Davide Barbuscia
[ニューヨーク 13日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は最近公表した2つの研究論文で、ヘッジファンドの「ベーシス取引」によって米国債市場で混乱が起きる事態に警鐘を鳴らした。
ベーシス取引は、国債の先物と現物の価格差に着目し、レポ市場で資金を調達して先物売りと現物買いのポジションを組んで収益を稼ぐ裁定取引。新型コロナウイルスのパンデミックが始まった2020年3月に起きた米国債市場の機能不全に拍車をかけた要因の一つともみなされている。
このベーシス取引に絡むヘッジファンドの国債先物の売り建てポジションがこのところ高水準に膨らんでいるとされる。
FRBが論文で懸念を示したのは、金利が上昇し、金融政策運営を巡る先行き不透明感が広がっている足元で、市場を脆弱化させるリスクをはらんだこうした取引が活発化している事態だ。
8月30日付の論文には「市場全般の価格調整が進む中で、ベーシス取引のポジションが再び緊張状態にさらされる恐れがある。これらのリスクを踏まえれば、取引を継続的かつ注意深く監視するのが妥当だ」と記されている。
また今月8日の論文は、レポ市場の調達コスト増大に伴ってヘッジファンドがベーシス取引の巻き戻しを迫られる際に市場にもたらされるリスクに言及。市場のボラティリティーが拡大し、現物や先物、レポの各市場で資金偏在が加速しかねないと述べた。
ドイツ銀行の米金利ストラテジスト、スティーブン・ゼン氏は、FRBとしてもベーシス取引の蓄積を好ましいとは思わず、いずれ抑え込みたいだろうが、ヘッジファンドを直接監督する規制手段を持ち合わせてない点が悩みどころだとの見方を示した。
20年3月にはベーシス取引の大規模な巻き戻しが米国債市場の流動性を極端に低下させる局面が見られ、今後も同じ状況は起こりえる、というのが一部市場参加者の不安だ。
バークレイズは12日のノートで「ベーシス取引は2つのリスクに対してもろさを抱えている。1つは先物売りに関する証拠金コストの増大、もう1つは現物買いに関する調達コストの増大だ」と解説した。