■会社概要1. 事業の概要● グループの全体像学研ホールディングス (T:9470)は教育関連書籍の出版事業からスタートし、その後はジャンルを拡大して総合出版業に成長した。
その後、学習塾事業、医療福祉事業へと水平展開を果たして現在に至っている。
この間、事業拡大に応じて多数の子会社を設立したほか、M&Aも積極的に活用してきた。
同社グループの拡大は現在も進行しているが、2018年9月末現在では、連結子会社55社、非連結子会社17社、関連会社8社(うち、持分法適用関連会社1社)で構成されている。
事業セグメントについては、事業の成長や撤退などの異動に合わせて変化を繰り返してきている。
直近では前中期経営計画『Gakken 2018』の開始に合わせて2017年9月期から事業セグメントを変更した。
その結果現在では、教育分野と医療福祉分野の2つの事業ドメインのもと、4事業セグメント体制となっている。
教育分野においては、1980年にスタートした『学研教室』などの学習塾事業を主たる内容とする「教育サービス事業」、祖業とも言うべき教育関連出版事業にルーツを持つ「教育コンテンツ事業」、幼稚園・保育園向け出版物や備品、小中学校向け教科書などを扱う「教育ソリューション事業」の、3つのセグメントで事業を展開している。
医療福祉分野は「医療福祉サービス事業」の1セグメント構成となっている。
2004年に(株)ココファンを設立して高齢者住宅事業に進出したことが直接の始まりであるが、1975年に医学書の出版を手掛ける(株)秀潤社を設立したこともルーツの1つとなっている。
現在では1)介護(高齢者支援)、2)保育(子育て支援)、3)医療(医療従事者向け専門書の出版)の3つのサブセグメントで事業を展開している。
事業セグメント別の売上高、営業利益の内訳を見ると売上高については、4つの事業セグメントが20%から30%のレンジにバランスよく分散している。
利益面では教育サービス事業が全体の約40%を占め、医療福祉サービス事業が約30%でそれに続いている。
この2つのセグメントに比べて教育コンテンツ事業と教育ソリューション事業は利益の変動性が高く、2018年9月期は教育コンテンツ事業が前期比ほぼ半減する一方、教育ソリューション事業は同3.7倍となり、それぞれ15%、18%を占めるに至っている。
小学生を対象とした「学研教室」事業と進学塾事業の2本柱体制で展開。
進学塾事業ではM&A・事業提携を積極活用2. 教育サービス事業教育サービス事業は売上高の28%、営業利益の38%を占める同社グループの主力事業だ(数値は2018年9月期実績。
以下同じ)。
事業の内容はいわゆる学習塾事業と言うことができ、1)「学研教室」事業と、2)進学塾事業の2つから成っている。
学研教室は国内だけでなくアジア地域で海外展開も行っており、教育サービス事業を学研教室(国内)、学研教室(海外)、及び進学塾の3領域に分けて説明がなされる場合もある。
(1) 学研教室事業学研教室事業は同社の子会社の(株)学研エデュケーショナルが運営する無学年方式の学習教室だ。
事業は1980年にスタートした。
主に幼児から中学生(一部高校生)までを対象としているが、小学生、特に低学年が圧倒的で、中高生の割合は非常に小さい。
2018年9月末の教室数は15,974教室、教科会員数は411,254人となっている(学習者数は全教科合計)。
競合は(株)公文教育研究会が展開する“公文式教室”だ。
いわゆる無学年式学習教室市場は学研教室と公文式教室で二分している状況にある。
教室数や生徒数では公文式教室が勝るが、学研教室は1)月謝が安価、2)教科書をカバーし、(生徒がひたすら作業をするだけでなく)教師が教える学習であること、3)算数・国語のバランスを重視した内容、といった点が特長・強みとして評価されている。
事業モデルはFC(フランチャイズ)モデル、すなわち教室をFC方式で展開し、FCオーナー(教室経営者)からロイヤルティ収入(売上高の一定割合)を得るというものだ。
(2) 進学塾事業同社は学習指導・進学指導については前述の学研教室の展開を主体に行ってきたが、2000年代半ばから進学塾指導の強化に乗り出し、その後はM&Aの活用や他社との事業提携などを重ねて急速に事業を拡大している。
この背景には教育分野の事業拡充はもちろん、学研教室で取り込んだ小学校低学年児童が高学年・中学生になり、受験対策のため流出することに対する囲い込み戦略の一環という側面もあるとみられる。
現在、同社の進学塾事業の全体像は以下のようになっている。
直近のM&Aは2017年11月に行った山梨県地盤の(株)文理学院の子会社化だ。
この結果、現在では、11の事業会社を展開している。
地域的には首都圏や関西圏が多いが、東北、山梨・静岡、九州など全国に広がっている。
これらの中で収益インパクトが大きいのは文理学院、(株)創造学園、(株)早稲田スクールなどだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)