Takahiko Wada
[大分市 6日 ロイター] - 日銀の氷見野良三副総裁は6日、大分県金融経済懇談会後の記者会見で、企業収益の状況や足元までの物価上昇、人手不足を踏まえると「それなりにしっかりした賃上げが来年度も続く可能性はそれなりにある」との考えを示した。
ただ、賃金・物価の好循環の見極めには、多くの判断材料に好悪が入り混じる中でも「どこか」で判断していく必要があると述べるにとどめた。
氷見野副総裁はマイナス金利解除の時期や、出口戦略の具体的な順序については明言しなかった。出口戦略について「どこの段階でとあらかじめスケジュールを決めるより、何が起こっているのか虚心坦懐に見ていく」と語った。
出口戦略の具体的な順序に言及しない理由として、氷見野副総裁は、日銀の金融研究所の海外顧問を務めるオルファニデス・マサチューセッツ工科大学教授の見解を紹介した。同教授は、今年5月の国際コンファランスで、海外当局の失敗例を引きながら、可能な範囲で考え方を示すことは大事だが、出口の順序を示すことはマイナスが大きいと指摘した。
氷見野副総裁は午前のあいさつで、企業による賃金・価格設定行動の変化について、輸入物価上昇の販売価格への反映、物価高の賃金への反映、賃上げに伴うコスト増の価格への反映、価格戦略の多様化の4つの段階に分けた上で、企業の聞き取りを踏まえると「現状、いずれの段階もまだら模様のように見える」と述べた。
植田和男総裁が物価上昇の説明で使う「第1の力」(輸入物価上昇)、「第2の力」(賃金と物価の好循環)と異なる印象を与えたが、氷見野副総裁は「言い方が変わっているだけで中身が変わっているとは思っていない」と説明。「春闘を見ても、第4段階(価格戦略の多様化)が確認できるまでは何もすべきでないと主張することは全くない」とした。
氷見野副総裁は、物価の中でも食料品や日用品の上昇率が大きく「家計や中小企業に影響が大きいことは十分認識している」と述べる一方で、11月の東京都区部消費者物価指数では「輸入物価の影響が減衰してきたようなしるしが見えてきた」とコメントした。
物価の上昇圧力がなかなか減衰しない中だが、金融政策の効果の波及に1年以上かかることを踏まえれば、経済を支え賃上げしやすい環境を整える観点で「現時点では粘り強く緩和を続けるのがぎりぎり一番いい対応」と話した。
(和田崇彦)