[ワシントン 7日 ロイター] - 米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は7日、バイデン政権は貿易自由化と市場開放に向けた取り組みを「断念」したわけではないが、そうした政策によってサプライチェーン(供給網)を弱め、米国の労働者と環境に害を与えることはもうできないと述べた。
講演で、米産業を再建する政府の取り組みは貿易政策を補完するものでなければならないとし、バイデン政権が従来の自由貿易取引に消極的との批判を否定。「われわれは市場開放、自由化、効率化を断念したわけではない」とした一方、「しかし、われわれのサプライチェーンをさらに弱体化させ、製造業を衰退させ、地球を破壊するという代償を払うわけにはいかない」とした。
また、関税を撤廃するというこれまでの伝統的な貿易取引は生産拠点の海外移管や海外企業への業務委託、産業の空洞化、サプライチェーンの弱体化を招くとし、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によってこれらが露呈したと指摘。ただ、半導体や研究、インフラ、クリーンエネルギーなどへの投資を通じた産業政策を重視する米国の新たな姿勢によって世界各国が自国の利益のみを追求し、強国が繁栄する「自然の状態」に世界経済が変化することはないとし、「これはバイデン政権のビジョンではない」と強調した。
その上で、国内経済の重要な優先事項を認識する貿易ルールと、各国の国民の見通しを改善するための他国との協力が必要だとし、「この目標を実現するためには、産業政策と貿易政策が互いに補完し合わなければならない」と語った。
さらに、従来の貿易ツールや制度では、中国の「透明性のない、非市場的な、国家主導の産業支配政策」による歪みに対応できず、自由市場国の労働者の競争力を制限するとした。