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極東貿易 Research Memo(3):経営危機をバネに、経営舵取りと企業構造を大きく転換(2)

発行済 2019-08-08 15:03
更新済 2019-08-08 15:21
© Reuters.  極東貿易 Research Memo(3):経営危機をバネに、経営舵取りと企業構造を大きく転換(2)
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■会社概要2. 事業概要大手商社に比べると企業体力で劣る中堅商社は、得意分野に絞り込み「専門商社」として事業展開するケースが一般的である。

極東貿易 (T:8093)は会社設立70年の歴史の中で、基幹産業からインフラ、そして、炭素繊維やメタンハイドレートなど先端分野まで幅広い業種を対象としてきた。

事業ポートフォリオの観点から見ても、同社の事業構造は景気に左右されにくい収益構造である。

高い成長性は見込めないが安定受注・収益に寄与する重電、鉄鋼、化学プラント向け基幹産業事業、特定車種に採用が決まれば、3~5年間安定的に受注できる自動車関連事業(樹脂・塗料など)、そして、航空機やバイオマス発電、半導体関連機器などハイテク先端分野で事業展開している。

具体的に言うと、火力発電所向け計装システムは、“3.11東日本大震災”以降、更新需要も含め好調に推移している。

一方、今後原子力発電所(高浜など)の再稼働が加速すれば、同社の地震計(電子機器事業)の受注増となり、火力発電所稼働率低下による計装システム事業の受注低減をカバーすることになり、エネルギー市場変動リスクを事業間で補い合う関係となる。

個々の事業での需給変動や価格変動など各種ビジネスリスクを吸収して事業の好不調を補い合って、安定的かつバランスの取れた事業運営となっていることも同社のアドバンテージである。

多種多彩な事業の中でも、重電設備事業(2019年3月期売上高19,819百万円、売上総利益1,311百万円、売上総利益率6.6%)、ねじ関連事業(同14,558百万円、同3,043百万円、同20.9%)、自動車分野を中心とした樹脂・塗料事業(同11,407百万円、同1,187百万円、同10.4%)は百億円ビジネスの“中核事業”として、安定事業基盤を支えている。

その中でも、重電設備事業は、・鉄鋼・重電プラントメーカーの旺盛な設備投資もあり、売上高前期比27.5%と急拡大し、基幹産業関連事業復活の象徴的事業と言える。

地域的には、世界各国へ現地法人や支店を14拠点配置している。

また、2016年3月期に同社の子会社となったヱトーの現地法人、駐在員出張所11拠点を合わせると24拠点のグローバルネットワークとなり、世界各地に散らばるサプライヤー及びカスタマーに適時的確に質の高いビジネス情報を提供できるようになった。

3. 特長と強み(1) 理系出身の営業職・技術営業職は7割以上を占める通常、商社の営業現場では文化系出身者が多く、理系出身者はせいぜい2~3割程度であるが、同社では営業マンの7割以上は大学の理系出身者が占める。

同社は人事政策上、理系出身者の採用を重視してきた。

その背景には、技術営業から始まり導入・据付、そして、運用・保守までエンジニアリング全般を、同社営業マンが仕入れ先の海外メーカーにあまり頼らず、顧客に対して自主的に技術サポートできるようしてきたためである。

具体的には、同社の営業マンが自ら簡単な機械設計(設計図)をして技術提案したり、顧客からの技術的問合せにクイックレスポンスで応えたり、また、納入した装置が一時停止や故障の際にはある程度のレベルまで点検・保守などフォローすることができるようになっている。

顧客へ納入した装置が原因不明の停止や故障になった際にいちいち海外メーカーに問い合わせていたのではらちが明かないので、顧客から絶大なる信頼を得ているようである。

更に、同社では点検・保守メンテナンスを適時的確に対応すべく、保守・メンテナンスの専門子会社(日本システム工業(株))を設立して運用している。

また、同社には資源掘削関連部門があるが、大学の地質工学や自然エネルギー資源の研究をしてきた学生を積極的に採用している。

同関連部門の担当者は、海外の採掘メーカーの技術者とともに、海洋資源探査船に約3ヶ月間乗り込み、採掘装置の動作試験や立会試験まで関わっている。

(2) 顧客に大手一流企業が多く、厚い信頼関係とロイヤリティを得ている同社は沿革でも見たように、日本の基幹産業(建設、鉱山、製鉄所、化学プラント、電力、繊維、エレクトロニクス、自動車部品など)に深く関わってきたため、大手一流企業との取引が多く、大手製鉄メーカーなどでは創業以来の取引が継続しており、厚い信頼関係とロイヤリティを得ている。

一方、欧米、アジアなど海外市場でも米国自動車Big3や独自動車メーカーとも取引がある。

これは、同業技術商社と比較しても優良な顧客構造になっている。

その根拠として、中堅商社の課題である「貸し倒れ」が、同社ではほとんど発生していないことが挙げられる。

また、国内主力製鉄所にはすべて出張所(室蘭、仙台、君津、千葉、知多、広畑、水島、広島、小倉、大分)を配置して、大手商社ではなかなか小回りが効かない、“痒いところに手が届く”営業サービスで差別化を図ってきた。

製鋼の特定プロセス分野の装置を含めたプロセスソリューションの役割を同社が担っていると言える。

(3) 「誠実さ」と「粘り強さ」で取引先から高い評価大手一流企業から厚い信頼を得ている背景には、誠実で“くそ”がつくほどの真面目さが挙げられる。

顧客との交渉シーンでも顧客から「この価格でお宅は商売になるの」と言われることもあるらしい。

また、“粘り強い”人が多いとも言われる。

だから、新商材・新規事業も途中で大きな壁にぶつかってもなかなか諦めない。

その好例が、「軽量ケーブル」である。

10年程前に航空電子営業部門が海外で見つけてきて、現在話題の国内小型航空機向けに粘り強く提案とフォローを繰り返してきた。

同時に5年前からラグジュアリーカー用軽量ケーブル向けに提案営業を繰り返し、2016年にやっと採用までこぎ着けた。

そのような営業人材が多いことが技術商社にとって最大の強みである。

これは、やはり理系出身者が多いということと関連があると言えるのではないだろうか。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)

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