■今後の見通し
1. 2017年9月期通期業績予想
2017年9月期通期業績の会社予想は、売上高が前期比143.7%増の4,633百万円となっている。
増収の主な要因としては、4K映像対応STBやConteブランドのIoT機器の販売増加が挙げられている。
通期利益予想は、量産化に伴う初期費用や新規市場開拓のための研究開発費用の負担が大きいものの、営業利益57百万円(前期は営業損失393百万円)、経常利益11百万円(前期は経常損失453百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益5百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失481百万円)と、2011年9月期以来の通期での黒字計上を見込んでいる。
新製品の量産・発売が下期(2017年4月−9月)に予定されており、既存製品・サービスの販売も下期での増加を見込んでいることから、下期偏重となっている。
2. 収益・財務状況の改善
ピクセラ (T:6731)は前期まで5期連続で通期での営業損失を計上していることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しており、当該状況を解消するため、新規事業の早期収益化、コスト削減の継続、開発資金の確保の3つの施策を実施している。
新規事業の早期収益化においては、今後の成長が見込めるIoT、自動多言語翻訳、AR/VR、AI、4Kテレビ、防災市場に注力し、積極的に開発投資を行っていくこととしており、IoT分野における製品・サービスの販売を既に開始している。
また、MVNO事業を既に開始し、通信事業にも参入している。
コスト削減は、かねてより進めている人件費削減等の経費圧縮に加えて、部材調達の効率化や開発工程の見直しによる原価低減を推進するとしている。
新規事業での増収を図りながらの固定費削減には一定の限界があるものと思われるが、売上原価率については、2017年9月期第2四半期にて顕著な改善が見られている。
新規事業の推進に必要な開発資金については、Oakキャピタル (T:3113)を割当先とする第7回及び第8回新株予約権の発行により、新株予約権の行使による調達可能額は2017年9月期第2四半期末時点で1,840百万円となっている。
3. 成長戦略及び中期目標
同社は、自社の強みを生かせる市場として、2018年よりBS及び110度CSで実用放送が開始される4K・8K放送に対応するテレビチューナーの需要拡大のほか、IoT、AI・ビッグデータ、AR/VRの市場拡大を見込んでおり、2019年9月期における中期目標を売上高80~120億円、営業利益8~12億円(営業利益率10%)としている。
(1) 4K放送対応STB
同社による調査では、4K放送対応テレビの国内市場規模は2016年時点で累計約190万台と見込まれるが、2018年からの実用放送開始により増加し、東京オリンピックが開催される2020年には累計約2,300台に達するものと予想されている。
また、野村総合研究所 (T:4307)によれば、超高精細テレビ及び次世代スマートテレビは年平均50%以上で成長し、2020年には3,300万世帯に普及するものと予測されている。
同社は2020年における両テレビの市場規模を2.5兆円と予想し、市場拡大に合わせて、STBと4Kモニターをセットにした4Kテレビの販売を計画している。
同社は過去に地上デジタルテレビ市場の拡大に先んじて対応することにより業績を伸ばした経験があり、今回も、現在一般に市販されている4K対応テレビでは4K・8K試験放送を視聴できないことから、放送関連事業者の技術評価用として4K試験放送対応の受信機を2017年9月に発売することを既に発表している。
同社の新規事業分野におけるプラットフォームとなる4K映像対応STBは既に開発中であり、2017年9月期下期において固定回線事業者向けとしての量産・発売が予定されている。
同STBは、単に4K放送を視聴できるだけでなく、IoT、AI、AR/VR機能を搭載し、屋内での利用に加え、屋外からのスマートフォン等を通じた各種連携アプリケーションの利用が想定されており、コンシューマ市場に加え、様々なビジネス用途での販売を見込んでいる。
同STB関連での売上高は、2017年9月期22億円を予想している。
(2) ホームIoT事業
IDC Japan(株)によれば、国内IoT市場は2020年まで年平均16.9%で成長し、市場規模は13.8兆円に達すると予想されており、同社はターゲットとするホームIoT市場をその10%の1.4兆円と予想している。
同社は、総務省のIoT創出支援事業にかかる実証事業の委託先に、ホームIoT分野では唯一選定されている。
同社はConteブランドにて、SIMフリー対応のLTE対応USBドングルの販売を前期より開始しており、さらにLTEと同時購入の場合には高速容量無制限のLTEが業界最安値となる、月額1,480円(税別)のMVNOサービス「ピクセラモバイル」を今期より開始している。
MVNOの格安SIMに対応したLTE対応USBドングルは現時点では同社製品以外になく、幅広いOS(オペレーティングシステム)をサポートしていること、バッテリーを内蔵していないこと等から、ビジネス用途での引き合いも強く、バス内やコンビニ内でのデジタルサイネージ(情報・広告表示ディスプレイ)等で既に導入されている。
また、離れた場所から家の監視や家族の見守りを手軽に導入できる月額500円(税込)からのConteホームサービスも2016年9月期より開始し、自社ECサイト「NextMall」にて販売している。
