MSOL Research Memo(7):「MSOL Consulting」などのブランドのもと既に具体的な動きに着手

発行済 2019-09-10 15:27
更新済 2019-09-10 16:01
© Reuters.  MSOL Research Memo(7):「MSOL Consulting」などのブランドのもと既に具体的な動きに着手

■中長期の成長戦略と進捗状況3. 『既存事業の多角化』の進捗状況既存事業の多角化という軸においては、マネジメントコンサルティング領域への拡大やシェアードPMO事業の立ち上げ、M&Aによる多角化などが例示されている。

また、具体的サービスブランド(一部、仮称を含む)としてMSOL Consulting、Shared PMO、MSOL Digitalなどが示されており、既に具体的な動きが始まっている。

(1) MSOL Consulting(マネジメントコンサルティング)マネジメントコンサルティング領域への進出は、PMO支援専門会社からスタートした同社からは上流に進出する形となり、マネジメントコンサルティングの企業がPMO支援をも含めて一貫してサービスを提供しようという川下展開の動きと、真逆の関係となる。

同社のマネジメントコンサルティング領域への進出は、そこを専門領域とするマネジメントコンサルティング会社に真っ向勝負挑むというよりは、PMO支援ビジネスの拡大を図るためのブランディングやマーケティングの一環という意味合いの方が強いと考えられる。

この点は、例えばマネジメントコンサルティングとPMO支援それぞれの、顧客企業におけるカウンターパート(対応相手)の違いを考えればわかりやすいだろう。

PMO支援のカウンターパートはプロジェクト遂行の現場の責任者ということで、(企業規模やプロジェクトの規模によっては取締役、執行役員もあるが)部長・課長が中心だ。

一方、マネジメントコンサルティングにおけるそれは経営トップだ。

同社がマネジメントコンサルティングに乗り出す真意はここにある。

具体的な事業展開の内容や方法論は今後示されてくると考えられるが、マネジメントコンサルティングの受注にこだわる必要はなく、1つの例としてはマネジメントコンサルティング関連の出版物の発行が考えられる。

出版物がヒットすれば同社の存在感を示す有力な手段となる。

同社はマネジメントコンサルティング領域の開拓のためのコア人材を既に獲得済みで、2020年10月期から活動を本格的に開始する予定だ。

(2) Shared PMO(シェアードPMO)シェアードPMOとは、PMO支援事業のサービス提供の派生形態だ。

通常のPMO支援では、1人(あるいは数人)のPMOプロフェッショナルが1社(1プロジェクト)にフルタイムでサービスを提供している。

それに対してシェアードPMOでは、1人のPMOプロフェッショナルが1つのプロジェクトにパートタイムでサービスを提供しながら同時に複数のプロジェクトをカバーする形態を取る。

週に1日ずつの割合で同時に5社(5プロジェクト)をカバーするというイメージだ。

同社がこれを導入する当初のきっかけは、諸事情からフルタイムで働けなくなった人材の活用方法や、働き方改革への対応という、同社内部の事情にあった。

IT技術の発達や、リモートワーク・パートタイムワークへの社会的な理解の深まりもあり、シェアードPMOが受け入れられ、あるいは有効に機能する枠組みは、現代の日本社会には十分備わっていると考えられる。

同時にまた、シェアードPMOはビジネス拡大の観点及びユーザー視点からも有効だと弊社では考えている。

同社の顧客は大企業が中心であることは前述のとおりだ。

しかしシェアードPMOにおいては資金力に劣る中堅企業を顧客にすることが可能になる。

キャベツ1個が200円で売られている傍らで、お1人様用の4分の1カットのキャベツが100円で売られていることをイメージすればわかりやすいだろう。

また、こうしたプライシング(値付け)に表れているように、収益性の点でもシェアードPMOは通常のPMO支援を上回る可能性がある。

シェアードPMOは2018年10月期から立ち上がり、2019年10月期第2四半期の実績としてはクライアント6社を抱え10百万円の売上高を計上した。

事業としてはまだまだトライアンドエラーの段階で、走りながらも更なる事業拡大に向けて、料金プランやサービス提供の内容や時間配分のあり方、ターゲット顧客層といった事業モデルの詰めをしているものとみられる。

中長期的に期待が大きいため、最適な事業モデル及びフィーテーブル(料金表)の設定に時間をかけるのは重要だと言えるだろう。

シェアードPMOの具体的な計数目標については中期経営計画発表に合わせて開示されるものと弊社ではみている。

(3) MSOL DigitalMSOL Digitalとは、前述のMSOL Consulting同様、PMO支援をスタートにその周辺領域に事業領域を拡大する動きの一環で、具体的にはITコンサルティング領域への進出を意味している。

これはブランディングやマーケティングを主目的とするMSOL Consultingとは異なり、PMO支援の実務上のニーズから生じた必然の動きで、直接的な収益拡大を狙ったものと言える。

MSOL Digital に乗り出す背景は以下のようなものだ。

すなわち、PMO支援の提供先である顧客のプロジェクトは業務効率化を目的とすることが多いが、それは現代においてIT化とほぼ同義と言える状況だ。

PMO支援業務がITコンサルティングと非常に近いところに存在するという現実を踏まえて、ITコンサルティングのニーズを自社のビジネスとして取り込むための取り組みがMSOL Digitalということだ。

現状、同社にはITコンサルティングの人材は不足している。

またノウハウが十分でないことも同社自身が自覚している。

それゆえ同社は、ITコンサルティング企業とパートナーシップを組んでそれぞれの強みを生かしてプロジェクトに臨む態勢を考えている。

ビジネスモデルの詳細は現在検討中で、この点についても詳細発表は中期経営計画の発表時となる見通しだ。

MSOL Digitalについて、弊社では非常に興味深い取り組みと考えている。

事業モデルの詳細が決定していないため現時点では仮定でしかないが、仮に同社が案件の元請けとなる形となれば、案件1件当たりの収入は倍増(PMO支援+ITコンサルティング)となり、同社が2025年10月期に目指す売上高200億円という目標達成に大きく貢献すると期待される。

一方で、ITコンサルティングを取り込むことは、PMO支援特化型モデルに比べて事業リスク(例えば、受注プロジェクトが赤字となるリスク)が高まると言え、その点は注意が必要だ。

事業リスクの見極めも含めて、まずは同社からの詳細発表を待ちたい。

PMO支援の総合ソフト『PROEVER』を自社開発し、9月に販売開始4. 『海外展開&ソフトウェア』の進捗状況海外展開&ソフトウェアの領域に関しては、2019年10月期第2四半期にソフトウェアに関して大きな進展があった。

同社は、PMO支援の領域を総合的にカバーする自社開発ソフト『PROEVER(プロエバー)』を2019年9月に発売した。

同社は創業後の早い段階からシステム開発・ソフト開発に注力しており、プロジェクト管理ツールの『ProViz』をリリースしている。

また、今回と同じ「プロエバー」の名称でナレッジマネジメントシステムを既にリリースしている。

今回発売した『PROEVER』は、過去にリリースしたソフトの機能を包含し、さらにリスクマネジメント(リスクの評価と分析など)を加えた、同社が有するPMO支援のノウハウを集結したものとなっている点で、過去のものとは大きく異なっている。

『PROEVER』では、サービスの提供形式として、クラウド版とオンプレミス版(自社サーバー上での運用)の2つを用意している。

課金体系は顧客の社員1人当たり月額1万円前後(プロジェクト関与数が100人いれば100倍の100万円/月の収入となる)のイメージとみられるが、その詳細や中期的なソフトウェア部門の売上計画などは中期経営計画において発表される見通しだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)

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