◇以下は、FISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 2018年冬号 −10年後の日本未来予想図』(10月5日発売)の特集『アマゾン・エフェクトの脅威』の一部である。
全9回に分けて配信する。
米アマゾン・ドット・コムの急成長・急拡大による市場での混乱や変革。
一大現象となっているアマゾン・エフェクト。
実店舗からオンラインへと消費者購買行動が移行し、米国内の百貨店やショッピングモールが閉鎖に追い込まれるなど、既存の消費関連企業に衝撃をもたらした。
同社のさらなる買収や事業拡大は他の分野にも広がっており、その影響で収益低下が見込まれる「アマゾン恐怖銘柄指数」なるものまで設定された。
アマゾン・エフェクトとはいかなるもので、これから日本にもどのような影響を及ぼすことになるのか。
アメリカで起こったことを検証しながら考察してみた。
■影響範囲が広がるアマゾン・エフェクト
小売市場におけるEC市場のシェアが高まれば、アマゾン恐怖指数構成銘柄に代表される従来型の店舗型小売業に与える影響が大きいことは理解しやすい。
しかし、その影響は単に従来型の小売業から売上や利益を奪うだけにはとどまらない。
ここまでは主に小売業について述べてきたが、すでに述べたように、米アマゾンの収益の柱はECサイトではない。
世界規模で見るとECサイトはいまだに赤字が続いており、アメリカ・カナダでもわずかに黒字といった状態だ。
2018年第2四半期で過去最高となる純利益25億3,000万ドル(約2,800億円)を記録したが、利益の大半は、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)と呼ばれるクラウドサービスによるものだ。
AWSはコンピューティング、ストレージ、データベース、分析、ネットワーキング、モバイル、開発者用ツール、管理ツール、セキュリティ、エンタープライズアプリケーションなど、クラウドベースで様々なサービスを幅広く提供しており、安い初期費用など低コストを武器に急成長を遂げている。
クラウドサービスにおける世界シェアでも、アマゾンはシェア30%を超えてトップ。
そのあとにマイクロソフト、IBMと続く。
日本勢は、富士通、NTTが「NEXT10」(6位から15位のベンダー)に入る程度だ。
この分野にも当然、「アマゾン・エフェクト」は及んでいる。
日本のクラウドサービス分野では、富士通 (T:6702)、NTTデータ (T:9613)、日本電気 (T:6701)(NEC)などが強みを持っていたが、AWSの登場で業界地図に地殻変動が起こり、AWSが瞬く間に国内シェアでトップに躍り出た。
簡単に導入できるうえ、低価格で利用でき、かつセキュリティも強固であることから、国内でも導入企業が急増したのだ。
アマゾンのAWSのページへ行けば、国内の名だたる企業の導入事例が紹介されている。
このなかには日本企業からAWSに乗り換えた企業が少なくないこともうかがえる。
2018年8月にNTTグループは19年ぶりとなるグループ再編を発表したが、この背景にもアマゾンの存在が見え隠れする。
NTTは成長戦略として「グローバルなITサービス企業への転身」を掲げているが、当初の目論見どおりにはなっていない。
この再編はITサービスを提供するNTTデータ、NTTコミュニケーションズなど5社を新たに設立するグローバル持ち株会社に移管し、海外事業と海外事業に分けたうえで、重複を解消して統合して競争力を高めるのが狙いだ。
1990年代には時価総額世界一だったNTTだが、今では世界2位の時価総額を誇るアマゾンに大きく上回られている。
このようなグループ再編でアマゾンやIBMの牙城をどこまで崩せるのかに注目したいところだ。
(つづく~「アマゾン・エフェクトの脅威vol.8 日本におけるアマゾン・エフェクトとは【フィスコ 株・企業報】」~)
全9回に分けて配信する。
米アマゾン・ドット・コムの急成長・急拡大による市場での混乱や変革。
一大現象となっているアマゾン・エフェクト。
実店舗からオンラインへと消費者購買行動が移行し、米国内の百貨店やショッピングモールが閉鎖に追い込まれるなど、既存の消費関連企業に衝撃をもたらした。
同社のさらなる買収や事業拡大は他の分野にも広がっており、その影響で収益低下が見込まれる「アマゾン恐怖銘柄指数」なるものまで設定された。
アマゾン・エフェクトとはいかなるもので、これから日本にもどのような影響を及ぼすことになるのか。
アメリカで起こったことを検証しながら考察してみた。
■影響範囲が広がるアマゾン・エフェクト
小売市場におけるEC市場のシェアが高まれば、アマゾン恐怖指数構成銘柄に代表される従来型の店舗型小売業に与える影響が大きいことは理解しやすい。
しかし、その影響は単に従来型の小売業から売上や利益を奪うだけにはとどまらない。
ここまでは主に小売業について述べてきたが、すでに述べたように、米アマゾンの収益の柱はECサイトではない。
世界規模で見るとECサイトはいまだに赤字が続いており、アメリカ・カナダでもわずかに黒字といった状態だ。
2018年第2四半期で過去最高となる純利益25億3,000万ドル(約2,800億円)を記録したが、利益の大半は、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)と呼ばれるクラウドサービスによるものだ。
AWSはコンピューティング、ストレージ、データベース、分析、ネットワーキング、モバイル、開発者用ツール、管理ツール、セキュリティ、エンタープライズアプリケーションなど、クラウドベースで様々なサービスを幅広く提供しており、安い初期費用など低コストを武器に急成長を遂げている。
クラウドサービスにおける世界シェアでも、アマゾンはシェア30%を超えてトップ。
そのあとにマイクロソフト、IBMと続く。
日本勢は、富士通、NTTが「NEXT10」(6位から15位のベンダー)に入る程度だ。
この分野にも当然、「アマゾン・エフェクト」は及んでいる。
日本のクラウドサービス分野では、富士通 (T:6702)、NTTデータ (T:9613)、日本電気 (T:6701)(NEC)などが強みを持っていたが、AWSの登場で業界地図に地殻変動が起こり、AWSが瞬く間に国内シェアでトップに躍り出た。
簡単に導入できるうえ、低価格で利用でき、かつセキュリティも強固であることから、国内でも導入企業が急増したのだ。
アマゾンのAWSのページへ行けば、国内の名だたる企業の導入事例が紹介されている。
このなかには日本企業からAWSに乗り換えた企業が少なくないこともうかがえる。
2018年8月にNTTグループは19年ぶりとなるグループ再編を発表したが、この背景にもアマゾンの存在が見え隠れする。
NTTは成長戦略として「グローバルなITサービス企業への転身」を掲げているが、当初の目論見どおりにはなっていない。
この再編はITサービスを提供するNTTデータ、NTTコミュニケーションズなど5社を新たに設立するグローバル持ち株会社に移管し、海外事業と海外事業に分けたうえで、重複を解消して統合して競争力を高めるのが狙いだ。
1990年代には時価総額世界一だったNTTだが、今では世界2位の時価総額を誇るアマゾンに大きく上回られている。
このようなグループ再編でアマゾンやIBMの牙城をどこまで崩せるのかに注目したいところだ。
(つづく~「アマゾン・エフェクトの脅威vol.8 日本におけるアマゾン・エフェクトとは【フィスコ 株・企業報】」~)