[香港 29日 ロイター] - 警察の強制捜査を受けた香港の民主派ネットメディア、立場新聞(スタンド・ニュース)は29日、業務を停止すると発表した。民主活動家、黎智英(ジミー・ライ)氏の「蘋果日報(アップル・デイリー)」も今年廃刊となっており、メディアへの締め付けが強まっている。
警察は扇動的出版を計画したとしてスタンド・ニュースの事務所および編集担当幹部の自宅を家宅捜索し、7人を逮捕した。
ドイツ政府と国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、香港警察の行為を非難する声明を出した。
スタンド・ニュースはフェイスブックに「状況を踏まえ業務を停止する。パトリック・ラム編集長代行は辞任し、全従業員が解雇された」と述べた。
警察の国家安全保障部門トップ、スティーブ・リー氏は記者団に、スタンド・ニュースが当局への嫌悪感情をあおるニュースや論説を配信したと指摘。6100万香港ドル(782万ドル)相当の資産のほか、コンピューターや携帯電話、報道資料を押収したと明らかにした。
「記者を標的にしているのでない。国家安全保障上の違反者を標的にしている」と述べ、さらなる逮捕の可能性も排除しなかった。
逮捕されたのは34歳から73歳の男性3人と女性4人。警察は逮捕者の名前を公表していないが、メディアは、スタンド・ニュースの鍾律師元編集長、パトリック・ラム編集長代行のほか、元民主派議員の呉靄儀(マーガレット・ング)氏や歌手デニス・ホーさんら元役員4人が逮捕されたと伝えている。拘留中の鍾元編集長の妻も再逮捕されたと報じられた。
ロイターは、逮捕された人やその弁護士には取材できていない。
香港政府の李家超(ジョン・リー)政務官は、警察の対応に支持を表明し、ジャーナリズムを利用して国家安全維持法(国安法)に対抗しようとする者は報道の自由を損ねる有害分子だと指摘した。
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報時報は11月、政府系シンクタンク全国港澳研究会幹部の発言として、反政府的メディアが生き残る余地は狭まっているとして「スタンド・ニュースは終わりを迎える」と伝えていた。
ドイツ外務省報道官は「特に香港国家安全維持法(国安法)の施行以降、香港における多元主義や言論の自由、報道の自由が確実に後退していることを示す出来事だ」として逮捕を非難した。
OHCHRはロイターへの声明で「香港の市民社会が自由に意見を述べ、表現する手段が極めて急速に封じられている」と懸念を示し、「香港は市民的・政治的権利に関する国際規約の適用を受け、情報、言論、集会の自由に対する権利を尊重するとともに適正手続きを保障する法的義務がある」と述べた。
*ドイツと国連の反応を追加して再送します。