ドル/円
正午現在 76.62/64 1.4394/97 110.29/34
午前9時現在 76.65/70 1.4437/40 110.64/68
NY17時現在 76.69/71 1.4432/37 110.65/70
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[東京 24日 ロイター] 正午のドル/円は、ニューヨーク午後5時時点から弱含
み、76円後半で推移している。ドルの上値の重さが意識され始めていたが、ムーディー
ズによる日本国債格下げによる小幅な円売りや野田財務相の緊急記者会見をにらんだ介入
発表期待による小幅なドル買いが出て、ドルは底堅い動きになった。しかし、会見で発表
されたのは介入実施でなく、企業による海外企業買収などを促進する円高対応緊急パッケ
ージ。介入期待が肩透かしに終わり、パッケージの円高是正効果は限定的との見方も出て
一時的にドル売りが強まる場面もあった。
ドル/円は、長期の下落トレンドのなかで19日に最安値を更新したあと、今週は介入
警戒感から76円後半を中心に底堅い推移が続いていた。ただ、前日海外市場で一時76
円半ばに水準を切り下げるなど、ドルの水準は緩やかに切り下がりかけていた。
しかし、きょうは早朝にムーディーズが日本を格下げし、ドル/円は10銭程度上昇。
さらに、野田財務相が緊急会見すると伝わり、介入を発表するのではないかとの期待感か
らさらに10銭程度上昇して、ドル/円は76円後半の水準を確保。一時は76.88円
まで上値を伸ばした。
ただ、76円後半では月末接近を意識した輸出企業の売りも出て売り買いが交錯。ドル
/円は高値もみあいのなかで野田財務相の会見を待った。介入期待はそれほど強いもので
はなく「介入を発表するための会見ではないだろう。代表選出馬の関連か、円高対策で会
見するのではないか」(クレディ・スイス証券チーフ通貨ストラテジスト、深谷幸司氏)
との声も出ていた。
財務相会見で発表されたのは、企業による海外企業買収、資源エネルギー確保の促進な
どを柱とする円高対応緊急パッケージ。投機的な動きを抑制するため、9月末まで金融機
関に外国為替持ち高の報告求めることなども明らかになったが、市場が期待した介入実施
の発表ではなかったことから、ドル/円は一時76.58円まで急速に売られた。「銀行
の持ち高をチェックしても、海外のヘッジファンドなどのポジションまでクリアになると
も思えない。緊急パッケージの円高是正効果は限定的だ」(住友信託銀行マーケット・ス
トラテジスト、瀬良礼子氏)との声が聞かれる。
ただ、野田財務相が会見で「投機的な動きがないかこれまで以上に注視し、必要なら断
固行動する」と述べたこともあり、市場の介入警戒感は続いている。このため、ドル売り
一巡後は76円後半で下げ渋った。
<日本格下げの円への影響は限定的>
ムーディーズは日本の格付けをAa2からAa3に引き下げたと発表したが、ドル/円
の反応は限定的だった。ムーディーズは5月に格下げ方向で見直すことを明らかにしてお
り、今回の格下げは想定内だったという。
市場では「2ノッチ以上の格下げが懸念されていたが、1ノッチにとどまった。見通し
は安定的で当面は格下げがないことになり、Aaクラスが確保された」(大手銀行)と受
けとめられている。
三菱東京UFJ銀行アナリスト、井野鉄兵氏は「格下げといってもまだダブルAクラス
であり、日本国債が日本国内で消化可能という事情もある。直ちに日本国債売りにつなが
るとは考えにくく、安全通貨としての円の位置づけにも大きな変化は出ないだろう」とみ
ている。
<QE3見送りでもドル/円は上昇しにくいとの見方>
為替市場では、ジャクソンホールでのバーナンキFRB議長の講演で、米量的緩和第3
弾(QE3)には言及しないとの見方がコンセンサスになっている。ただ、その場合でも
ドル/円は上昇しにくいとの声が出ている。
「QE3期待のドルショートがいったん巻き戻され、ユーロ売りなどが起きるだろう。
ただ、ドル/円でのQE3にらみのポジションは乏しい。むしろ、ユーロ売りに押された
ユーロ/円の下げなどがドル/円を圧迫しそうだ」(国内銀行)との声が出ている。
また「ユーロ/ドルなどでドルが買い戻されるとみているが、一方で株式市場は下落す
るのではないか。リスク回避でクロス円が売られ、ドル/円を圧迫するとみている。欧州
発のリスク回避の流れもあり、QE3期待というサポートを失った株価の動きが懸念され
る」(大手銀行)との声が聞かれる。
ドル/円に対しては、米国金利を通じた影響もある。こちらからのリスクは、株価や米
指標をにらんで市場にQE3期待がくすぶり続けることだ。ただ「米10年債の2%割れ
には行き過ぎ感がある。QE3期待が残ったとしても一段の金利低下には限界がある」
(大手銀行)との見方があった。
(ロイターニュース 松平陽子)