■要約ホットリンク (T:3680)はソーシャルメディアの投稿データの収集・分析ツールやSNSマーケティングツール等のSaaS事業のほか、子会社の米Effyis,Inc.(以下、Effyis)でソーシャルメディアデータの流通販売を行うソリューション事業を、また、(株)トレンドExpressでは中国市場をターゲットとしたWebプロモーションサービスや越境ECサービス等のクロスバウンド事業をそれぞれ展開している。
1. 2018年12月期の業績概要2018年12月期の連結業績は、売上高で前期比25.5%増の3,241百万円、営業利益で同160.9%増の328百万円となった。
売上高は主にソリューション事業が国内外で好調に推移したことや、クロスバウンド事業もWebプロモーションサービス「トレンドPR」※を中心に大きく成長したことにより、過去最高の売上を更新した。
また、営業利益は「e-mining」等のリスク関連事業を手掛ける子会社の株式売却益382百万円を計上したため大幅増益となったが、同要因を除けばクロスバウンド事業における先行投資費用増や、SaaS事業における仕入データ料金の値上がり、海外大手SNSのデータアクセス権販売開始に伴うミニマムギャランティーなどの費用増要因もあり実質的に減益となっている。
しかしながら、これら特殊な費用増要因を除けば、前期を上回る営業利益を確保しており、増益基調であることには変わりがない。
※「トレンドPR」とは中国人消費者をターゲットに自社商品の販売拡大を目指す企業に対して、SNS上の口コミデータ分析をもとに、最適なプロモーション施策を立案し実行するサービスとなる。
中国大手SNSのデータを利用できる強みを生かしたサービスで、マーケティングにかかる費用対効果を可視化できるだけでなく、費用対効果も高いことから注目度が高まっている。
2. 2019年12月期の業績見通し2019年12月期の連結業績は、売上高で前期比31.8%増の4,272百万円、営業利益で同89.2%減の35百万円を見込んでいる。
売上高については引き続きソリューション事業やクロスバウンド事業がけん引役となる。
クロスバウンド事業では「トレンドPR」が拡大するほか、前期に立ち上げに苦労した越境ECサービス「越境EC X(クロス)」※も第2四半期以降、売上貢献し始める見通しとなっている。
一方、営業利益に関しては株式売却益がなくなるため減益となるが、同要因を除けば89百万円の増益となる計算だ。
売上増に対して利益の増加幅が小幅にとどまるのは、クロスバウンド事業において引き続き人材投資を中心に積極投資を行うため。
同社が行うSNSを活用した販売プロモーション施策は費用対効果が高く、人的リソースが不足するほど引き合いが旺盛になっているため、これら需要に対応するための先行投資費用と位置付けている。
※「越境EC X」とは45万人の日中間のソーシャルバイヤーや、大手ECモール「Taobao」の有力店舗、有力KOLなどを活用したプロモーション施策により、集客から物流までをワンストップで同社がサポートするサービス。
3. 成長戦略同社は従来のソーシャルメディアの分析サービスから、分析したデータを「マーケティング」領域で利活用するソリューションサービスに本格的にシフトしていくことで、高成長を目指して行く戦略だ。
SaaS事業ではソーシャルメディアマーケティングツール「BuzzSpreader(バズスプレッダー)」のAI機能を拡充していくことで「クチコミ@係長」と並ぶ商品に育成していく考えだ。
また、クロスバウンド事業では「トレンドPR」に続いて「越境EC X」の成長が期待される。
日本から中国への越境EC流通額は今後も年率20%超の成長が予測されており、潜在的な需要が大きい。
また、同サービスは商品の販売額に応じた成果報酬型のビジネスモデルとなるだけに、ヒット商品が出れば収益の貢献度も大きくなる可能性がある。
当面は売上成長を優先に積極投資を行うため、利益の成長は抑えられるが、これら新サービスが軌道に乗り始めれば利益成長も加速していくものと弊社では予想している。
■Key Points・2018年12月期はソリューション事業、クロスバウンド事業の好調により連続で過去最高売上高を更新・2019年12月期も積極的な戦略投資を実行し、売上成長を加速していく方針・ソーシャル・ビッグデータを活用したマーケティング支援サービスが国内外で本格拡大する見通し(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)