■今後の見通し
(1) 2016年12月期の業績見通し
ザインエレクトロニクス {{|0:}}の2016年12月期の連結業績は売上高が前期比16.2%増の4,052百万円、営業利益が同66.5%増の520百万円、経常利益が同5.0%増の556百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同7.2%増の406百万円と増収増益に転じる見通し。
テレビ向けの低迷が響いて上期までは業績低迷が続くものの、下期からの回復を見込んでいる。
売上総利益は前期比17.3%増の2,712百万円となる見通しで、用途別では産業機器向けや車載機器向けで新規顧客開拓を進めていくほか、高効率を実現した電源モジュール製品など新製品を投入することで売上規模の拡大を目指していく。
また、研究開発費は前期比14%増の1,330百万円を計画している。
16ギガビット/秒の超高速インターフェース技術や8Kテレビ等機器内の情報伝送スピードをさらに高める次世代超高速V-by-One®技術の開発を進めていく方針だ。
また、為替前提レートは120円/USドルとしている。
なお、営業利益に対して経常利益の増益率が低くなるが、これは営業外で受取配当金の減少を見込んでいることによる。
(2)成長戦略 同社は今後の成長戦略として、成長が見込まれる市場に対して自社が保有する技術開発力を生かし販売を強化していくほか、半導体の単体ビジネスからソリューション提案型ビジネスへとシフトしていくことで、収益成長を進めていく戦略だ。
また、今期は成長期に入るための「発射台」を形成する1年と位置付けている。
製品戦略としては、2015年6月より量産出荷を開始した「V-by-One®HS」の販売強化を進めていく。
高速データ伝送とノイズ低減を実現することで、機器間のケーブル本数及びコネクタの数を削減し、トータルコストの低減を実現する同製品は、今後高解像度化が進むセキュリティカメラや車載分野での成長が見込まれる。
主力のテレビ向けに加えてこれら領域での顧客開拓を国内外で進めていく方針だ。
また、今期は新たに高効率の電源モジュール製品の販売を開始する。
業界最高水準の高速過渡応答特性によりプロセッサや人工知能の電子基板の負荷が急激に変化した場合にも高速に追随し電圧変動を抑制できるほか、通常の電源システムよりも変換効率が約2%高く(4A駆動時)、周辺部品点数の削減によるトータルコストの削減を実現した製品となる。
用途としてはクラウドサーバーや高速画像処理・認識システムなど、IT機器の中でもハイエンドの市場を主なターゲットとして拡販していく考えだ。
市場別戦略で見ると、主力4分野(産業機器、民生、車載、モバイル)それぞれの市場を強化していく方針だ。
特に、車載分野ではリアシート用の液晶ディスプレイや車載カメラの普及拡大が今後見込まれており、同社にとっての成長ポテンシャルが大きい市場となっている。
カーナビゲーションのディスプレイ部分に当たるセンターインフォメーションディスプレイでは今後、3K化が進むとみられているが、従来の伝送技術では20対のケーブルが必要となることが課題となっていた。
これが「V-by-One®HS」を使うことにより2対のケーブルでデータ伝送を実現できることになり、またノイズ対策部品の削減にもつながることから、3K化の進展によって同製品の売上成長が期待できることになる。
また、車載カメラ市場では現在リアカメラの搭載が一般的になりつつあるが、今後は前後左右に搭載され、サイドミラーが不要となる時代が到来すると予測されている。
特に今後自動運転システムが普及すれば、人の眼の代わりをするカメラの搭載数は飛躍的に伸びるとみられている。
市場調査会社のテクノ・システム・リサーチ社の予測によれば、世界の車載用カメラ市場は2014年の約6,500万台から、2022年には約1.9億台と3倍に急成長する見込みとなっている。
こうしたカメラについてもフルHD程度の解像度が求められることから、「V-by-One®HS」やISPなど同社の半導体製品の売上拡大余地も大きいと考えられる。
