[ブリュッセル 5日 ロイター] - フェイスブック (O:FB)が導入を計画している暗号通貨(仮想通貨)「リブラ」に対し世界の規制当局が警戒感を示す中、欧州連合(EU)が欧州中央銀行(ECB)に対し、公的なデジタル通貨の発行を検討するよう提言することがロイターが入手した草案文書で明らかになった。
草案文書は輪番制の欧州理事会議長国を務めるフィンランドが準備。EUが今月8日に開く財務相理事会で検討され、12月5日の次回の会合で採択される可能性がある。討議の過程で修正される公算はあるが、現在の形のまま採択されればEU域内で仮想通貨に対する規制強化につながる。
草案文書は「ECB、およびEU加盟国の各国中央銀行は、発行に向けた具体的な措置の検討を含め、中銀がデジタル通貨を発行することの機会と課題を有効に検証できる」としたほか、仮想通貨に対するEU共通の対応策の策定も呼び掛け、こうした対応策にはリスクが高過ぎると判断されたプロジェクトの禁止も含まれるとした。
フェイスブックが計画するリブラは「ステーブルコイン(法定通貨を裏付けとしたデジタル通貨)」の1つだが、ビットコインなどの仮想通貨はステーブルコインとは定義されない。ただリブラもビットコインも仮想通貨と定義される。
ステーブルコインについては、主要7カ国(G7)がリスクが対応されるまで発行が許可されてはならないとの見解を表明。20カ国・地域(G20)も先月ワシントンで開いた財務相・中央銀行総裁会議で、ステーブルコインに対する厳格な規制を導入することで合意。公的政策と規制の面で「深刻な」リスクをはらむ恐れがあるとし、声明で「プロジェクトが開始される前に、特に資金洗浄、違法資金、消費者と投資家の保護などに関連したリスクについて検証を行い、適切に対応する必要がある」とした。
EU草案文書もこうした懸念を反映し、資金洗浄、消費者保護、決済システム機能、課税、サイバーセキュリティーなどに言及。ただ、リスクの高いプロジェクトの禁止のほか、中銀による公的なデジタル通貨の発行を提言している点で、一歩踏み込んだ形になっている。
フェイスブックのリブラ構想を巡っては、ECBのクーレ専務理事が9月にヘルシンキで開かれたユーロ圏財務相会合後の記者会見で「一種の警鐘」だったとし、「中銀が発行する仮想通貨を巡る構想を先に進める必要がある」と述べたほか、仏独は共同声明で、リブラは金融部門に対するリスクとなるとし、欧州での認可を阻止する可能性を示すと同時に、代替となる公的な仮想通貨の創設に支持を表明した。