Kentaro Sugiyama
[東京 22日 ロイター] - 政府は22日、経済界や労働団体の代表者と意見交換する「政労使会議」を開催した。政府による中小企業の労務費の転嫁対策の徹底状況などを確認し、これから本格化する春季労使交渉(春闘)での賃上げ機運を高めるのが狙い。
政労使会議の開催は昨年11月に続きこの3カ月で2度目で、昨年3月に約8年ぶりに復活してから頻度が高まっている。政府が唱える「物価上昇を上回る賃上げ」の実現には、労働者の7割が働いている中小・小規模企業が賃上げを行い全体的な水準が底上げされることが重要との認識をあらためて共有した。
政府は昨年11月、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を策定。指針に沿わない行為をすることで公正な競争を阻害するおそれがある場合には、公正取引委員会が独占禁止法と下請け代金法に基づいて厳正に対処することが明記された。
今回の会議では、政府側から国内の全1873の業界団体に対して指針を周知したこと、特段の対応が必要な22業種については所管省庁が重点的に対応することなどの説明があり、村井英樹官房副長官をトップにした関係省庁連絡会議の初回会合を1月中に開催することも表明した。
岸田首相はこれらの取り組みについて「実行あるのみだ」と強調。さらに、政労使による意見交換の取り組みが地方に波及するよう、地方版・政労使会議の開催を積極的に進めるよう関係閣僚に指示した。
経団連は16日、春季労使交渉における経営側の基本スタンスなどを示す「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)で、中小企業の賃上げにはサプライチェーン全体での取り組みや、社会全体での環境整備・意識改革が不可欠だと指摘。会員企業に対し、政府の指針を踏まえて労務費を適切に転嫁するための価格交渉を積極的に進めるよう求めた。
24日には、経営側と労働組合側がそれぞれ春闘への考え方を主張する「労使フォーラム」を開く予定で、これが24年春闘の事実上のスタートとなる。