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シンバイオ製薬 Research Memo(4):「トレアキシン(R)」は悪性リンパ腫の標準療法として適応拡大が進展

発行済 2019-11-27 15:04
更新済 2019-11-27 15:21
© Reuters.  シンバイオ製薬 Research Memo(4):「トレアキシン(R)」は悪性リンパ腫の標準療法として適応拡大が進展

■シンバイオ製薬 (T:4582)の会社概要(2) リゴセルチブ(注射剤/経口剤)「リゴセルチブ」はユニークなマルチキナーゼ阻害作用(がん細胞の増殖、浸潤及び転移に関与する複数のキナーゼを阻害することによりがん細胞を死に至らしめる作用)を有する抗がん剤で、高リスクの骨髄異形成症候群(MDS)※を適応症として開発を進めている。

※MDSとは、骨髄にある造血幹細胞の異常により、正常な血液細胞を造ることができなくなる病気で、正常な血液細胞が減少し、貧血、感染症、出血などの症状が出るほか、急性骨髄性白血病に移行することでも知られている。

骨髄の状況を検査し、白血病移行期間の予測判定を行い、期間の長さ等によって4段階に分類している。

高リスク分類は25%白血病移行期間で0.2年、50%生存期間中央値で0.4年となっている。

国内の患者数は約1.1万人。

唯一の根治療法は造血幹細胞移植となっており、化学療法では「アザシチジン」が第一選択薬として使用されている。

国内では日本新薬 (T:4516)が「ビダーザ(R)」の商品名で販売しており、薬価ベースで年間150~160億円の売上規模となっている。

現在の開発状況は、注射剤で再発・難治性の高リスクMDSを適応症とした国際共同第3相試験を導入元であるオンコノバで実施しており(目標症例数360例)、2019年10月の発表では目標症例数に対して90%弱の症例数となっており、同社が担当する日本でも目標症例数50例に対して、同年10月末時点で48症例の登録となっている。

オンコノバでは、2020年度上期に主要評価項目の結果を発表するとしており、同試験結果を基に、欧米と同時期に日本でも承認申請を行う計画となっており、2022年の販売開始を目指している。

また、経口剤では単剤での再発・難治性の高リスクMDSを適応症とした第1相臨床試験を2019年6月に完了し、今後は「アザシチジン」との併用による開発に切り替えていく予定となっている。

オンコノバではFDAとのSPA※に関する協議の結果、未治療の高リスクMDSを対象に「アザシチジン」との併用による臨床試験において、アザシチジン単剤との比較を目的とした第2相臨床試験の実施を検討することを発表している。

同社では国際共同第3相臨床試験が開始されれば、日本における開発を担当していく予定となっている。

そのほか、輸血依存性の低リスクMDSを目標効能とした開発についても、オンコノバの開発状況を見据えながら日本での参加を検討していくことにしている。

※SPA(特別プロトコル査定):第2相臨床試験後に、第3相臨床試験について対象疾患、目的、試験デザイン、エンドポイント(主要及び副次評価項目)、解析方法などに関してFDAと事前に合意し、試験終了後は合意内容を変更せずにそのまま承認審査での承認要件として認める制度。

同制度を利用することで、試験結果の評価及び審査についてエンドポイントが達成されていれば、承認の可能性が高まり審査のプロセスと時間が短縮される。

(3) ブリンシドフォビル(注射剤)BCVは、サイトメガロウイルス網膜炎治療薬等で知られているCDVに脂肪鎖を結合した構造となっており、CDVよりも高活性の抗ウイルス効果が得られるほか、優れた安全性を持つ新たな抗ウイルス薬候補となる。

脂肪鎖を結合することでCDV単体よりも細胞内に侵入しやすくなり、細胞内に侵入すると脂肪鎖が切り離され、二リン酸と結合することでDNAウイルスの複製を阻害する役割を果たす。

