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パンチ Research Memo(5):航空宇宙産業関連への研究開発投資や設備投資、認証取得にも取り組む

発行済 2016-07-13 16:28
更新済 2016-07-13 16:33
パンチ Research Memo(5):航空宇宙産業関連への研究開発投資や設備投資、認証取得にも取り組む
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■新・中期経営計画「バリュークリエーション2020」

パンチ工業 (T:6165)は2016年3月に新・中期経営計画「バリュークリエーション2020」を発表した。
前中期経営計画(2013−2015年度)で取り組んできた「グローバル化」「新市場の開拓」「高収益事業モデルへの転換」をさらに深化させ、グローバル企業として金型部品業界でのトップブランドを確立し、製販一体企業としての優位性を活かした高収益企業を目指していく。


(1)基本戦略

中期計画の基本戦略として、「販売5極体制」「お客様サービスの向上」「高収益事業の推進、R&D強化」「働き方改革」の4つのテーマに取り組んでいく方針だ。


○販売5極体制
同社の売上高は日本と中国で約90%を占めており、アジアや欧米に関しては約1割と少ないのが現状で、とりわけ、欧米市場では現地の代理店経由での販売にとどまっている。
グローバル企業として成長していくためには、欧米市場においても大手企業を顧客として獲得し、売上規模の拡大を図ることが今後の経営課題と考えている。


ターゲットとなるのは現地でも金型需要が見込める自動車や電子部品、食品・飲料業界となる。
既にこれら業種においては中国や日本においてグループ企業との取引実績があり、顧客との信頼関係も構築されてきている。
こうした取引実績をベースにして、欧米市場での取引も徐々に広げていく戦略だ。
中期経営計画の最終年度となる2021年3月期には、欧米向け売上高で前期実績の2倍以上となる30億円規模を目指していく。


○お客様サービスの向上
顧客サービスの向上として、2つの取り組みを進めていく。
第1に、グローバルソーシング(最適調達)による顧客満足度の向上だ。
欧米、アジアからの受注に対して、最適な生産拠点(日本、中国、東南アジア)から供給できる体制を整えていく。


また、リバースエンジニアリング※による顧客の課題を解決していくサービスを新たに提供していく。
背景には、金型や金型用部品メーカーの再編によって金型用部品の図面が消失してしまい、その金型を使って量産してきた製品が製造できなくなるといったケースが増えてきていることにある。
こうした顧客の課題を解決するため、同社では現物から図面や3Dデータを制作し、同じ形状の金型用部品を復刻するサービスを行っていく。
同社ではこうしたサービスが新規顧客開拓のフック役になると見ており、中期計画期間内に同サービスを立ち上げていく考えだ。


※機械を分解したり、製品の動作を観察したり、ソフトウェアの動作を解析するなどして、製品の構造を分析し、そこから製造方法や動作原理、設計図などの仕様やソースコードなどを調査すること。
ものづくりにおいては、3DCADや接触式、非接触式3次元形状データ測定器の発達により、リバースエンジニアリングが急速に普及している。


○高収益事業の推進とR&Dの強化
ベトナム工場を起点としたグループ生産体制の最適化を図り、高収益化を実現していく。
最初の3年間は先行投資期間と位置付け、ベトナム工場の立上げや国内の生産拠点の原価改善、中国生産拠点内での生産移管を進めていく。
残り2年間でベトナム工場の生産能力強化(日本からも一部、後工程を移管)、国内生産拠点での生産移管と特注品の生産強化を推進していく計画となっている。


また、R&Dの強化として食品・飲料、医療機器(注射器や点滴パックなどディスポーザブル型製品)、航空宇宙産業関連への研究開発投資や設備投資、関連する認証取得などに取り組んでいく。
これら3つの業界については、景気変動の影響を受けにくい業界であると同時に、将来の成長も見込んでいる。
既に、食品・飲料や医療関連では売上高も増え始めている。


航空機分野では世界標準の品質マネジメントシステムであるAS9100認証を、中国子会社で2015年1月に取得している。
また、2016年3月には、同中国子会社が国際航空宇宙産業における特殊工程である「熱処理工程」においてNadcapの認証を取得した。
ただ、同領域は非常に高い安全性と信頼性が要求されるため参入障壁は高い。
このため、今回の中期経営計画では顧客と商談ができるレベルまでの関係構築を目標としており、業績面で寄与するのは早くても2021年度以降となりそうだ。


○働き方改革
社員重視の経営による組織力の強化を進めていく。
創業から40年を経て、改めて「ものづくり」や「売り方」「働き方」などに対する考え方を見直し、社員の意識改革を図っていくほか、「人事制度」についてもグローバル企業として成長していくのに適した人事制度の構築を目指す。


(2)経営目標値

具体的な経営目標値として、2段階に分けて設定している。
第1段階目は最初の3年間に当たり、ベトナム工場の立ち上げなど投資による助走期間となる。
業績目標値としては2019年3月期に売上高420億円以上、営業利益25億円以上、当期純利益17億円以上とした。
その後、2年間はグループ新生産体制の本格始動による収益性向上を見込み、最終年度となる2021年3月期に売上高470億円以上、営業利益33億円以上、当期純利益23億円以上を目標として掲げた。
今後5年間の総投資額は140億円を予定している。
過去4年間の総投資額が41億円であったことからすると、年間では3倍弱の投資規模となる。
ベトナム工場への投資のほか高付加価値品を強化するためのR&D設備への投資、また、国内や中国で老朽化した設備の更新投資などが含まれる。
更新に当たっては、生産性が向上する自動化ラインなどに置き換えていく予定だ。
設備投資資金はキャッシュフローの範囲内に収まる見込みだが、不足すれば借入金等で賄う可能性もある。


営業利益率では2016年3月期の5.4%から2019年3月期は6.0%、2021年3月期は7.0%を見込んでいる。
最初の3年間は先行投資期間に当たるため収益性もほとんど変らないが、後半の2年間では投資効果が顕在化し、収益性の向上が進むと見込んでいる。
収益性向上の要因としては、グループ生産の最適化に伴う原価低減と高付加価値品の売上構成比上昇による。
また、ROEは2016年3月期の8.9%から2021年3月期は11.0%となる見通しだ。


地域別の売上高では、すべての地域において拡大する計画となっているが、5年間の年平均成長率で見れば、アジア他地域が12.4%成長と最も高い成長率を見込んでおり、次いで中国が4.7%、日本が3.6%となっている。
2021年3月期時点のアジア他地域の内訳を見ると、東南アジア・インドで51%、欧州で29%、米州他で20%の構成となっている。
また、業種別の年平均成長率で見れば、その他が年率6.7%成長、次いで家電・精密機器が6.5%、電子部品・半導体が5.0%、自動車が3.8%となる。


世界の金型用部品の市場規模は約5,000億円であり、今後も年率数%の緩やかな成長が続く見通し。
現状の同社の市場シェアは7%程度となる。
精密金型用部品に絞ったシェアで見ればもう少し高いが、それでも同社が開拓できる領域はまだ多く残されており、成長ポテンシャルは大きいと言える。
特注品と標準製品の両方の顧客ニーズに対応できる開発力やサポート力を強みに、新規顧客企業の開拓や既存顧客での取引シェア拡大を進めていくことで、更なる業績成長が期待される。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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