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飯野海運 Research Memo(4):2018年3月期は減収、営業・経常減益だが計画超、純利益は特別損益改善で増益

発行済 2018-07-17 17:14
更新済 2018-07-17 17:20
飯野海運 Research Memo(4):2018年3月期は減収、営業・経常減益だが計画超、純利益は特別損益改善で増益
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■業績動向

1. 2018年3月期連結業績の概要
飯野海運 (T:9119)の2018年3月期の連結業績は、売上高が前期比2.4%減の81,334百万円、営業利益が同14.3%減の5,651百万円、経常利益が同9.3%減の4,631百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同9.2%増の4,243百万円だった。
2017年3月期との比較では減収、営業・経常減益だが、期初計画に対しては売上高、各利益とも上回った。


2017年3月期との比較で見ると、売上面は、内航・近海海運業が堅調な荷動きや市況回復で増収だったが、外航海運業がケミカルタンカーの市況軟化の影響で微減収、不動産業が笹塚センタービル売却及び再開発事業に伴う東京桜田ビル解体の影響で減収となり、全体として減収だった。


営業利益は、内航・近海海運業が既存契約の有利更改や想定以上の近海船市況の回復などで大幅増益だったが、外航海運業では主力のケミカルタンカーの市況軟化等の影響を受けて減益、不動産業が減収の影響で減益となり、全体として減益だった。
全社ベースの売上総利益は6.9%減少し、売上総利益率は15.4%で0.7ポイント低下した。
販管費は0.3%増加にとどまったが、販管費率は8.4%で0.2ポイント上昇した。


経常利益も減益だったが、営業外収益での受取配当金の増加(571百万円増加)や、営業外費用での支払利息の減少(314百万円減少)が寄与して、営業利益に比べて減益率が小幅にとどまった。


親会社株主に帰属する当期純利益は、2017年3月期の特別損失に計上した減損損失、固定資産売却損、用船解約金、契約損失引当金繰入額などが減少し、特別損益が改善したことにより増益だった。


なお全社ベースの営業利益増減(940百万円減益)分析は、増益要因が為替他1.3憶円、内航・近海5.2億円、オイル・ガスキャリア6.4億円、ドライバルクキャリア8.4億円、減益要因がケミカルタンカー25.2億円、不動産5.5億円としている。


2. セグメント別の概要
セグメント別(連結調整前)の概要は以下のとおりである。


外航海運業は、売上高が前期比1.1%減の61,865百万円で、営業利益が同34.8%減の1,713百万円だった。
平均為替レートは1米ドル=111円19銭、平均燃料油価格は337米ドル/MT(前期は平均為替レート1米ドル=108円93銭、平均燃料油価格257米ドル/MT)だった。
為替はやや円安で増益要因だったが、燃料油価格は上昇して減益要因となった。


オイルタンカーの市況は、OPEC(石油輸出機構)の減産継続による原油輸送量の減少及び新造船の流入により船腹供給過剰が解消されず、低水準で推移した。
ケミカルタンカーの市況は、2017年秋頃から一旦上昇に転じたが、期末にかけては輸送需要の低迷などで軟化した。
大型LPGキャリアの市況は、新造船流入による船腹供給過剰が続き低調に推移した。
大型LNGキャリアの市況は、需要期である冬場に一時的に回復した。
ドライバルクキャリアの市況は、新造船供給が限定的だったことや、穀物輸送需要や鉄鉱石輸送需要が好調に推移し、おおむね堅調に推移した。


このような事業環境下、安定収益の確保に向けて、オイルタンカーでは支配船腹の中長期契約への継続投入、ケミカルタンカーでは中東から欧州向けの新規数量輸送契約の獲得、米国オペレーターとの合弁事業会社における既存数量輸送契約の更改、大型ガスキャリアでは支配船腹の既存の中長期契約へ継続投入、ドライバルクキャリアでは市況上昇のタイミングを捉えた効率的な配船・運航などの施策を推進した。
なおドライバルクキャリアでは2018年2月末に運航効率の優れた88,000DWT型新造用船1隻、2018年3月末にハンディ型新造用船1隻が竣工した。


この結果、オイルタンカー、ガスキャリア、ドライバルクキャリアは安定収益の確保や採算の改善などで増益だったが、主力のケミカルタンカーが、市況軟化や入渠増加による収入減、燃料油価格の上昇、新造船のコスト増加などで大幅減益だった。
なおCOAでは一般的に燃料油価格変動に伴う価格変更条項(BAF)を付けているが、2018年3月期のケミカルタンカーの場合、2017年後半からの燃料油価格上昇が、事前に設定したBAFの中立価格帯内での変動であったため、燃料油価格上昇分の運賃転嫁による収益増が燃料油価格上昇に伴う費用の増加に追いつかなかった。
米国オペレーターとの合弁事業会社も市況の軟化等の理由で収益が悪化した。


内航・近海海運業は、売上高が前期比5.8%増の9,012百万円で、営業利益が同289.3%増の700百万円だった。


内航ガス輸送は安定的な石油化学ガス需要を背景に荷動きが堅調だった。
近海ガス輸送は新造船の流入圧力が低下したこと、東南アジア域において輸送需要が堅調に推移したことを背景に、2017年秋以降、市況が大幅に回復した。


このような事業環境下、内航ガス輸送では効率的な配船、定期用船契約の有利更改などの施策を推進して採算を維持した。
また新造代替船での長期用船契約を獲得した。
近海ガス輸送では不採算船の返船による船隊の効率化、契約の有利更改などの施策を推進し、採算が改善した。


不動産業は、売上高が前期比14.4%減の10,545百万円で、営業利益が同14.5%減の3,238百万円だった。
2017年3月期末に笹塚センタービルを売却した影響、新橋田村町地区市街地再開発事業(2018年着工、2021年3月建物竣工予定)が始動して東京桜田ビルを解体した影響、また2017年3月期に計上した汐留芝離宮ビルディング原状回復工事に伴う関連収入がはく落したことも影響して減収減益だった。


ただし、主力の飯野ビルディングをはじめとして所有賃貸ビルの稼働は順調に推移している。
またイイノホール&カンファレンスセンターや、スタジオ関連事業も順調である。
安定収益源であることに変化はない。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)

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