[ソウル 10日 ロイター] - 韓国で10日、尹錫悦氏が新大統領に就任した。尹氏は就任式典後の演説で、北朝鮮の核兵器開発は脅威だが、北朝鮮が非核化にコミットすれば、「大胆な」経済計画を提供する用意があると述べた。
尹氏は就任前、差し迫った攻撃の兆しがあれば先制攻撃も辞さないと、北朝鮮により厳しい姿勢を取る可能性を示唆していたが、演説では、途絶えている非核化交渉の再開に意欲を見せた。
「北朝鮮の核兵器プログラムは、わが国のみならず北東アジアの安全保障にとって脅威だが、これを平和的に解決できるよう対話の扉は開いている」とし「北朝鮮が実質的な非核化プロセスに着手すれば、国際社会と協力し、北朝鮮の経済強化や生活向上につなたる大胆な計画を提供する用意がある」と述べた。
具体的な内容には踏み込まかった。ただ選挙戦中、尹陣営の安全保障担当顧問はロイターに、政権発足後に北朝鮮が非核化措置を講じるのを条件に制裁猶予や経済支援を受けられるようにする計画を策定するとの見通しを示していた。
<北朝鮮と物価高>
検察畑出身で政治経験のない尹氏は大統領として、北朝鮮の脅威と、2年にわたる新型コロナウイルス禍からの経済回復に立ちはだかるインフレという二つの懸案に取り組む。
北朝鮮は3月に長らく停止していた大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を再開、5月も尹氏就任を前に弾道ミサイルを2回発射している。
一方、国内経済は、ロシアのウクライナ侵攻や中国の厳格な新型コロナウイルス規制の影響が見られる。第1・四半期の成長率は前の四半期から減速し、4月のインフレ率は13年ぶりの高水準を記録した。
尹氏は演説で、インフレには言及しなかったが、低成長、失業者の増加、所得格差を挙げ、これらの問題に科学、技術の発展、技術革新によって対処する方針を示した。
国会議事堂前で行われた就任式には中国の王岐山国家副主席、林芳正外相、ハリス米副大統領の夫、ダグ・エムホフ氏をはじめ海外要人約300人が出席した。
尹氏は林氏と個別に会談した。岸田文雄首相の親書に謝意を示し、早期に面会し関係改善に共に取り組みたいと表明した。
就任式後は元国防省庁舎に設けた執務室に移り、初の会議を開いたほか7人の閣僚を正式に任命した。