これらにより、ハードウェアの製品の販売収益のみに依存しない、継続的で利益率の高いサービス収益の基盤を構築していく方針である。
ホームIoT事業関連での売上高は、2017年9月期5億円を予想している。
(3) AI・ビッグデータ事業
EY総合研究所(株)によれば、国内におけるサービス、広告、生活関連情報分野でAIを活用した機器・システム等の市場規模は、2020年に4.5兆円に達すると予測されている。
同社は、自社のテレビチューナーを利用する多数のユーザーを既に抱えており、バンドルソフトを通じてテレビの視聴データの収集が可能な状況にあることから、それらのデータや分析結果を、広告の効果測定や配信最適化に活用したい広告主や広告代理店へ販売するほか、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開しデータ分析基盤をオープンプラットフォームとして提供することを想定している。
同社のiPhone・iPad用Lightningコネクタ接続タイプの地デジフルセグチューナー向けアプリ「モバイルTV(Station TV)」の最新バージョンでは既に、どの番組を何人が視聴しているかを、同社のクラウドサービス「テレビ視聴データサービス」で分析し、アプリ上にリアルタイム表示することができるようになっている。
AI・ビッグデータ事業は、2018年9月期以降の本格的な展開を計画している。
(4) AR/VR事業
AR/VR事業においては、360度パノラマ動画を視聴できるスマートフォン用VR無料アプリ「パノミル」の提供を既に開始しており、パ・リーグやJリーグの試合のライブ配信等の実績を積み重ねている。
リアルタイムステッチ(映像の貼合わせ)、エンコード(符号化)、配信、視聴アプリまでを統合的に提供・サポートできるのが同社の強みである。
今後は、対応VRゴーグルを増やすとともに、4K放送対応STB経由で視聴できるようにすることで、AR/VR市場の拡大に応じた展開を計画している。
同社はこれらの事業の推進に合わせて、2016年9月期において30%であった自社ブランドの売上構成比を2019年9月期に41%へ高める計画であり、自社ブランドでのビジネス強化を図るため、ピクセラブランドの刷新を進めており、2017年10月にCI・ロゴ・ブランドデザインを刷新する予定となっている。
また、これらの事業の拡大を自社の経営資源のみで進めることは成長スピードに一定の制約があることから、M&A・提携を並行して実施することとし、新株予約権の行使によって調達する資金を充当することを想定している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 廣田重徳)
1. 2017年9月期通期業績予想
2017年9月期通期業績の会社予想は、売上高が前期比143.7%増の4,633百万円となっている。
増収の主な要因としては、4K映像対応STBやConteブランドのIoT機器の販売増加が挙げられている。
通期利益予想は、量産化に伴う初期費用や新規市場開拓のための研究開発費用の負担が大きいものの、営業利益57百万円(前期は営業損失393百万円)、経常利益11百万円(前期は経常損失453百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益5百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失481百万円)と、2011年9月期以来の通期での黒字計上を見込んでいる。
新製品の量産・発売が下期(2017年4月−9月)に予定されており、既存製品・サービスの販売も下期での増加を見込んでいることから、下期偏重となっている。
2. 収益・財務状況の改善
ピクセラ (T:6731)は前期まで5期連続で通期での営業損失を計上していることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しており、当該状況を解消するため、新規事業の早期収益化、コスト削減の継続、開発資金の確保の3つの施策を実施している。
新規事業の早期収益化においては、今後の成長が見込めるIoT、自動多言語翻訳、AR/VR、AI、4Kテレビ、防災市場に注力し、積極的に開発投資を行っていくこととしており、IoT分野における製品・サービスの販売を既に開始している。
また、MVNO事業を既に開始し、通信事業にも参入している。
コスト削減は、かねてより進めている人件費削減等の経費圧縮に加えて、部材調達の効率化や開発工程の見直しによる原価低減を推進するとしている。
新規事業での増収を図りながらの固定費削減には一定の限界があるものと思われるが、売上原価率については、2017年9月期第2四半期にて顕著な改善が見られている。
新規事業の推進に必要な開発資金については、Oakキャピタル (T:3113)を割当先とする第7回及び第8回新株予約権の発行により、新株予約権の行使による調達可能額は2017年9月期第2四半期末時点で1,840百万円となっている。
3. 成長戦略及び中期目標
同社は、自社の強みを生かせる市場として、2018年よりBS及び110度CSで実用放送が開始される4K・8K放送に対応するテレビチューナーの需要拡大のほか、IoT、AI・ビッグデータ、AR/VRの市場拡大を見込んでおり、2019年9月期における中期目標を売上高80~120億円、営業利益8~12億円(営業利益率10%)としている。
(1) 4K放送対応STB
