■中長期の成長戦略と進捗状況
1. 成長戦略の全体像
事業の概要の項で述べたように、Eストアー (T:4304)は創業以来、約7年のサイクルで収益の軸となる事業の移行を重ねて業容拡大してきた。
2017年秋に新たにマーケティンングシステム事業をスタートさせた結果、現在はECシステム、マーケティングサービス、及びマーケティングシステムの3事業体制となった。
一方同社の事業領域は、販売と販促の2つの軸と、システム(機械・ソフト)とサービス(人的労働)の2つの軸を組み合わせた4つの象限に切り分けることができる。
マーケティンングシステム事業の開始で、4象限すべてをカバーする体制が整った。
A~Dの4つの事業領域のそれぞれが重要であることは疑いないが、A~Dが同一平面上にほかから区切られて(独立して)存在しているわけではなく、因果関係や代替関係、補完関係など、様々な種類の関係性を持ち、関係性に応じて立体的・重層的に存在しているというのが現実に近いイメージと言えるだろう。
このイメージを常に頭に置きながら同社の成長戦略を考えることが、実は非常に重要だと弊社では考えている。
なぜならば、同社が成長戦略として3つの事業それぞれを成長させることを目指しているのは疑いないが、そこからもう一段踏み込んだところでは、3つの事業(あるいはA~Dの4領域)間に存在する関係性を能動的に活用してシナジー効果を追求していくことこそが、同社の成長戦略の本質であるためだ。
詳細は後述するが、弊社では、中期的な時間軸(3年~5年程度を想定)で見た場合、各事業の成長のための施策の成果は、ECシステムの中のフロウ売上高の成長と、それと連動性の高いマーケティングサービスの売上高の成長という形で具現化してくるとみている。
逆の見方をすれば、この2つの売上高の成長こそがKPI(重要経営評価指標)であり、これを伴わない利益成長は評価できず、反対にこれがあるならば足元の利益がどうであれいずれ利益はついてくるということだ。
同社がここ数年、目先の利益成長を犠牲にしてでも成長投資の実行にこだわっている理由は、まさにここにあると弊社ではみている。
マーケティングサービス、マーケティングシステムとのシナジーで、フロウ売上高の成長再加速を目指す
2. ECシステムの成長戦略
ECシステムはEC総合支援のASPサービス『ショップサーブ』が具体的商材だ。
店舗のWebサイト、ドメイン、メール、決済、受注、顧客の管理など、販売に関係する一連の要素が1つになったASPサービスで、その収益モデルは顧客からASPサービスの月次利用料を徴収するというものだ。
この収入がストック売上高として計上されている。
同社はまた、ショップサーブの顧客との間で、顧客企業の売上高拡大を支援し、顧客から決済代行手数料などの名目で(同社のショップサーブ上の店舗サイトを経由した)売上高の一定割合を徴収する契約を結んでいる。
この売上連動型収入がフロウ収入として計上されている。
ストック収入とフロウ収入とではタイプが異なるため成長戦略も当然異なってくる。
(1) ストック売上高の成長戦略
ストック売上高はショップサーブの契約顧客数と顧客単価の積で決まる。
このうち、契約顧客数は追わないことを同社は明言している。
代わりに注力するのは顧客単価の上昇だ。
顧客単価の引き上げは、顧客構成比の変化(大口顧客の割合上昇)による平均単価の上昇と、既存顧客における利用サービス拡大による月次利用料の底上げという2つのアプローチが考えられるが、なかでも注力するのは前者だ。
“良品良店へのシフト”をスローガンに掲げ、新規顧客獲得において、競争力のある商品を扱う店舗や、収益成長性の高い店舗、あるいは、売上規模が大きく、高い月額利用単価が見込める中堅企業などに重点を置くことを徹底している。
これらの施策は徐々に結果につながってきており、顧客単価は着実に上昇しつつあるが、一方で、顧客数の減少傾向が依然として続いている。
その結果、ストック売上高は減少傾向が続いている。
