内田慎一
[東京 28日 ロイター] - テレワーク期間中に仕込んだら、値動きが激しすぎて仕事が手につかない──こんな個人投資家の嘆息が聞こえてきそうなのが、原油先物価格の反転を見越して人気が沸騰している原油関連のETFだ。商品性の複雑さから、原油先物価格が上昇に転じても単純には指標の上昇に追随できず、大物個人投資家や東証までが注意喚起する事態になっている。
<原油ETFの「勝負」、cis氏も注意>
先週24日、東証は原油関連のETF(上場投資信託)やETN(上場投資証券)の値動きについて投資家に注意喚起した。上場する5つの投資商品について、原油先物価格の急落など原資産の値動きが大きいことから、各投資商品の値動きも拡大しやすいほか、WTI先物をはじめとする指標と投資商品の値動きに乖離が生じやすいとして、投資にあたっては価格変動の大きい商品であることに留意するよう求めた。
こうした注意喚起は、それまでも野村証券やSMBC日興証券などが行っており、トレードで230億円稼いだとされる個人投資家、cis氏も17日のツイッターで「原油系ETFで勝負してる人が最近増えてるけど、原油価格で勝負できるわけじゃないので注意」などと呼びかけていた。cis氏に対しては投資家からの感謝のコメントが相次いだ。
実際、これらの原油関連の投資商品は先物価格の変動を受け、大きな値動きが続いている。さらに、原資産が極端な値動きをした場合、投資金額の全額を失いかねないリスクもある。コンタンゴ(期日の遠い先物価格が期日の近い先物価格より高い状態)の場合、原油先物に投資するETFは、期近物を売って期先物に入れ換える際、資金の出入りを考慮しなければ、購入できる枚数が減るという構造的な特徴もある。
20日にはWTI期近物が史上初のマイナス価格に落ち込んだが、「NEXT FUNDS 原油ETF」 (T:1699)、「シンプレクスWTI ETF」 (T:1671)の各運用会社はすでに期先物に乗り換えていた。マイナスに陥ったタイミングで投資したからといって、大きなリターンに簡単に結び付くわけではない。
<投資家のニーズ拡大に運用会社も対応>
原油ETFなどの人気は、「OPECプラス」の減産協議が決裂した3月上旬あたりから特に目立ち始めた。原油先物価格の急落を受け、値動きも大きくなり、株式を主戦場とする投資家も参入したためだ。野村アセットマネジメントは4月22日、投資家のニーズ拡大などを踏まえて、「NEXT FUNDS 原油ETF」の追加信託の限度額を拡大すると発表した。
コモディティーETFは、個人投資家が商品に投資する際に比較的参入しやすい手段としての存在意義もある。野村アセット総合企画部の担当者は、このところ投資家からの問い合わせが増えているとした上で「丁寧に説明できるよう、情報開示していきたい」と述べている。
(編集:石田仁志)