最近のドルとユーロは政治情勢と中銀の金融政策に翻ろうされた値動きになっていますが、ポンドもそれに仲間入りしたようです。
イギリスの欧州連合(EU)離脱をめぐる政権内の対立が有力閣僚の辞任に発展したことで、ポンドもメイ首相の支持率と同様、低空飛行が続くのでしょうか。
英中銀金融政策委員会(MPC)が早ければ8月の会合で追加利上げに踏み切るとの思惑から、6月末以降はポンドの回復基調が続いていました。
足元で発表された堅調な経済指標もそれを後押しする形でポンドを押し上げてきました。
しかし、デービスEU離脱担当相、ジョンソン外相と離脱強硬派の有力2閣僚がメイ首相のソフト路線に反対し、相次いで辞任。
政権の弱体化を嫌気した売りが出やすい地合いとなっています。
2016年6月のEU離脱を争点とした英国民投票で「残留」48%対し「離脱」52%と市場予想を覆す結果となったことで、ポンド・ドルは1.50ドル台から1.32ドル台まで急落。
その後も下げ続け、2017年1月には1.20ドルを割り込む場面もありました。
ただ、国内経済が改善に向かい、英中銀は同年11月には10年超ぶりに政策金利の引き上げに踏み切り、ポンドは今年春に国民投票前の水準である1.43ドル台に回復しました。
その後、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ加速期待を背景としたドル買いが強まり、ポンドは6月末に1.30ドル台に失速。
英中銀がFRBに追随し、引き締め路線を鮮明にするかどうか、という矢先の閣僚辞任劇でした。
英中銀の金融政策はポンド買い材料ですが、こうした政治情勢の不安定化は今後も折に触れポンドの押し下げ要因になると見込まれます。
ただ、ブレグジット問題をきっかけに、これから政局が流動化するとも思えません。
直近の調査によると、2016年の国民投票を棄権した有権者の多くが「残留」に傾いているほか、「離脱」はイギリスの経済に悪影響をもたらすとの回答が全体の半数近くにのぼるなど、EU離脱自体にネガティブな意見が増えているようです。
保守党内の離脱派が勢力を強め、ハード路線に向かわせるとのシナリオには無理があります。
EU離脱は、何よりも内容が複雑すぎ、交渉の過程で矛盾が生じやすい項目がいくつもあります。
例えば、北アイルランドの国境問題は、カトリック系住民とプロテスタント系住民の和平の歴史を考えれば、国境の壁を簡単に設置するわけにもいきません。
EUとの交渉方針をまとめるのに2年もかかった点や、その間にハード路線からソフト路線に切り替わったことも、交渉の難しさをうかがわせます。
もともとEU残留派だったメイ首相が離脱交渉を進めるのは民意を形にするためですが、さらに言えば、キャメロン前首相退陣の際、離脱派の有力議員が次々と党首選への出馬を辞退したためではなかったでしょうか。
その1人は今回外相を辞任したジョンソン氏です。
ソフト路線に異を唱えるのは一見筋が通っているようですが、離脱派による政局狙いにすぎず、合理性は見当たりません。
結局、メイ首相以外、EU離脱に真剣に取り組もうとする政治家はいないとみられます。
低支持率でどこか頼りなさげながらも奇妙な安定感のあるメイ政権の存続が、極端なポンド売りを回避させるでしょう。
(吉池 威)
イギリスの欧州連合(EU)離脱をめぐる政権内の対立が有力閣僚の辞任に発展したことで、ポンドもメイ首相の支持率と同様、低空飛行が続くのでしょうか。
英中銀金融政策委員会(MPC)が早ければ8月の会合で追加利上げに踏み切るとの思惑から、6月末以降はポンドの回復基調が続いていました。
足元で発表された堅調な経済指標もそれを後押しする形でポンドを押し上げてきました。
しかし、デービスEU離脱担当相、ジョンソン外相と離脱強硬派の有力2閣僚がメイ首相のソフト路線に反対し、相次いで辞任。
政権の弱体化を嫌気した売りが出やすい地合いとなっています。
2016年6月のEU離脱を争点とした英国民投票で「残留」48%対し「離脱」52%と市場予想を覆す結果となったことで、ポンド・ドルは1.50ドル台から1.32ドル台まで急落。
その後も下げ続け、2017年1月には1.20ドルを割り込む場面もありました。
ただ、国内経済が改善に向かい、英中銀は同年11月には10年超ぶりに政策金利の引き上げに踏み切り、ポンドは今年春に国民投票前の水準である1.43ドル台に回復しました。
その後、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ加速期待を背景としたドル買いが強まり、ポンドは6月末に1.30ドル台に失速。
英中銀がFRBに追随し、引き締め路線を鮮明にするかどうか、という矢先の閣僚辞任劇でした。
英中銀の金融政策はポンド買い材料ですが、こうした政治情勢の不安定化は今後も折に触れポンドの押し下げ要因になると見込まれます。
ただ、ブレグジット問題をきっかけに、これから政局が流動化するとも思えません。
直近の調査によると、2016年の国民投票を棄権した有権者の多くが「残留」に傾いているほか、「離脱」はイギリスの経済に悪影響をもたらすとの回答が全体の半数近くにのぼるなど、EU離脱自体にネガティブな意見が増えているようです。
保守党内の離脱派が勢力を強め、ハード路線に向かわせるとのシナリオには無理があります。
EU離脱は、何よりも内容が複雑すぎ、交渉の過程で矛盾が生じやすい項目がいくつもあります。
例えば、北アイルランドの国境問題は、カトリック系住民とプロテスタント系住民の和平の歴史を考えれば、国境の壁を簡単に設置するわけにもいきません。
EUとの交渉方針をまとめるのに2年もかかった点や、その間にハード路線からソフト路線に切り替わったことも、交渉の難しさをうかがわせます。
もともとEU残留派だったメイ首相が離脱交渉を進めるのは民意を形にするためですが、さらに言えば、キャメロン前首相退陣の際、離脱派の有力議員が次々と党首選への出馬を辞退したためではなかったでしょうか。
その1人は今回外相を辞任したジョンソン氏です。
ソフト路線に異を唱えるのは一見筋が通っているようですが、離脱派による政局狙いにすぎず、合理性は見当たりません。
結局、メイ首相以外、EU離脱に真剣に取り組もうとする政治家はいないとみられます。
低支持率でどこか頼りなさげながらも奇妙な安定感のあるメイ政権の存続が、極端なポンド売りを回避させるでしょう。
(吉池 威)