[松山市 5日 ロイター] - 日銀の若田部昌澄副総裁は5日、松山市内で行った記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大が経済、物価、金融市場にどう影響するか最大限注視していくと述べた。ただ、各国の政策対応が出てきていることもあり、過度な悲観論に陥る必要はないとも指摘した。
物価については、進まない賃上げなどを例に、需給ギャップのプラス幅拡大が物価上昇につながるメカニズムが「多少弱くなっている」と述べた。物価目標に向けたモメンタムが失われるおそれが強まる場合は、躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和を打ち出す考えを改めて示した。また、若田部副総裁は2%の物価目標が「(23年3月までの任期中に)達成可能なように努力している」と話した。
5日午前のあいさつで、若田部副総裁は欧米で議論が高まっている「日本化」に言及した。1990年代以降の日本のように低成長・低インフレに陥ることを警戒し、欧州中央銀行(ECB)や米連邦準備理事会(FRB)が金融政策の枠組みの見直しを進めているが、若田部副総裁は会見で「(日銀は金融政策の見直しを)現段階では行わない」と述べた。「(政策委員の間で)再検討すべしという声が多数派になっているわけではない」と指摘した。
マイナス金利政策を続ける理由については「政策のベネフィットがコストを上回っている」と説明、「消費者心理にマイナスの影響を及ぼしているとは思っていない」とも述べた。
日銀は、物価上昇率が2%を安定的に超えるまでマネタリーベースの拡大を続けるとする「オーバーシュート型コミットメント」を採用している。若田部副総裁は、このコミットメントが現行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和のパッケージの「大きな位置を占めている」と指摘。金融政策のコミットメントから外せば、市場に「出口戦略に向かい始めた」と誤解されるリスクがあると話した。
(和田崇彦)