[オタワ 14日 ロイター] - カナダ銀行(中央銀行)は14日、政策金利を過去最低水準に据え置く一方、量的緩和の縮小を決定した。また、インフレ率は当面はこれまでの予想を上回り続けるとの見方を示した。
中銀は、政策金利である翌日物金利の誘導目標を予想通りに過去最低の0.25%に据え置いた。同時に、毎週の国債の純買い入れを30億カナダドルから20億カナダドルに縮小することも決定した。
中銀は新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)がカナダ経済に及ぼすリスクは「大幅に低下した」とし、経済成長は上半期は予想を下回ったものの、第3・四半期には上向くと予想。声明で「今回の調整は、回復に向けた継続的な進展と、中銀の景気見通しに対する一段と力強い確信を反映している」とした。
同時に公表した夏の金融政策報告では、新型コロナ感染拡大第3波で経済成長が鈍化したとしながらも、「こうしたマイナス要因は後退しつつあり、パンデミックに関連する下方リスクは大幅に縮小した」との見解を示した。
物価情勢については、パンデミックに関連した一時要因により、インフレ率は年内を通して3%、もしくはこれを上回る水準にとどまると予想。その後は一時要因が薄れるにつれ、2022年までに2%に向けて低下していくとの見方を示した。
経済成長率については、21年は6.0%になるとし、4月時点の予想の6.5%から下方修正。22年は4.6%とし、3.7%から上方修正した。
エコノミストは、中銀が高インフレは持続可能との見方に傾きつつあるように見えるとしながらも、それでもまだ物価上昇圧力は一時的なものと見なしている公算が大きいと指摘。ロイヤル・バンク・オブ・カナダのシニアエコノミスト、ジョシュ・ナイ氏は「インフレ高進を受け、中銀が金融政策を再検証していることを示すものは何もない」と述べた。
実際、中銀はフォワードガイダンスを維持。経済に内在するスラック(需給の緩み)は22年下半期に吸収されるとの見方を変えなかった。ただ、このタイミングは依然として大きく振れる可能性があるとした。
マックレム総裁は、カナダ経済は驚異的に強靭だったことが証明されたとし、「経済再開とワクチン接種の力強い進展が経済の方向性について一段と楽観的になれる理由だ」と表明。ただ「そのプロセスは浮き沈みが多い可能性が高く、いくつかの傷跡が残るであろうことを念頭に置いている」と述べた。
また、物価上昇につながっている要因は一時的なものと見なしているとしながらも、その根強さと規模については不透明性が高いため、緊密に注視し続けると語った。
カナダ中銀は年内に国債買い入れプログラムを一段と縮小し、早ければ2022年後半にも利上げを実施すると予想されている。
BMOエコノミクスのチーフエコノミスト、ダグ・ポーター氏は「利上げが予想される時期より後ずれするリスクはウイルスによって引き起こされる一方、前倒しされるリスクはインフレ率が執拗に高止まりする場合や消費主導で経済成長が予想以上に促進された場合に生じる可能性がある」と述べた。
カナダ中銀は雇用について、パンデミック前の水準に比べおよそ50万人分の雇用が減少しているものの、今後数カ月間で力強い回復が見込まれると想定。長期的な失業率は高水準だが、その傷跡は当初の想定よりも深刻でないかもしれないとした。