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アングル:ウクライナ鉄鋼業、ロシアの黒海攻撃や停電で生産停滞

発行済 2023-10-28 07:55
更新済 2023-10-28 08:00
© Reuters.  10月26日、ウクライナ南部の都市ザポロジエにある旧ソ連時代の製鉄所ザポリスタルは、人手不足や阻止されている海運での輸出、停電、ロシアのミサイル攻撃といったさまざまな脅

Max Hunder Pavel Polityuk

[ザポロジエ(ウクライナ) 26日 ロイター] - ウクライナ南部の都市ザポロジエにある旧ソ連時代の製鉄所ザポリスタルは、人手不足や阻止されている海運での輸出、停電、ロシアのミサイル攻撃といったさまざまな脅威に耐え、これまでなんとか操業を続けてきた。

ただ、昨年は第二次世界大戦後初めて、一時的に操業を停止した。ロマン・ソロボディアニウク所長は同社の先行きと、かつては強大だったウクライナの鉄鋼産業全体の将来が危ぶまれていることを把握している。

黒海経由で鉄鋼を市場に供給できるようにならない限り、ウクライナ経済にとって農業に次いで重要な鉄鋼産業が回復する見込みはほとんどない。だが、黒海の海運はロシアによる脅威にさらされ続けている。

ウクライナ鉄鋼メーカーの労働組合のオレクサンドル・カレンコフ委員長は「海運が自由にできなければ、われわれの産業は存続できず、他の全ての産業もわれわれに続くだろう」とロイターの取材に答えた。

労組の統計によると、旧ソ連時代にウクライナは年間5000万トン以上の鉄鋼を生産していた。それが2021年には2100万―2200万トンに減少し、昨年のロシアの侵攻を受け、22年には630万トンに落ち込んだ。

これは、ロシアによる領土獲得で巨大製鉄所が制御できなくなったり、破壊されたりしたことが一因だ。特にマリウポリのアゾフスタリ製鉄所は最も激しい戦闘の舞台となった。

最新のデータによると、今年1―9月期の生産量は前年同期から17%減って390万トンだった。通年では小幅ながら増加する可能性がある。

もう一つの小さな光明は、国内需要の増加だ。ウクライナが武器製造を増やし、防空壕を建設するとともに、戦争で破壊された都市の復興も始まったことにより、1―9月の鉄鋼消費量は260万トンと、ほぼ倍増した。

しかし、生産量の5分の4を輸出していた鉄鋼産業を維持するには、これでも不十分だ。

ロシアによる本格的な侵攻以前、金属セクターは全体としてウクライナのGDPの10%、輸出の30%を占めていた。

<列車と船舶>

黒海経由の輸送が事実上不可能なため、鉄鋼メーカーは製品を可能な限り鉄道で欧州に輸送している。

ウクライナから欧州に毎日移動する貨物車1800両の約半分を鉄鋼業界が占める。鉄道輸出の限界は年間約300万トンだ。

今月初め、ザポリスタル製鉄所を訪れたロイターの記者にソロボディアニウク所長は「海上輸送と比較すると4倍のコストがかかる」と語った。今年は貨物鉄道の運賃が上がり、コストがさらに20―30%押し上げられるだろうという。

ウクライナのシンクタンク、GMKセンターのスタニスラフ・ジンチェンコ代表は、今年に入って南部オデッサ周辺の港を通過した鉄鋼は10万トンに満たず、必要量のごく一部に過ぎないと述べた。

ザポリスタル製鉄所は今年、鉄鉱石と圧延鋼材の生産量240万―250万トンの3分の2を輸出する見通しだ。侵攻前の生産量は年間420万トンだった。

ロシアが農産物を積んだ船舶を攻撃しないことを決めた協定から離脱したため、ウクライナは自国とルーマニア、ブルガリアの沿岸部を通り、トルコを経由する「人道回廊」と呼ぶルートで貨物を運び始めている。

鉄鋼関係者もこのルートの利用を望んでいるが、ウクライナ領内と黒海で戦争が激化しているのに加え、ロシアがここ数週間、オデッサ周辺の港湾インフラへの攻撃を強めていることを考えると、リスクが大きい。

<停電、従業員の離職>

製鉄所は稼働を減らしているにもかかわらず、十分な人員を確保するのにも苦労している。

ザポリスタルの従業員数百人は、戦争初期に街を離れた。ザポリスタルは前線からわずか50キロしか離れておらず、ロシアの支配下にある欧州最大の原子力発電所にも近いためだ。

ソロボディアニウク氏の話では、さらに1050人が軍隊に行き、そのうち40人が死亡した。製鉄所は全体として侵攻前の労働力、約1万人の20%を失っていて「人員数を考えれば、生産能力は限界に達している」という。

鉄鋼圧延工として働くマクシム・メドコフさんは、自分の部署では人手が足りないと語る。「病気になったり、家族に問題があったりすると、難しい状況になる」と説明した。

だが、ロイターが製鉄所で話を聞いたほとんどの労働者は、働き続ける決意を固めていると語った。

23歳のオレクサンドル・ヤスナスさんは、ここにとどまるつもりだ。「引っ越したいと思っていた人たちは皆、もう引っ越した」と語った。

© Reuters.  10月26日、ウクライナ南部の都市ザポロジエにある旧ソ連時代の製鉄所ザポリスタルは、人手不足や阻止されている海運での輸出、停電、ロシアのミサイル攻撃といったさまざまな脅威に耐え、これまでなんとか操業を続けてきた。9日に撮影(2023年 ロイター/Oleksandr Ratushniak)

一方、冬が近づき、送電網への圧力が最高潮に達すると、電力供給が一層不安定化して鉄鋼生産を圧迫する恐れがある。

昨冬、ロシアはウクライナの電力系統を数百発のミサイルや無人機で攻撃し、電力網の約40%に損害を与えた。一部はなお修理が必要だ。

シンクタンクのジンチェンコ氏は「昨冬の停電で、鉄鋼生産は2分の1から3分の1に減少したとみられる」と述べた。

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