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RSテクノ Research Memo(5):台湾子会社新設により生産能力が拡大、世界シェア40%を目指す

発行済 2017-01-06 16:00
更新済 2017-01-06 16:33
RSテクノ Research Memo(5):台湾子会社新設により生産能力が拡大、世界シェア40%を目指す
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■成長戦略と進捗状況

RS Technologies (T:3445)は中長期的成長を実現するための経営方針として5つの項目を掲げ、それに取り組んでいる。
詳細は項目ごと後述するが、全般に順調な進捗を示している。


(1)台湾子会社新設・三本木工場増設による生産能力拡大

同社が2016年度に最重点課題として取り組んできたのが台湾子会社新設と三本木工場増設による生産能力の拡大だ。
事業環境の項で述べたように、ウェーハの再生加工需要は今後も増加が見込まれているものの、新規参入は言うに及ばず既存事業者による増設も投資リターンを考えると容易には決断できない状況だ。
その中で同社は高いコスト競争力を背景に、能力増強を進め、世界シェアを現在の30%から40%に引き上げることを目指している。


台湾子会社の台南工場の建設に当たっては、設備を三本木工場から移設することで、設備投資額の抑制と操業面でのスムーズな立ち上げを図り、2015年12月までに設備を完成させた。
しかし、実際の稼働に必要な顧客からの認定の取得については、新設工場であることやターゲット顧客である台湾のファウンドリメーカーが実地検査に入ったこともあり、予想以上に時間がかかった。
これが2016年12月期前半の低い稼働率につながった。


その後台南工場は2016年4月に最初の認定が下りたのを機に5月、6月と順調に生産数量を増やした。
7月以降も新規の顧客認定が続いて本格的に受注が拡大し、工場の設備稼働率も順調に上昇した。
2016年12月現在ではフルキャパに近い水準での生産となっている模様だ。
元来、台湾のファウンドリ各社において再生ウェーハへの潜在需要は高く、高い技術力を有する同社の新工場稼働で、そうした潜在需要が一気に表面化した形だ。
稼働率の上昇に伴って台湾子会社の業績も急回復を示しており、6月に単月黒字となった後は黒字が継続している状況だ。


三本木工場では、前述したデボトルネックによる能力増強を重ねて、足元は12インチの加工ウェーハの加工能力は月産20万枚にまで高まっているとみられる。
台南工場の10万枚と合わせて12インチウェーハの加工能力は30万枚に達し、世界シェアは約30%に達している。


(2)再生市場におけるシェア拡大

上記(1)で述べたところと重なるが、三本木工場のデボトルネックと台南工場の完成で、12インチウェーハの生産能力は30万枚に達し、現在の12インチウェーハの再生加工需要(月産90万枚~100万枚)に対するシェアは30%を超えた水準にあるとみられる。
同社は実生産枚数も足元では30万枚/月に達しているとみられる点も重要なポイントだ。


目標とする世界シェア40%の実現に向けては、月産40万枚~50万枚の生産能力が必要になるとみられるが、これについての具体的な施策は来期以降の課題となるだろう。
判断するにはシリコンウェーハの価格動向や再生加工賃の動向、同業他社の投資計画など、検討・考慮すべき要因が多数存在している。
同社固有の要因としては、三本木工場と台南工場の両工場とも、建屋のスペースに余裕があるということがある。
すなわち生産設備を搬入するだけで一段の能力拡大が可能になるということだ。
これは設備投資額と工期の両方の抑制につながる。


弊社では、大規模投資を伴う設備能力拡大を実行するまでにはしばらく時間がかかるのではないかとみている。
同業他社において目立った動きがないなかで、現状のタイトな需給関係をキープしながら再生加工賃の価格上昇を目指す方が得策と思えるからだ。
需要拡大に対してはボトルネック解消によって当面は対応可能だとみている。


同社はまた、他社との業務提携やM&Aを通じた能力増強についても検討対象としている。
これについて弊社では、有力な選択肢の1つだと評価している。
前述したように、ウェーハ再生加工ビジネスは、再生加工賃の下落によって誰もが儲かるという状況にはない。
今後想定されるウェーハの世代交代(技術のロードマップでは主力のサイズが現在の12インチから18インチへと拡大する予定となっている)に際しては、再生加工メーカーも大規模な設備投資を余儀なくされることになる。
こうした状況のなか、シェアトップでコスト競争力の高い同社は、業務提携やM&Aにおいても有利なポジションに立てると考えられる。
また、その同社にしても既存のサイズの能力拡大に関しては少しでも投資を抑制することは重要だと考えている。


