香港における政治的混乱や、FRBによる追加利下げの期待が高まったことを受け、金先物は1500ドル台の高水準を保っている。
午後2時53分現在、金スポットは0.56%高の1519.47ドルをつけている。7日には2013年5月以来の高値となる1510.38ドルを記録して以降続伸している。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)における12月渡しの金先物は、0.87%高の1530ドルである。金スポットと同様、7日に2013年8月以来の高値となる1522.35ドルに到達している。
週末に香港国際空港で行われたデモにより、多くの便が欠航となった。このことに関し中国政府は、現行のデモが「危機的状況」にあり、暴力を止めなければならないとしている。
中国官営のグローバル・タイムズによれば、中国の武装警察は香港に隣接する深センに「演習」のため集まっているという。この報道を受け中国政府が武力行使の準備を整えているのではないかという憶測が高まっている。
FX Empireのシニア市場アナリストであるジェームズ・ハイアーチェク氏は今回の件について、「この報道により米国株式市場や世界の国債利回りが下落し、金がより魅力的な投資先となった」と述べている。
また先週の人民元の下落を受け、世界各国の中央銀行が金融緩和策をとったが、FRBもこれに続くのではという期待が高まっており、このことも金にとって追い風となっている。
ドナルド・トランプ米大統領は9日、米国経済がFRBの金融政策により「手枷をかけられている」とし、FRBに対し1%の利下げを求めた。
またFOREX.comのアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は、「米中間の緊張が近くに緩和されるという兆候は存在しないため、追加利下げが行われる可能性は十分高く、そのことは株式市場や商品市場に混乱をもたらす可能性がある」としている。
市場はトランプ政権による中国に対する追加関税に対し備えているが、米中貿易戦争が世界経済に与える打撃が報道された影響で、安全資産としての金の需要の高まった。
Schaeffer’s Investment Researchのシニア副社長であるトッド・サロモン氏は金の上昇について、「不確実性が金の急騰と国債利回りの低下を招いた」とした上で、貿易戦争による悪影響や、世界成長の減速を食い止めるための「FRBによる調整が手遅れとなるという懸念の高まり」を指摘している。