同社自身はこの点については想定内であるとして、まったく懸念していない。
後述するように、前述の“良品良店へのシフト”策は、フロウ売上高拡大策でもある。
すなわち、ストック売上高の減収が続いたとしても、フロウ売上高の増収で取り返すということが水面下で起きていることだ。
これが、同社はストック売上高の減収を懸念していない理由の1つとみられる。
(2) フロウ売上高の成長戦略
前述のように、フロウ売上高は同社の成長を実際にけん引するメインエンジンの1つであり、これをいかに実現するかが経営上の優先課題の1つだと言える。
そのフロウ売上高の現状は、一旦踊り場に差し掛かりつつある。
これを乗り越えて成長へと回帰させることができるかどうかが、ポイントとなる。
これまで同社が主として取り組んできたのは、1)既存顧客のマーケティングを支援し、売上高増大を実現することと、2)顧客企業の構成を変えて売上高の大きい企業の割合を増やすことの2点だ。
1)については、同社が注力するマーケティングサービス事業においてショップサーブの既存顧客と契約し、その成果として売上高を拡大させてフロウ収入の拡大につなげるというものだ。
このアプローチは言わば、フロウ収入とマーケティング収入のシナジー追求型だ。
2)はストック収入の構造改革である“良品良店シフト”の推進で、ショップサーブ契約企業における企業規模別構成変化だ。
こちらは、ストック収入とフロウ収入が表裏一体で改善を図ることができる取り組みと言える。
これらに加えて、今後はマーケティングシステム事業とのシナジーによるフロウ売上高の拡大が期待できる。
マーケティングシステム事業で提供する『コンペア』と『クエリー』(詳細は後述)はいずれも、売上高拡大を目指す販促支援ツールだ。
同社は、本格展開初年度の2019年3月期は既存顧客(すなわちショップサーブ既契約者)への販売に注力する方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
1. 成長戦略の全体像
事業の概要の項で述べたように、Eストアー (T:4304)は創業以来、約7年のサイクルで収益の軸となる事業の移行を重ねて業容拡大してきた。
2017年秋に新たにマーケティンングシステム事業をスタートさせた結果、現在はECシステム、マーケティングサービス、及びマーケティングシステムの3事業体制となった。
一方同社の事業領域は、販売と販促の2つの軸と、システム(機械・ソフト)とサービス(人的労働)の2つの軸を組み合わせた4つの象限に切り分けることができる。
マーケティンングシステム事業の開始で、4象限すべてをカバーする体制が整った。
A~Dの4つの事業領域のそれぞれが重要であることは疑いないが、A~Dが同一平面上にほかから区切られて(独立して)存在しているわけではなく、因果関係や代替関係、補完関係など、様々な種類の関係性を持ち、関係性に応じて立体的・重層的に存在しているというのが現実に近いイメージと言えるだろう。
このイメージを常に頭に置きながら同社の成長戦略を考えることが、実は非常に重要だと弊社では考えている。
なぜならば、同社が成長戦略として3つの事業それぞれを成長させることを目指しているのは疑いないが、そこからもう一段踏み込んだところでは、3つの事業(あるいはA~Dの4領域)間に存在する関係性を能動的に活用してシナジー効果を追求していくことこそが、同社の成長戦略の本質であるためだ。
詳細は後述するが、弊社では、中期的な時間軸(3年~5年程度を想定)で見た場合、各事業の成長のための施策の成果は、ECシステムの中のフロウ売上高の成長と、それと連動性の高いマーケティングサービスの売上高の成長という形で具現化してくるとみている。
逆の見方をすれば、この2つの売上高の成長こそがKPI(重要経営評価指標)であり、これを伴わない利益成長は評価できず、反対にこれがあるならば足元の利益がどうであれいずれ利益はついてくるということだ。
