[ロンドン/ブリュッセル/ワシントン 2日 ロイター] - 米国は2日、欧州連合(EU)からの輸入品に対して、18日にも報復関税を発動すると発表した。EUによる航空機大手エアバス (PA:AIR)への補助金を巡る問題で、世界貿易機関(WTO)が同日、米国が欧州製品75億ドル相当に報復関税を課すことを承認したため。EUも報復措置を検討しており、米国と欧州の貿易摩擦は一段の激化が見込まれる。
米通商代表部(USTR)の発表によると、報復関税は、航空機が10%、他の工業品や、ワインやチーズなどの農産品には25%を上乗せする。エアバスが仏英独スペインの4カ国による共同事業体(コンソーシアム)であることを踏まえ、この4カ国で生産される大型エアバス機が対象に含まれるが、エアバスの米アラバマ工場や米ボーイング (N:BA)に供給されるEU製の航空部品には適用されない。
対象品目は数百に上り、仏英独スペインの4カ国が主な標的となっている。スペイン産オリーブ、英国産ウール商品やウイスキー、ドイツ産コーヒー、フランス産ワインなどだ。チーズはほぼ全EU加盟国が追加関税の対象となるが、欧州産チョコレートやイタリア産ワインおよびオリーブ油は対象外となった。
USTRは「米国はいつでも関税を引き上げたり対象品目を変更する権限がある」と表明した。
USTRはWTOの紛争処理機関(DSB)の会合を前倒しで開催し、今月14日までに報復関税を正式承認するよう要請した。
報復関税を課すことを認めたWTO小委員会は、エアバスの超大型旅客機「A380」などに対する欧州政府の補助金により、米国は年間75億ドル相当の損害を被ったと指摘した。
欧州委員会は米国の報復措置は「近視眼的で非生産的だ」と批判。エアバスも「航空業界だけでなく、世界経済全体が不安定になり、大きな混乱を引き起こす」との声明を発表し、世界は勝者なき貿易戦争に突入すると批判した。さらに、同社は、米国内の組み立て工場や4000人の雇用を通じて米国経済に貢献していると強調した。
米国の専門食品輸入業者はトランプ政権に対し、関税を発動しないよう求めていた。業界団体によると、米国内の専門食品店1万4000店に加え、2万を超える他の食品小売業者が関税の影響を受ける。
エアバス機を購入する米航空会社にとっても大幅な負担増につながる可能性がある。デルタ航空 (N:DAL)は、発注済みのエアバス機約170機が影響を受ける恐れがあると明らかにした。デルタは文書で、航空機は高額製品で、多くは生産に何年も要すると指摘した上で「米企業が既に契約した航空機に関税を課すことは、米航空会社やその何百万人もの米国人従業員、そして旅行者に深刻な悪影響を及ぼすだろう」と警告した。
米国とEUは、2004年からエアバスと米ボーイングの補助金の違法性を巡り争い、それぞれWTOに提訴していた。WTOは既に両社に対する巨額の補助金は違法だと判断している。
WTOは来年早々にも米国製品に対するEUの輸入関税規模を決定する予定。