同社ではサラウンドビューモニター用コントローラの開発も同時に進めており、将来的に自動車の「視神経」機能を同社の半導体が担っていくことが予想される。
その他、車載分野では台湾の半導体メーカーであるNovatekとドライブレコーダー向けでの共同ソリューションビジネスを展開しており、こちらの成長も見込まれる。
具体的には、Novatekの車載カメラ用SoC※の中に、同社の「V-by-One®HS」の受信用回路がライセンス提供により組み込まれており、フルHDカメラからのデータ送信用半導体として「V-by-One®HS」が採用されている。
顧客メリットとしては、ケーブル本数の削減等によるトータルコストの低減が実現できることになる。
適用市場についてはドライブレコーダー以外にも高解像度の4K/フルHDセキュリティカメラ市場向けの開拓を進めている。
※SoC…複数の機能を集積した半導体チップ。
セキュリティカメラ市場については、今後東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて首都圏を中心に高解像度カメラの普及拡大が進むことが予想されている。
セキュリティカメラに関しては、PTZ機能※1付きカメラが一般的となっているが、PTZ制御を行うためにはスリップリング※2が必要となる。
スリップリングはケーブル本数分だけ必要となるため高解像度化を進めるに当たってコスト高となるだけでなく、ノイズ発生源が増えるといったことも課題となっていた。
こうした課題に対してケーブル本数を大幅に削減できる「V-by-One®HS」は打ってつけの製品と言える。
現在は日系の顧客が主力だが、最近では海外メーカーの顧客も増え始めている。
市場調査会社の矢野経済研究所の予測によれば、世界のセキュリティカメラ市場は2014年の25百万台から2018年には43百万台と年率14%の成長が予測されており、同社の関連製品の売上拡大が期待される。
※1 PTZ機能…パン・チルト・ズームの頭文字を採ったもので、カメラのレンズを遠隔操作により左右上下、及び望遠・広角にできる機能を指す。
※2スリップリング…監視カメラの可動レンズや回転液晶画面などを振るための回転コネクタ部分などに用いられる回転体機構全体を指す。
円形状の電気信号路(円盤)と接点(ブラシ)を介して信号等を伝達するため、回転に伴うノイズ発生源となる場合が多い。
モバイル分野では認証機能用として同社のISPの販売強化を進めていく。
最近ではカメラセンサーに認証機能を持たせた製品が出てきているが、同社のISPは可視光だけでなく赤外光も認識し(距離の計測が可能等)、同時に処理できるため、認証機能を加える際の使い勝手が良く、差別化要因になるものとして期待される。
その他、今期の研究開発のテーマとして超高速インターフェース技術の確立を挙げている。
現在、伝送スピードが4ギガビット/秒の「V-by-One®HS」の次世代品である16ギガビット/秒の「V-by-One®US」の技術開発がほぼ終わっており、2016年度第3四半期にリリースする予定となっている。
同製品を用いることで4Kテレビでは液晶パネルと映像処理回路をつなぐケーブル本数が従来の8対から2対に削減することが可能となる。
また8Kテレビでは32対が8対となるため、トータルコストの削減に大きく貢献することになる。
同技術はデータセンター間やサーバー基板間通信、光伝送ネットワーク通信など超高速伝送が求められる領域においての応用展開も期待できる。
同社では16ギガビット/秒からさらに高速となる32ギガビット/秒の高速通信技術確立に向けた研究開発も進めている。
(3)シリコンライブラリとの資本業務提携 2016年2月にシリコンライブラリ(株)の発行済株式数の33.4%を取得し(持分法適用会社化)、資本業務提携契約を締結した。
シリコンライブラリはHDMIやメモリインターフェース、無線通信を中心とする高速情報伝送技術を用いたファブレス半導体メーカーで、従業員数はエンジニアが約20名の規模の会社となる。
