Yoruk Bahceli Stefano Rebaudo
[22日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は今週25日に理事会を開催する。政策担当者は、インフレとの戦いにおいて勝利を宣言するのは時期尚早との認識を示しており、市場の早期利下げ観測を打ち消すのに躍起になっている。
市場は4月中の利下げ実施を予想しているが、ECBは利下げする前にインフレ率が鈍化している証拠をもっと確認したいと考えている。
1)今週の理事会では何が起こるのか?
今週の理事会で政策金利を据え置くことは確実。ECBは昨年10月の理事会で利上げを停止し、12月会合では新型コロナウイルス流行中のパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)で買い入れた債券の満期償還金の再投資を2024年末に打ち切ることを決定した。
アナリストは、ラガルド総裁が引き続き、利下げを議論するのは時期尚早であることを示唆すると予想している。一方、市場は4月に始まる合計135ベーシスポイント(bp)の利下げを織り込んでいる。
タカ派だけでなく、ヘロドトゥ・キプロス中銀総裁らハト派さえも市場の予想に対抗しようとしている。ラガルド氏は、利下げを織り込み過ぎるとインフレとの戦いでマイナスになりかねないと警告している。
ドイツ銀行の欧州担当チーフエコノミスト、マーク・ウォール氏は「ラガルド氏の反論は間接的なものになる」と指摘。「底堅い成長率とインフレを想定するECBの予想に言及し、市場の織り込み通り早期に利下げを行うとの見方に疑念が生じるよう仕向けるだろう」と述べた。
2)ECBの転換は近いのか?
市場はそう考えている。トレーダーは利下げ時期の予想を3月から4月に遅らせ、利下げ回数も先月時点の予想より1回減らしただけだ。
ドイツ連邦銀行のナーゲル総裁のようなタカ派でさえも、今年夏の利下げ実施を排除していない。転換は時間の問題のように思われる。
ECBは3月にインフレ率と成長率の新たな見通しを発表する予定であり、これで利下げの議論がスタートする環境が整う可能性がある。
3)利下げ前にインフレ率はどこまで低下する必要があるのか?
さらなる低下が必要だ。ユーロ圏の昨年12月の消費者物価指数(HICP)上昇率は前年同月比2.9%で、4月以来初めて加速した。コアインフレは一段と鈍化したが依然として3%を上回っている。
ベレンベルクのチーフエコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は、ECBは2%目標が達成できると確信するため、利下げ前に総合インフレとコアインフレが2.5%を下回ることを望むだろうとした。
投資家はインフレ率の低下により自信を持っており、スワップ市場では1年後のインフレ率を1.5%強と織り込んでいる。
4)賃金についてはどうか?
ECBは最大のインフレリスクとして賃金を挙げている。失業率はなお記録的な低水準にある。
求人情報のインディードやアイルランド中央銀行のデータによると、賃金上昇率は22年10月の5.2%から低下しているものの、昨年12月には3.8%に上昇した。エコノミストは、これは新たな賃金合意によるもので、この影響は今年に入っても続いているとみている。
ECBは政策転換を示唆する前に、第1・四半期の賃金合意を精査し、インフレ率2%と整合的とされる3%に向かって賃金の伸びが鈍化するかどうかを確認する可能性が高い。
ラガルド氏は晩春までに十分なデータが得られると予想、チーフエコノミストのフィリップ・レーン氏は4月に出るデータを検討することを望んでいる。つまり6月より前の利下げ可能性は低いということになり、ロイター調査では、6月の利下げ開始が最有力と予想されている。
5)ユーロ圏経済はどの程度心配なのか?
ECBは依然として、成長懸念よりもインフレを重視している。
昨年第4・四半期の経済成長率はマイナス0.3%の見込みで、小幅なリセッション(景気後退)にあるとされる中、利下げ開始のタイミングが4月でも夏でも実質的な違いはないとエコノミストは指摘する。
INGのマクロ部門グローバル責任者カールステン・ブレゼスキー氏は「ECBは利下げは(景気押し上げの)役には立たないと考えている。だから、インフレに注力することができるのだ」と分析している。