以下は、フィスコソーシャルレポーターの個人投資家元・社長氏(ブログ「元投資顧問会社社長のチラシの裏」)が執筆したコメントです。
フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。
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※2017年7月4日17時に執筆
猛毒を持つ南米原産の『ヒアリ』が神戸港のコンテナヤードや名古屋港から発見された問題で、4日、大阪港からも発見されたとのこと。
しかも、今回は産卵する可能性のある女王アリとみられる死骸も見つかったということで、朝から各種メディアで報道がなされています。
海外からの輸入品を積んだコンテナが到着する空港や港湾では、こうした動植物の外来種が紛れ込んでしまう可能性があり、仮に気が付かないまま日本に土着してしまうと、在来の自然環境や野生生物に深刻な悪影響を及ぼすケースに発展する可能性があります。
本日は、こうした外来種問題のひとつである、バラスト水とバラスト水関連銘柄に関して深掘り解説していこうと思います。
■バラスト水とは
バラスト水とは、タンカーなど船底に安定のための重しとして積む底荷ballastとして注水される海水のことを指します。
特に、貨物船に関しては、造船時の設計の段階で荷物を積んだ際に船が安定するような設計となっていますので、空荷状態で航行しようとすると船の重心が上がり船のバランスが不安定となってしまいます。
最悪の状態を想定すると、横風や波の影響で転覆してしまう事もあるため、空荷の場合には船底に海水を注入してバランスを維持して航行させます。
■バラスト水が生態系に与える影響
このバラスト水が生態系に与える影響に関して、今、世界中で問題視されています。
例えば、東京湾でバラスト水を積み込んだ船舶が、オーストラリアのシドニーに到着して荷物を積み込むと仮定します。
その際には、東京湾で積み込まれたバラスト水はそのままシドニー港湾内で排水される事となりますが、その際に、バラスト水内に含まれるプランクトンや海洋生物がそのまま放流されてしまい、生態系が撹乱されてしまいます。
■規制への取り組み
▽世界中を移動するバラスト水は、年間120億トン
国際海事機関IMOの報告によると、年間で世界中を移動するバラスト水の量は年間120億トンと推定されます。
そのうち、日本に海外から持ちこまれるバラスト水の量は年間1,700万トン、日本から海外に持ち出されるバラスト水は年間3億トンと推定されています。
▽2016年よりバラスト水処理装置の搭載義務が開始
国際海事機関IMOでは、1997年にバラスト水の規制・管理に関するガイドラインが採択され、2004年にはバラスト水を積載する船舶を規制するバラスト水管理条約が採択されました。
現状は、国際条約に基づき沿岸から200カイリ370.4キロメートルの地点で、バラスト水の積み替えを行うことで、バラスト水が生態系へ与える影響を緩和させようと取り決められています。
しかしながら、これはあくまでも当面の暫定措置として行われており、根本的な実効性に疑問符を投げかける意見も少数ながら存在します。
2009年には、新造船に対する、バラスト水処理装置の搭載義務が開始。
バラスト水管理条約は、約30カ国以上が批准。
2017年9月8日に条約が発効される見通しとなっています。
批准国の船舶は、2022年9月までの間に、バラスト水処理装置の設置が義務化される事となりました。
▽バラスト水処理装置の市場規模は、年間5,000億円市場
こうした事から、バラスト水処理装置をめぐる造船や船舶機器メーカーへ注目が集まっています。
本日付2017年7月4日の日経新聞朝刊でも、パナソニック (T:6752)や中国メーカーが製造するバラスト水処理装置を、蝶理 (T:8014)が中国や日本で販売開始するという報道が掲載されていました。
三井住友銀行が2016年に発表した調査によると、バラスト水処理装置の市場規模は、2016年から5年間、年間5,000億円を超えて推移する見通しで、中長期的にも新造船向けを主体に、年間2,000万円〜3,000万円規模の需要が続くと予想されています。
■バラスト水関連銘柄
▽三浦工業 (T:6005)
産業用小型貫流ボイラーで国内首位、シェア5割を誇る三浦工業 (T:6005)。
14年3月期から造船大手の今治造船と、バラスト水処理事業に参入しており、主に小・小型船用のフィルターやUVリアクタによる処理装置を手がけています。
19年には、新造船向けに年間320台、既存船向けに年400台を導入する目標を掲げています。
▽栗田工業 (T:6370)
総合水処理装置の最大手で、超純水供給事業が安定収益源となっているのが、栗田工業 (T:6370)。
近年は、中国の排水事業に注力しています。
▽タクミナ (T:6322)
定量ポンプの大手企業で、環境装置メーカー向けの水処理や塩素殺菌用を基盤にしているのがタクミナ (T:6322)です。
ポンプ需要が高まると、同社の株価への影響も大きくなってくると思われます。
▽その他のバラスト水関連銘柄一覧
クラレ (T:3405)
JFE (T:5411)
住友電 (T:5802)
イワキポンプ (T:6237)
化工機 (T:6331)
ニチダイ (T:6467)
寺崎電気 (T:6637)
ADプラズマ (T:6668)
三井造 (T:7003)
日立造 (T:7004)
三菱重 (T:7011)
名村造 (T:7014)
内海造 (T:7018)
郵船 (T:9101)
商船三井 (T:9104)
「投資顧問会社社長 ブログ」で検索してもらえれば、当ブログ「元投資顧問会社社長のチラシの裏」が出てくると思いますので、何卒宜しくお願い致します。