この点に関し、2016年12月期は進展があった。
同社は7月に日本バルカー工業 (T:7995)との業務提携を行った。
日本バルカー工業は子会社にシリコンウェーハ再生を行うバルカー・エフエフティを抱えており、それとの業務上のシナジーを追求するのが目的だ。
具体的な協業モデルや実際のシナジー効果などについては今後の発表を待ちたい。


(3)伸長する需要の取り込み

“伸長する需要の取り込み”という命題は上記の(2)と裏腹の関係でもあるが、改めて需要の伸長を強調するだけの構造変化が起きつつある。
その一例が3D NANDフラッシュの本格普及だ。
NAND型フラッシュメモリは現在のフラッシュメモリの主力のタイプであるが、現行の作り方では記憶容量に限界があるため、垂直方向に回路を積層して記憶容量を挙げたものが3D NANDフラッシュと呼ばれている。
2016年に入り、東芝 (T:6502)やIntelなども本格的に量産を開始した。
3D NANDフラッシュは製造が難しく、それだけ、モニターウェーハを消費する。
モニターウェーハの需要は、いわゆる半導体サイクル以外に、新工場の稼働や新製品の稼働でも増加すると前述したが、その大きな波が今起こっており、同社はその需要の取り込みに成功している。


“伸長する需要の取り込み”という命題は、中長期的にはウェーハサイズの世代交代への対応という意味も含まれているというのが弊社の理解だ。
半導体製造の歴史はウェーハサイズの大型化の歴史でもあり、現在の12インチから18インチへの移行がロードマップ上で示されている。
18インチへの移行に関し、再生加工メーカーは受け身の立場であり、重要なことは、需要が立ち上がった時に即応できるかどうかだ。
この点について同社は、三本木工場内に18インチ用の設備を導入し、ポリッシング技術を確立済みだ。
顧客からの評価も獲得しており、いつでも量産へと移行できる体制が整っている。
再生加工専業メーカーの中で18インチへの対応が済んでいる企業は数少ないと弊社では考えており、この点で同社は大きなアドバンテージを有していると評価している。


(4)潜在的な再生市場の開拓

この意味するところは、前述した金属除去技術による再生市場の拡大ということだ。
同社独自の金属除去技術が認定されれば、現在は廃棄されているモニターウェーハが再生加工へと回されるようになると期待される。
その潜在需要の規模は、現状でも月間25万枚程度と推測されており、収益インパクトは大きいと言える。


前述のように、半導体メーカーの側の金属除去はできないものという先入観が強く、同社の技術は商業ベースでではまだスタートしていない。
しかし、例えば3D NANDフラッシュなど新製品の登場や一段の微細化進展などがあると半導体チップの歩留まりが低下し、コストアップにつながる。
そうなると再生ウェーハへの需要が一段と強まり、その過程で金属除去技術へのニーズが高まる可能性もある。


(5)中国半導体マーケットへの参入

2016年12月期はこの点で大きな進捗があった。
前述のように、半導体生産設備の買取・販売事業が新たなセグメントとして独立したことだ。
同社の方社長を始め経営幹部は、かつて商社で勤務し、中国企業との取引において豊富な経験と人的関係を有している。
その知見を活用して同社においても中国ビジネスを拡大しようと努めてきた。


現状は半導体製造に関する消耗品の販売を中心に、先方のニーズに応じて様々な資機材の取引を行っている。
2016年12月期に収益が急拡大したのは、液晶モジュール(液晶パネルの半製品)の取引拡大によるところが大きい。


中長期的目標は、セグメント名が表象するように、半導体製造装置の取引へと進めたいというのが同社の計画だ。
中古の液晶パネル製造装置の導入は既に行われている。
半導体製造装置は微細加工の度合いが液晶とはケタが違うため難易度も高いとはいえ、いずれそうした動きが広まるのは想像に難くない。


商社ビジネス以外にも同社のビジネスチャンスは大きいと弊社ではみている。
中国の半導体産業が成長するに従い、再生ウェーハの需要も相応に大きくなってくる。
その場合、“需要家立地”すなわち、顧客の近くへの工場建設という発想は当然に出てくるだろう。
このステージに進むまでにはまだしばらく時間を要すると考えられるが、同社の中国事業は今後の展開が大いに注目される分野だ。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

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