21日に行われた参議院議員選挙では、自民党が国政選で6連勝となりました。
今回、選挙戦の直前に勃発した「年金不足2000万円」の問題は、蓋を開けてみたら選挙戦にはそれほど深刻な影響を及ぼさなかった印象です。
しかし、もちろんこれで日本の高齢化の課題がチャラになったわけではありません。
むしろ、今後さらに深刻になりそうです。
6月中旬、5年に1度の「財政検証」が厚生労働省から発表される予定でしたが、2000万円問題勃発のためか、先送りされています。
参議院選挙の終了を受け、恐らく近々発表されるとみられます。
前回2014年の財政検証では、現役時代の手取りの何%が年金で支払われるのかという「所得代替率」は、62.7%となっていました。
この代替率を50%以上に維持するよう定められていますが、財政検証では、これがどのようなシナリオなら達成できるのか、できないのかが焦点になります。
今回の検証は前回よりも厳しくなっているとみられ、発表されれば、再び年金問題が注目されることになるでしょう。
日本では、70歳以上の高齢者が総人口の2割を占めます。
これらの人々は、株式や投信の保有額が30歳代の人の5倍以上となっており、この7年間は株価上昇の恩恵を受けています。
ところが、これから20年後、30年後に高齢化する若年層は、年金の所得代替率も低下する可能性が高い上、預金の比率が高く、低金利に悩まされることになります。
しかも、日本では、(高齢化の影響もあり)認知症患者の率も2.3%とOECDで最高です。
高齢になってから年金対策を始めようと思っていても、現実には難しくなる可能性があります。
高齢者のお金の問題は、他国に先駆けて日本が解決しなければならない最大の問題だと思います。
近々発表される年金財政検証と、それを受けての国の政策も待たれますが、若い頃から自己防衛手段を考える必要があることを直視しなければならないと感じます。
マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那(出所:7/22配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)