[マニラ 10日 ロイター] - フィリピンの独裁者だった故マルコス大統領の長男、フェルディナンド・マルコス・ジュニア氏(64)は10日、大統領選での圧勝後、一族の過去ではなく大統領としての仕事で判断してほしいと世界に呼びかけた。
「ボンボン」として知られるマルコス氏は、最近の大統領選では見られなかった圧倒的過半数を獲得。フィリピンで最も悪名高い「王朝」の返り咲きという、以前は想像もできなかった復権の道を開いた。
マルコス氏の報道官のロドリゲス氏によると、マルコス氏は声明で「過去ではなく、私の行動で判断してほしい」と世界に訴えた。
20年にわたって独裁政治を続けた父親の故マルコス大統領が1986年の「ピープルパワー(民衆の力)」革命で失脚すると、マルコス氏は家族とハワイに亡命。91年にフィリピンに戻り、上下両院の議員を務めた。
9日の選挙の有効投票の98%が開票され、マルコス氏の圧倒的な勝利での当選は確実視されている。非公式集計によると、対立候補であるロブレド副大統領の2倍の3100万票を獲得した。正式な選挙結果は今月末ごろに発表される予定。
ロドリゲス氏は「これは全てのフィリピン国民、そして民主主義の勝利だ」とし、「ボンボンに投票した人もそうでない人も、全てのフィリピン国民のための大統領になることが公約だ。政治的な隔たりを越えて共通の基盤を求め、国家統合のために協力する」と述べた。
マルコス氏は結束を掲げて選挙戦を展開したが、政治アナリストらはマルコス氏の大統領就任で結束が進むとはみていない。一族の持っていた絶大な政治的影響力と資産に対する国民感情が要因だ。
大統領選後のフィリピン市場はまちまちだった。フィリピン総合株価指数は一時3%下落し、ドル建て国債の価格も下落。通貨のフィリピンペソは対ドルで0.4%上昇した。
学生を中心とする約400人が10日、選挙管理委員会の建物の周囲で、選挙で不正があったとしてマルコス氏に対する抗議活動をした。