同社による調査では、4K放送対応テレビの国内市場規模は2016年時点で累計約190万台と見込まれるが、2018年からの実用放送開始により増加し、東京オリンピックが開催される2020年には累計約2,300台に達するものと予想されている。
また、野村総合研究所 (T:4307)によれば、超高精細テレビ及び次世代スマートテレビは年平均50%以上で成長し、2020年には3,300万世帯に普及するものと予測されている。
同社は2020年における両テレビの市場規模を2.5兆円と予想し、市場拡大に合わせて、STBと4Kモニターをセットにした4Kテレビの販売を計画している。
同社は過去に地上デジタルテレビ市場の拡大に先んじて対応することにより業績を伸ばした経験があり、今回も、現在一般に市販されている4K対応テレビでは4K・8K試験放送を視聴できないことから、放送関連事業者の技術評価用として4K試験放送対応の受信機を2017年9月に発売することを既に発表している。
同社の新規事業分野におけるプラットフォームとなる4K映像対応STBは既に開発中であり、2017年9月期下期において固定回線事業者向けとしての量産・発売が予定されている。
同STBは、単に4K放送を視聴できるだけでなく、IoT、AI、AR/VR機能を搭載し、屋内での利用に加え、屋外からのスマートフォン等を通じた各種連携アプリケーションの利用が想定されており、コンシューマ市場に加え、様々なビジネス用途での販売を見込んでいる。
同STB関連での売上高は、2017年9月期22億円を予想している。
(2) ホームIoT事業
IDC Japan(株)によれば、国内IoT市場は2020年まで年平均16.9%で成長し、市場規模は13.8兆円に達すると予想されており、同社はターゲットとするホームIoT市場をその10%の1.4兆円と予想している。
同社は、総務省のIoT創出支援事業にかかる実証事業の委託先に、ホームIoT分野では唯一選定されている。
同社はConteブランドにて、SIMフリー対応のLTE対応USBドングルの販売を前期より開始しており、さらにLTEと同時購入の場合には高速容量無制限のLTEが業界最安値となる、月額1,480円(税別)のMVNOサービス「ピクセラモバイル」を今期より開始している。
MVNOの格安SIMに対応したLTE対応USBドングルは現時点では同社製品以外になく、幅広いOS(オペレーティングシステム)をサポートしていること、バッテリーを内蔵していないこと等から、ビジネス用途での引き合いも強く、バス内やコンビニ内でのデジタルサイネージ(情報・広告表示ディスプレイ)等で既に導入されている。
また、離れた場所から家の監視や家族の見守りを手軽に導入できる月額500円(税込)からのConteホームサービスも2016年9月期より開始し、自社ECサイト「NextMall」にて販売している。
これらにより、ハードウェアの製品の販売収益のみに依存しない、継続的で利益率の高いサービス収益の基盤を構築していく方針である。
ホームIoT事業関連での売上高は、2017年9月期5億円を予想している。
(3) AI・ビッグデータ事業
EY総合研究所(株)によれば、国内におけるサービス、広告、生活関連情報分野でAIを活用した機器・システム等の市場規模は、2020年に4.5兆円に達すると予測されている。
同社は、自社のテレビチューナーを利用する多数のユーザーを既に抱えており、バンドルソフトを通じてテレビの視聴データの収集が可能な状況にあることから、それらのデータや分析結果を、広告の効果測定や配信最適化に活用したい広告主や広告代理店へ販売するほか、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開しデータ分析基盤をオープンプラットフォームとして提供することを想定している。
同社のiPhone・iPad用Lightningコネクタ接続タイプの地デジフルセグチューナー向けアプリ「モバイルTV(Station TV)」の最新バージョンでは既に、どの番組を何人が視聴しているかを、同社のクラウドサービス「テレビ視聴データサービス」で分析し、アプリ上にリアルタイム表示することができるようになっている。
AI・ビッグデータ事業は、2018年9月期以降の本格的な展開を計画している。
(4) AR/VR事業
AR/VR事業においては、360度パノラマ動画を視聴できるスマートフォン用VR無料アプリ「パノミル」の提供を既に開始しており、パ・リーグやJリーグの試合のライブ配信等の実績を積み重ねている。
リアルタイムステッチ(映像の貼合わせ)、エンコード(符号化)、配信、視聴アプリまでを統合的に提供・サポートできるのが同社の強みである。
今後は、対応VRゴーグルを増やすとともに、4K放送対応STB経由で視聴できるようにすることで、AR/VR市場の拡大に応じた展開を計画している。
同社はこれらの事業の推進に合わせて、2016年9月期において30%であった自社ブランドの売上構成比を2019年9月期に41%へ高める計画であり、自社ブランドでのビジネス強化を図るため、ピクセラブランドの刷新を進めており、2017年10月にCI・ロゴ・ブランドデザインを刷新する予定となっている。
また、これらの事業の拡大を自社の経営資源のみで進めることは成長スピードに一定の制約があることから、M&A・提携を並行して実施することとし、新株予約権の行使によって調達する資金を充当することを想定している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 廣田重徳)