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インタビュー:マイナス金利の大きな副作用、世界のコンセンサス=白井氏

発行済 2020-05-15 12:44
更新済 2020-05-15 12:45
© Reuters.

[東京 15日 ロイター] - 白井さゆり慶應義塾大学総合政策学部教授(元日銀審議委員)は、ロイターの電話インタビューで「マイナス金利は副作用が大きいというのは世界のコンセンサスだ」と指摘、日銀の追加緩和手段としてマイナス金利の深掘りは考えにくいと述べた。「今回のようにまれに見る危機の時は民間の活動がどうしても縮小してしまい、動けるのは政府と中央銀行しかない」とし、政府・日銀の積極的な協調を求めた。

<銀行向けオペレーション拡充を>

米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が金融政策の枠組みを見直す議論を行っている。14日に実施したインタビューで白井氏は、政策ツールとしてのマイナス金利を巡る「世界の中央銀行の結論は出た」と話した。

「バーナンキ元FRB議長は、マイナス金利もプラスの金利の世界も同じだと考え、マイナス金利を深掘りしても利ザヤは取れると主張しているが、現実はそうではない。預金金利はマイナスにできない現実がある」と説明し、「マイナス金利が銀行への打撃が大きいのは明白」と話した。

その上で、日銀の追加緩和策として「今必要なのは資産買い入れではなく、銀行が企業に支援できるようにするための銀行向けオペレーションの拡充だ」と指摘した。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日銀は2カ月連続で追加緩和を決めた。白井氏は「さまざまな政策手段を出し尽くしてしまって、手がない中で追加的な支援策がないとの見方もできるが、コロナ危機以降の対応としては米欧に比べ限定的だった」と述べた。

新型コロナで打撃を受けた民間部門の資金繰りを支援するため、日銀は金融機関向けの特別オペを打ち出したが、白井氏は「銀行に本当に中小企業向け貸出を促したいのであれば、日銀が銀行に貸し出す金利に補助金を付けるべきだ」と述べ、金融機関へのマイナス金利貸付に踏み切るべきだとの考えを示した。

「政府と日銀が協調してやれることを(米国や英国のように)積極的に打ち出していくのがいいと思うが、日銀はまだ独立性にこだわりすぎている印象がある」とし、「コロナ危機のような深刻な危機の場合、中銀はできる限り柔軟にイノベーティブであるべきだ」と述べた。

<2%目標より「グリーンリカバリー」>

日銀は2%の物価目標を掲げているが、4月の展望リポートでは予測最終年度の2022年度でも物価が2%に届かない見通しを示した。

白井氏は「自然災害後には復興需要があるが、コロナの場合は緊急事態宣言が解除されて生産を少しずつ増やしていっても、マインドが回復せずに需要が生産に追いつかないかたちになる。需給ギャップがコロナ危機前の状況に戻るのには相当の時間が掛かる」と指摘。「物価2%目標が妥当なのか議論する時が来ると思う」と述べた。

その上で「インフレのメカニズムが構造的に変わってきている。インフレ目標を2%程度にするという常識が崩れていくのではないか」と指摘。円高リスクがあるため、日銀だけが2%の物価目標を取り下げることは難しく、同じく2%目標を掲げるFRBの動向がカギになるとみている。

コロナ終息後の景気回復のあり方については「CO2排出や地球温暖化への対処も考えると、元に戻る回復ではなく『グリーンリカバリー』にすべきではないか」と主張。「日銀も2%のインフレ目標にこだわるよりも、よりグリーンなところに支援することを考えてはどうか」と述べ、「日本のグリーンボンド市場はまだ小さい。例えばS&P/JPXカーボン・エフィシェント指数を購入するのも一法ではないか」と提案した。

インタビュアー:木原麗花、和田崇彦

(編集:石田仁志)

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