同社も高速伝送技術では高い技術力を有しているが、異なる領域で強みを持つ同社と協業することで、新たなイノベーションの加速を図り、新製品の開発やソリューションビジネスの強化につなげていく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
テレビ向けの低迷が響いて上期までは業績低迷が続くものの、下期からの回復を見込んでいる。
売上総利益は前期比17.3%増の2,712百万円となる見通しで、用途別では産業機器向けや車載機器向けで新規顧客開拓を進めていくほか、高効率を実現した電源モジュール製品など新製品を投入することで売上規模の拡大を目指していく。
また、研究開発費は前期比14%増の1,330百万円を計画している。
16ギガビット/秒の超高速インターフェース技術や8Kテレビ等機器内の情報伝送スピードをさらに高める次世代超高速V-by-One®技術の開発を進めていく方針だ。
また、為替前提レートは120円/USドルとしている。
なお、営業利益に対して経常利益の増益率が低くなるが、これは営業外で受取配当金の減少を見込んでいることによる。
(2)成長戦略 同社は今後の成長戦略として、成長が見込まれる市場に対して自社が保有する技術開発力を生かし販売を強化していくほか、半導体の単体ビジネスからソリューション提案型ビジネスへとシフトしていくことで、収益成長を進めていく戦略だ。
また、今期は成長期に入るための「発射台」を形成する1年と位置付けている。
製品戦略としては、2015年6月より量産出荷を開始した「V-by-One®HS」の販売強化を進めていく。
高速データ伝送とノイズ低減を実現することで、機器間のケーブル本数及びコネクタの数を削減し、トータルコストの低減を実現する同製品は、今後高解像度化が進むセキュリティカメラや車載分野での成長が見込まれる。
主力のテレビ向けに加えてこれら領域での顧客開拓を国内外で進めていく方針だ。
また、今期は新たに高効率の電源モジュール製品の販売を開始する。
業界最高水準の高速過渡応答特性によりプロセッサや人工知能の電子基板の負荷が急激に変化した場合にも高速に追随し電圧変動を抑制できるほか、通常の電源システムよりも変換効率が約2%高く(4A駆動時)、周辺部品点数の削減によるトータルコストの削減を実現した製品となる。
用途としてはクラウドサーバーや高速画像処理・認識システムなど、IT機器の中でもハイエンドの市場を主なターゲットとして拡販していく考えだ。
市場別戦略で見ると、主力4分野(産業機器、民生、車載、モバイル)それぞれの市場を強化していく方針だ。
特に、車載分野ではリアシート用の液晶ディスプレイや車載カメラの普及拡大が今後見込まれており、同社にとっての成長ポテンシャルが大きい市場となっている。
カーナビゲーションのディスプレイ部分に当たるセンターインフォメーションディスプレイでは今後、3K化が進むとみられているが、従来の伝送技術では20対のケーブルが必要となることが課題となっていた。
これが「V-by-One®HS」を使うことにより2対のケーブルでデータ伝送を実現できることになり、またノイズ対策部品の削減にもつながることから、3K化の進展によって同製品の売上成長が期待できることになる。
また、車載カメラ市場では現在リアカメラの搭載が一般的になりつつあるが、今後は前後左右に搭載され、サイドミラーが不要となる時代が到来すると予測されている。
特に今後自動運転システムが普及すれば、人の眼の代わりをするカメラの搭載数は飛躍的に伸びるとみられている。
市場調査会社のテクノ・システム・リサーチ社の予測によれば、世界の車載用カメラ市場は2014年の約6,500万台から、2022年には約1.9億台と3倍に急成長する見込みとなっている。
こうしたカメラについてもフルHD程度の解像度が求められることから、「V-by-One®HS」やISPなど同社の半導体製品の売上拡大余地も大きいと考えられる。
同社ではサラウンドビューモニター用コントローラの開発も同時に進めており、将来的に自動車の「視神経」機能を同社の半導体が担っていくことが予想される。
