらに大気汚染などの環境リスクも加わることで、新型コロナウイルス感染症による死者数が激増した、と指摘している。
この論文は世界の疾病負荷を評価するプログラム「The Global Burden of Disease」(GBD)がまとめたもので、204カ国・地域で286の死因と369の疾病・けが、87の危険因子を分析。この種の論文としては最も包括的な内容となっている。
論文では、世界的に50歳以上の健康不良の主因は虚血性心疾患や脳卒中、糖尿病だと指摘。一方、10歳から49歳までの若年層では、けがやHIV(ヒト免疫不全ウイルス)/AIDS(後天性免疫不全症候群)、腰痛、うつ病性疾患が大半を占めているとした。
また慢性疾患率の上昇と予防可能な危険因子に対応する公衆衛生政策上の不手際とが結びついた場合、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)などの緊急事態に際して人々がぜい弱になる、と述べている。
ランセットの編集長、リチャード・ホールトン氏は、世界中で数百万人が抱える高血圧や高血糖、肥満、高コレステロールといった慢性疾患の症状が、新型コロナウイルス感染症による死者数がこれまでに100万人を超す事態を招く重大な要因となった、と指摘した。