[東京 8日 ロイター] - 日本製鉄 (T:5401)は8日、現時点で合理的な算定・予想を行うことができないとして、2021年3月期(国際会計基準、IFRS)の決算見通しの開示を見送った。新型コロナウイルスの感染拡大により自動車をはじめ急激な需要減に見舞われており、4―6月期の粗鋼生産は700万トン(前年同期は1027万トン)・稼働率は60%程度に低下。橋本英二社長は会見で「上期の大幅な(単独営業)赤字は避けられない」との見通しを示した。
新型コロナウイルスの感染拡大終息後は、いかなる環境でも、単独営業利益の黒字を確保する方針を掲げた。今期は、修繕費の圧縮や償却費などで年2000億円の固定費圧縮を行う。また、年500億円以上の変動費削減も行う。
新型コロナは7―9月期も影響継続を想定、回復時期は不透明としている。橋本社長は「終息後も他の業界に比べて回復は緩やか」との見通しを示した。石油価格の大幅下落や鉄の需要増が見込めるはずだった新興国の停滞も影響する。また、中国のいち早い回復により、中国鉄鋼業界の存在感が増すことにも懸念を示した。
経済産業省が発表した7―9月期の国内粗鋼生産量見通しは1936万トンで前年同期比26%減を見込んでいる。橋本社長は、リーマンショック時も9000万トンを維持した全国粗鋼生産は、上期末までにコロナが終息したとしても8000万トンを下回るとの見通しを示した。
2020年3月期の連結売上収益は前年比4.2%減の5兆9215億円、本業の儲けを示す事業損益は2844億円の赤字(前期は3369億円の黒字)、最終損益は4315億円の赤字(同2511億円の黒字)となった。
単独の粗鋼生産は3954万トンで、前年の4100万トンから低下。鋼材平均価格も1トンあたり8万7300円で前年の8万9900円から下落した。
同社は8日、北海製鉄(北海道室蘭市)第2高炉の改修のための操業休止を2020年7月上旬以降に前倒し実施すると発表。さらには、九州製鉄所八幡地区小倉第2高炉(福岡県北九州市)についても7月上旬以降に一時休止するとした。すでに、東日本製鉄所君津地区第2高炉(千葉県君津市)についても、5月中旬以降に一時休止すると発表している。
構造改革として、瀬戸内製鉄所呉地区第2高炉(広島県呉市)を2月15日から休止していたが、さらに、新型コロナの影響により、東日本製鉄所鹿島地区第1高炉(茨城県鹿嶋市)を4月15日から、関西製鉄所和歌山地区第1高炉(和歌山市)も4月25日から一時休止しており、今年に入って、一時休止の対象となった高炉は計6基となる。
橋本社長は「今後の市場動向によっては追加の構造対策として休止せざるを得ない高炉も出てくる」との見方を示した。
*内容を追加しました。
(清水律子)