その他、車載分野では台湾の半導体メーカーであるNovatekとドライブレコーダー向けでの共同ソリューションビジネスを展開しており、こちらの成長も見込まれる。
具体的には、Novatekの車載カメラ用SoC※の中に、同社の「V-by-One®HS」の受信用回路がライセンス提供により組み込まれており、フルHDカメラからのデータ送信用半導体として「V-by-One®HS」が採用されている。
顧客メリットとしては、ケーブル本数の削減等によるトータルコストの低減が実現できることになる。
適用市場についてはドライブレコーダー以外にも高解像度の4K/フルHDセキュリティカメラ市場向けの開拓を進めている。
※SoC…複数の機能を集積した半導体チップ。
セキュリティカメラ市場については、今後東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて首都圏を中心に高解像度カメラの普及拡大が進むことが予想されている。
セキュリティカメラに関しては、PTZ機能※1付きカメラが一般的となっているが、PTZ制御を行うためにはスリップリング※2が必要となる。
スリップリングはケーブル本数分だけ必要となるため高解像度化を進めるに当たってコスト高となるだけでなく、ノイズ発生源が増えるといったことも課題となっていた。
こうした課題に対してケーブル本数を大幅に削減できる「V-by-One®HS」は打ってつけの製品と言える。
現在は日系の顧客が主力だが、最近では海外メーカーの顧客も増え始めている。
市場調査会社の矢野経済研究所の予測によれば、世界のセキュリティカメラ市場は2014年の25百万台から2018年には43百万台と年率14%の成長が予測されており、同社の関連製品の売上拡大が期待される。
※1 PTZ機能…パン・チルト・ズームの頭文字を採ったもので、カメラのレンズを遠隔操作により左右上下、及び望遠・広角にできる機能を指す。
※2スリップリング…監視カメラの可動レンズや回転液晶画面などを振るための回転コネクタ部分などに用いられる回転体機構全体を指す。
円形状の電気信号路(円盤)と接点(ブラシ)を介して信号等を伝達するため、回転に伴うノイズ発生源となる場合が多い。
モバイル分野では認証機能用として同社のISPの販売強化を進めていく。
最近ではカメラセンサーに認証機能を持たせた製品が出てきているが、同社のISPは可視光だけでなく赤外光も認識し(距離の計測が可能等)、同時に処理できるため、認証機能を加える際の使い勝手が良く、差別化要因になるものとして期待される。
その他、今期の研究開発のテーマとして超高速インターフェース技術の確立を挙げている。
現在、伝送スピードが4ギガビット/秒の「V-by-One®HS」の次世代品である16ギガビット/秒の「V-by-One®US」の技術開発がほぼ終わっており、2016年度第3四半期にリリースする予定となっている。
同製品を用いることで4Kテレビでは液晶パネルと映像処理回路をつなぐケーブル本数が従来の8対から2対に削減することが可能となる。
また8Kテレビでは32対が8対となるため、トータルコストの削減に大きく貢献することになる。
同技術はデータセンター間やサーバー基板間通信、光伝送ネットワーク通信など超高速伝送が求められる領域においての応用展開も期待できる。
同社では16ギガビット/秒からさらに高速となる32ギガビット/秒の高速通信技術確立に向けた研究開発も進めている。
(3)シリコンライブラリとの資本業務提携 2016年2月にシリコンライブラリ(株)の発行済株式数の33.4%を取得し(持分法適用会社化)、資本業務提携契約を締結した。
シリコンライブラリはHDMIやメモリインターフェース、無線通信を中心とする高速情報伝送技術を用いたファブレス半導体メーカーで、従業員数はエンジニアが約20名の規模の会社となる。
同社も高速伝送技術では高い技術力を有しているが、異なる領域で強みを持つ同社と協業することで、新たなイノベーションの加速を図り、新製品の開発やソリューションビジネスの強化につなげていく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)