〇トランプ演説でインフラ関連への言及に注目〇
昨年11月からのトランプ相場の牽引役の一つだったインフラ関連株が軟調だ。
米財務長官などの就任が遅れ、プロジェクト推進体制が見えてこなかったことが影響していると考えられる。
本日のトランプ大統領の議会演説で、何処まで具体的に言及するか注目されている。
単にプロジェクトを並べるだけでなく、インフラ銀行、インフラファンド、インフラ債など金融面の仕組み、(官の航空管制システムなどを批判して)インフラ運営民営化の動きなどが焦点になる。
日本市場では、東芝の原発損失、LNG関連プロジェクト損失、2月2日に発表された神戸鋼の建機中国事業での営業損失など、インフラ関連の損失が目立ったことが重荷となっている。
果たして、儲かる事業推進はできるのか。
息の長いプロジェクトが多く、人手不足、物価や金利の上昇圧力、自然災害リスクなどを回避できる枠組みが必要だ。
中国の「一帯一路」で、(賄賂攻勢を含む)低価格競争状態になっていることからの脱皮も求められる。
2月23日、インドネシアで同国初の地下鉄トンネル工事の貫通式が行われた。
ジャカルタ中心部を南北に結ぶもので、清水建設などゼネコン各社が工事を進め、1200億円の円借款、日本製シールドマシンが使われた。
車両・運行システムは1420億円で商社、車両メーカーが受注している。
開業は19年3月の予定だが、ジャカルタの激しい交通渋滞を緩和すると期待され、ジョコ大統領は現地を訪れ、強い期待を述べた。
一昨年、高速鉄道計画は中国にさらわれたが、着工されないままで、明暗を分けている。
アジア開銀は28日、2030年までの15年間でアジアのインフラ需要は26兆ドル(約3000兆円)に上るとする報告書を発表した。
それまではアジアのインフラ需要は年間80兆円としていたので、大きく膨らんできている。
内訳は、電力14.7兆ドル、交通・運輸8.4兆ドル、通信2.3兆ドル、水・公衆衛生0.8兆ドルなど。
対象は45カ国。
現状の成長スピードが前提。
安倍首相は米国のインフラ投資だけでなく、アジアでも日本のインフラ投資を積極推進しているが、徐々に開花しつつあると見られる。
ここにきて、長期性資金を供給する金融機関に積極姿勢が出てきた。
先導役のJBIC(国際協力銀行)の近藤総裁は、21日の記者会見で一般論としつつも、「米国は発電所や空港が非常に老朽化しており、融資検討対象になる」と述べ、トランプ・ブームは継続、インフレ傾向になるとも述べた。
22日、かんぽ生命と第一生命は国内メガソーラー事業に100億円を共同投資したと発表。
昨年3月の業務提携の第1号案件。
平均利回りは年1.4%程度で投資期間20年弱。
28日には日本生命が初の海外プロジェクトファイナンス案件に1億ドルの融資を行ったと発表。
17年度からの開始を表明していたが、若干前倒しで動いてきた。
インフラ関連は途中ラップの四半期決算より、年度決算での評価が注目される。
米国およびアジアでの動きを睨みつつ、新年度に向けて評価ポイントとなろう。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/3/1号)