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執筆者名:元・社長
ブログ名:元投資顧問会社社長のチラシの裏
フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。
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※2017年7月4日17時に執筆
猛毒を持つ南米原産の『ヒアリ』が神戸港のコンテナヤードや名古屋港から発見された問題で、4日、大阪港からも発見されたとのこと。
しかも、今回は産卵する可能性のある女王アリとみられる死骸も見つかったということで、朝から各種メディアで報道がなされています。
海外からの輸入品を積んだコンテナが到着する空港や港湾では、こうした動植物の外来種が紛れ込んでしまう可能性があり、仮に気が付かないまま日本に土着してしまうと、在来の自然環境や野生生物に深刻な悪影響を及ぼすケースに発展する可能性があります。
本日は、こうした外来種問題のひとつである、バラスト水とバラスト水関連銘柄に関して深掘り解説していこうと思います。
■バラスト水とは
バラスト水とは、タンカーなど船底に安定のための重しとして積む底荷ballastとして注水される海水のことを指します。
特に、貨物船に関しては、造船時の設計の段階で荷物を積んだ際に船が安定するような設計となっていますので、空荷状態で航行しようとすると船の重心が上がり船のバランスが不安定となってしまいます。
最悪の状態を想定すると、横風や波の影響で転覆してしまう事もあるため、空荷の場合には船底に海水を注入してバランスを維持して航行させます。
■バラスト水が生態系に与える影響
このバラスト水が生態系に与える影響に関して、今、世界中で問題視されています。
例えば、東京湾でバラスト水を積み込んだ船舶が、オーストラリアのシドニーに到着して荷物を積み込むと仮定します。
その際には、東京湾で積み込まれたバラスト水はそのままシドニー港湾内で排水される事となりますが、その際に、バラスト水内に含まれるプランクトンや海洋生物がそのまま放流されてしまい、生態系が撹乱されてしまいます。
■規制への取り組み
▽世界中を移動するバラスト水は、年間120億トン
国際海事機関IMOの報告によると、年間で世界中を移動するバラスト水の量は年間120億トンと推定されます。
そのうち、日本に海外から持ちこまれるバラスト水の量は年間1,700万トン、日本から海外に持ち出されるバラスト水は年間3億トンと推定されています。
▽2016年よりバラスト水処理装置の搭載義務が開始
国際海事機関IMOでは、1997年にバラスト水の規制・管理に関するガイドラインが採択され、2004年にはバラスト水を積載する船舶を規制するバラスト水管理条約が採択されました。
現状は、国際条約に基づき沿岸から200カイリ370.4キロメートルの地点で、バラスト水の積み替えを行うことで、バラスト水が生態系へ与える影響を緩和させようと取り決められています。
しかしながら、これはあくまでも当面の暫定措置として行われており、根本的な実効性に疑問符を投げかける意見も少数ながら存在します。
2009年には、新造船に対する、バラスト水処理装置の搭載義務が開始。
バラスト水管理条約は、約30カ国以上が批准。
2017年9月8日に条約が発効される見通しとなっています。
批准国の船舶は、2022年9月までの間に、バラスト水処理装置の設置が義務化される事となりました。
▽バラスト水処理装置の市場規模は、年間5,000億円市場
こうした事から、バラスト水処理装置をめぐる造船や船舶機器メーカーへ注目が集まっています。
本日付2017年7月4日の日経新聞朝刊でも、パナソニック (T:6752)や中国メーカーが製造するバラスト水処理装置を、蝶理 (T:8014)が中国や日本で販売開始するという報道が掲載されていました。
三井住友銀行が2016年に発表した調査によると、バラスト水処理装置の市場規模は、2016年から5年間、年間5,000億円を超えて推移する見通しで、中長期的にも新造船向けを主体に、年間2,000万円〜3,000万円規模の需要が続くと予想されています。
■バラスト水関連銘柄
▽三浦工業 (T:6005)
産業用小型貫流ボイラーで国内首位、シェア5割を誇る三浦工業 (T:6005)。
14年3月期から造船大手の今治造船と、バラスト水処理事業に参入しており、主に小・小型船用のフィルターやUVリアクタによる処理装置を手がけています。
19年には、新造船向けに年間320台、既存船向けに年400台を導入する目標を掲げています。
▽栗田工業 (T:6370)
総合水処理装置の最大手で、超純水供給事業が安定収益源となっているのが、栗田工業 (T:6370)。
近年は、中国の排水事業に注力しています。
▽タクミナ (T:6322)
定量ポンプの大手企業で、環境装置メーカー向けの水処理や塩素殺菌用を基盤にしているのがタクミナ (T:6322)です。
ポンプ需要が高まると、同社の株価への影響も大きくなってくると思われます。
▽その他のバラスト水関連銘柄一覧
クラレ (T:3405)
JFE (T:5411)
住友電 (T:5802)
イワキポンプ (T:6237)
化工機 (T:6331)
ニチダイ (T:6467)
寺崎電気 (T:6637)
ADプラズマ (T:6668)
三井造 (T:7003)
日立造 (T:7004)
三菱重 (T:7011)
名村造 (T:7014)
内海造 (T:7018)
郵船 (T:9101)
商船三井 (T:9104)
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執筆者名:元・社長
ブログ名:元投資顧問会社社長のチラシの裏