[ワシントン 9日 ロイター] - 米労働省が9日に発表した9月4日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は31万件と、前週から3万5000件減少し、昨年3月中旬以来、約1年半ぶりの低水準となった。
経済活動の再開に伴い労働市場は順調に改善。雇用の伸びの鈍化は労働需要の減退ではなく、人手不足が要因になっていることが改めて確認された。ロイターがまとめたエコノミスト予想は33万5000件だった。
労働省が前日に発表した7月の雇用動態調査(JOLTS)は、求人件数が前月比74万9000件増の1093万4000件と、2000年12月の統計開始以降で最高となった。求人件数は1月以降増加しており過去最高の更新は5カ月連続だった。
労働市場の引き締まりが継続していることが示され、一部のエコノミストは、米連邦準備理事会(FRB)がテーパリング(量的緩和の縮小)着手時期を発表するにあたり圧力がかかるとの見方を示している。
FWDBONDS(ニューヨーク)のチーフエコノミスト、クリス・ラプキー氏は「労働市場がどの程度まで引き締まっているか、21─22日の連邦公開市場委員会(FOMC)で白熱した議論が予想されるだろう。政策担当者が最新のデータに注目すれば、テーパリング開始だけでなく、利上げ開始の最も厳しい条件も達成に近づいていると見なすだろう」と述べた。
当該週は大型ハリケーンに見舞われたルイジアナ州で申請が急増したにもかかわらず、全体としては減少した。申請はカリフォルニア州、バージニア州、ミシガン州でも顕著に増加。一方、フロリダ州、ジョージア州、ニューヨーク州、ミズーリ州、テネシー州では減少した。
申請件数は2020年4月初旬に614万9000件と過去最悪を更新。この水準からは大きく改善し、労働市場が健全と考えられる水準の20万─25万件の上限近辺に近づいている。
8月28日までの1週間の継続受給件数は2万2000件減の278万3000件と、新型コロナウイルス感染拡大で経済活動が停止し始めた20年3月中旬以来の低水準となった。
8月21日までの週に何らかの失業給付を受けていた人は少なくとも1193万人。失業給付の特例加算措置が今月6日に終了したことを受け、今後は大きく減少すると予想されている。
失業保険申請件数が継続的に減少していることで、新型コロナのデルタ変異株の感染が拡大しているにもかかわらず、労働市場が底堅く推移していることが示された。ウェルズ・ファーゴ(Wファーゴ)のシニアエコノミスト、サラ・ハウス氏は「デルタ株感染拡大が近く最悪期を脱すると予想される中、雇用は9月に上向く」との見方を示した。