同社がここ数年、目先の利益成長を犠牲にしてでも成長投資の実行にこだわっている理由は、まさにここにあると弊社ではみている。
マーケティングサービス、マーケティングシステムとのシナジーで、フロウ売上高の成長再加速を目指す
2. ECシステムの成長戦略
ECシステムはEC総合支援のASPサービス『ショップサーブ』が具体的商材だ。
店舗のWebサイト、ドメイン、メール、決済、受注、顧客の管理など、販売に関係する一連の要素が1つになったASPサービスで、その収益モデルは顧客からASPサービスの月次利用料を徴収するというものだ。
この収入がストック売上高として計上されている。
同社はまた、ショップサーブの顧客との間で、顧客企業の売上高拡大を支援し、顧客から決済代行手数料などの名目で(同社のショップサーブ上の店舗サイトを経由した)売上高の一定割合を徴収する契約を結んでいる。
この売上連動型収入がフロウ収入として計上されている。
ストック収入とフロウ収入とではタイプが異なるため成長戦略も当然異なってくる。
(1) ストック売上高の成長戦略
ストック売上高はショップサーブの契約顧客数と顧客単価の積で決まる。
このうち、契約顧客数は追わないことを同社は明言している。
代わりに注力するのは顧客単価の上昇だ。
顧客単価の引き上げは、顧客構成比の変化(大口顧客の割合上昇)による平均単価の上昇と、既存顧客における利用サービス拡大による月次利用料の底上げという2つのアプローチが考えられるが、なかでも注力するのは前者だ。
“良品良店へのシフト”をスローガンに掲げ、新規顧客獲得において、競争力のある商品を扱う店舗や、収益成長性の高い店舗、あるいは、売上規模が大きく、高い月額利用単価が見込める中堅企業などに重点を置くことを徹底している。
これらの施策は徐々に結果につながってきており、顧客単価は着実に上昇しつつあるが、一方で、顧客数の減少傾向が依然として続いている。
その結果、ストック売上高は減少傾向が続いている。
同社自身はこの点については想定内であるとして、まったく懸念していない。
後述するように、前述の“良品良店へのシフト”策は、フロウ売上高拡大策でもある。
すなわち、ストック売上高の減収が続いたとしても、フロウ売上高の増収で取り返すということが水面下で起きていることだ。
これが、同社はストック売上高の減収を懸念していない理由の1つとみられる。
(2) フロウ売上高の成長戦略
前述のように、フロウ売上高は同社の成長を実際にけん引するメインエンジンの1つであり、これをいかに実現するかが経営上の優先課題の1つだと言える。
そのフロウ売上高の現状は、一旦踊り場に差し掛かりつつある。
これを乗り越えて成長へと回帰させることができるかどうかが、ポイントとなる。
これまで同社が主として取り組んできたのは、1)既存顧客のマーケティングを支援し、売上高増大を実現することと、2)顧客企業の構成を変えて売上高の大きい企業の割合を増やすことの2点だ。
1)については、同社が注力するマーケティングサービス事業においてショップサーブの既存顧客と契約し、その成果として売上高を拡大させてフロウ収入の拡大につなげるというものだ。
このアプローチは言わば、フロウ収入とマーケティング収入のシナジー追求型だ。
2)はストック収入の構造改革である“良品良店シフト”の推進で、ショップサーブ契約企業における企業規模別構成変化だ。
こちらは、ストック収入とフロウ収入が表裏一体で改善を図ることができる取り組みと言える。
これらに加えて、今後はマーケティングシステム事業とのシナジーによるフロウ売上高の拡大が期待できる。
マーケティングシステム事業で提供する『コンペア』と『クエリー』(詳細は後述)はいずれも、売上高拡大を目指す販促支援ツールだ。
同社は、本格展開初年度の2019年3月期は既存顧客(すなわちショップサーブ既契約者)への販売に注力する方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)