杉山健太郎
[広島 21日 ロイター] - 主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)は21日、対面で討議に参加したウクライナのゼレンスキー大統領に支援の継続を約束するとともに、対ロシア制裁を強化することで一致して閉幕した。中国に対しては海洋進出などへの強い懸念を示す一方で、建設的な関係を構築する用意があるとのメッセージを出した。
議長国を務めた日本の岸田文雄首相は閉幕に当たって会見し、「ゼレンスキー大統領を招いてウクライナへの揺るぎない連帯を示せたこと、法の支配に基づく国際秩序を守る決意を世界に示せたことは意義深い」と語った。
19日に始まったサミットは、ウクライナ、中国などの地域情勢、核軍縮、新興国・途上国との協力強化、経済安全保障、人工知能(AI)の規制と活用など、世界が直面する幅広いテーマを議論した。2日目までにおおよその討議を終え、ロシアの侵略が終わるまでウクライナへの支援を強化すること、ロシアへの制裁回避を止めるための枠組み新設することを決めた。
経済、軍事面で力を増す中国を巡っては、人権問題や東シナ海、南シナ海、台湾海峡情勢などに強い懸念を表明。一方で、中国の経済発展を阻害する考えはなく国際社会から切り離す意図はないとした上で、安定的な関係を構築していくことを求めた。
中国に対しては思惑の違う7カ国が一致して強いメッセージを出せるかが焦点だったが、バランスを取る形となった。中国と貿易面で結びつきが強いドイツのショルツ首相は21日、自国メディアの取材に対し「G7は『デリスク(リスク回避)』で合意する一方、中国を切り離す(デカップル)わけではない」と強調した。それでも中国はG7の首脳声明に反発し、議長国の日本に抗議した。
日朝国交正常化交渉で日本政府代表を務めた元外交官の美根慶樹・平和外交研究所代表は、「ウクライナ関係は満点、全体では75点くらいの印象だ」と広島サミットを評価。「中国に関するコミュニケ(首脳声明)の文言は物足りない」と話す。
<ゼレンスキー氏、各国首脳と相次ぎ会談>
ウクライナへの支援を巡る議論は、2日目の20日午後からゼレンスキー大統領が加わったことでさらに活発化した。サウジアラビアのジッダからフランスの政府専用機で訪日したゼレンスキー氏は、広島に到着すると各国首脳と相次ぎ会談し、米国と欧州諸国が調整しているF16戦闘機の供与について英スナク首相に謝意を伝えるなどした。
ロシア製の武器を採用するなど同国と関係の深いインドのモディ首相には、地雷除去などで支援を求めるとともに、和平協議の枠組みづくりに加わるよう呼び掛けた。
ゼレンスキー氏は最終日の21日にサミットの討議に出席。インドやベトナム、ブラジルなど招待国を交えた拡大会合では、ウクライナの現状と支援の必要性を新興国にも訴えた。
ロシアは反発し、同国と中国の「二重封じ込め」だとG7サミットを批判した。
<岸田首相、核廃絶への思い>
今回のサミットは、第2次世界大戦で被爆地となった広島で開かれた。ロシアがウクライナで核兵器の使用をちらつかせ、中国が核戦力を増強、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速する中、岸田首相は自らのライフワークと位置付ける「核なき世界」の実現を同地から訴えることにこだわった。
成果文書では核廃絶を究極の目標に位置付け、「軍縮・不拡散の取り組み強化へ具体的措置を取る」と盛り込んだ。
G7のメンバーには米英仏の核保有国がいることから、現実的ではないとの指摘もあるが、岸田首相は最後の議長国会見で「夢想と理想は違う。理想には手が届く。核兵器のない地球に暮らす理想に向かって一人一人が広島の市民として歩みを進めていこう」と語った。
初日の19日には7カ国の首脳がそろって平和記念資料館を訪れ、平和記念公園で原爆犠牲者の慰霊碑に献花した。最終日の21日には招待国の首脳らも資料館を見学し、慰霊碑に献花した。
(杉山健太郎 取材協力:竹本能文、川上健一、久保信博 編集:田中志保)
*内容を追加して再構成しました。