このため、CDVや他の抗ウイルス薬と比較してウイルスの増殖抑制効果が格段に高くなるというデータがin vivo試験などで得られている。

また、安全性という点においては、CDVが腎尿細管上皮細胞に蓄積することで、腎機能障害を発生するなど腎毒性が強いといった副作用リスクがあったが、BCVは脂肪鎖と結合することで逆に腎尿細管上皮細胞内に蓄積されなくなり、腎毒性も回避できるといった優れた特徴を持つ。

キメリックスはBCVを経口剤タイプで開発していたが、第3相臨床試験で優位な結果が得られず開発を中断していた。

現在は抗がん剤分野に経営リソースを集中しており、BCVについてはライセンスアウト先を探していたところで、新規導入品を探索していた同社とタイミングが合致し、グローバルライセンスの契約締結に至った。

同社が導入を決めたポイントは、経口剤よりも消化管への暴露が少なく、脳への移行率も高い注射剤であれば開発に成功する可能性が高いと判断したこと、また、血液疾患領域で既存事業とのシナジー効果が見込めることにある。

なお、ウイルス感染症のうち、天然痘だけ対象外となっているのは、バイオテロ対策として天然痘治療薬を米国政府が自国で製造、備蓄しておく必要があるためだ。

同社はBCVを今後の戦略的パイプラインとして開発を進めていくことになる。

造血幹細胞移植後のウイルス感染症だけでなく、腎臓移植等の臓器移植後のウイルス感染症治療薬としての開発も視野に入れている。

これら領域は有効かつ安全な治療薬がない「空白の治療領域」となっており、同社が開発を進める意義は大きい。

また、今回の契約では日米欧を含む世界全域を対象としていること、製造権も含めた独占的ライセンス契約となっていることが特徴となっている。

「トレアキシン(R)」についても韓国、台湾、シンガポールでパートナーを通じて販売が行われていたが、小規模で業績に与える影響も軽微だった。

BCVについては世界全域が対象となっており、開発に成功すれば成長ポテンシャルは格段に大きくなる。

造血幹細胞移植(他家)件数を見ると、日本では年間3,700件に対して、欧米はその7倍となる約2.5万件、腎臓移植に関しては日本の1,648件に対して、欧米で20倍以上の約4万件となっている。

造血幹細胞移植後のウイルス感染症発症率について見ると、日本ではウイルス性出血性膀胱炎(vHC)で8.6~24%(臍帯血移植はさらに高い)、HHV-6脳炎予防に関してはHHV-6の再活性化が30~70%の患者に生じ、HHV-6脳炎の原因になっているとの報告がなされている。

同社はこうしたデータ等を基に2027年のウイルス感染症患者数の推計を行っており、造血幹細胞移植後のvHC(治療)及びHHV-6脳炎(予防)では日本で約2,600人、欧米で約1.4万人、腎臓移植後のBKウイルス(治療)及びサイトメガロウイルス感染症(予防)では、日本で約550人、欧米で約1.5万人となる。

また、腎臓移植に関しては中国やその他地域でも活発に行われていることから、世界ベースで見るとさらに感染者数は多くなる。

こうしたことから、BCVの開発に成功すれば潜在的な市場規模は数百億円規模になる可能性もある。

同社では、BCV注射剤の開発方針として、まずは医療ニーズが高い造血幹細胞移植後のウイルス性出血性膀胱炎(治療)とHHV-6脳炎(予防)を疾患ターゲットに進めていく予定にしている。

キメリックスにおいて既に第1相臨床試験を終えていることから、同データを援用して第2相臨床試験から進めたい意向のようだ。

また、承認審査期間を短縮できる先駆け審査制度の活用も検討している。

今回の契約では製造権も含まれていることから、製造委託先を今後決める必要があるが、特殊な製造技術は要しないことから委託先は早期に見つかるものと思われる。

このため同社では、2020年内の臨床試験開始、2024年頃の上市を目指している。

なお、海外展開に関しては対象疾患の地域特性を生かしたパートナーシップ戦略を推進していく方針となっている。

キメリックスとの契約条件に関しては、契約一時金として5百万米ドル(約5.4億円)を2019年第3四半期に支払い、将来的なマイルストーンとして最大180百万米ドル(約194億円)、製品売上高に応じて2ケタ台のロイヤリティを支払う契約となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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