[北京/オタワ 10日 ロイター] - 中国遼寧省の高級人民法院(高裁)は10日、麻薬密輸罪に問われたカナダ人被告の死刑判決を維持した。11日にはスパイ罪に問われた別のカナダ人被告の判決も言い渡される。
カナダでは、同国のバンクーバーで逮捕され、米国が身柄引き渡しを求めている中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟最高財務責任者(CFO)の引き渡しを巡る最終審理が進められている。
麻薬密輸罪に問われたのはロバート・シェレンバーグ被告。2014年に逮捕され、2018年終盤に懲役15年の判決を言い渡されたが、孟CFOがバンクーバーで身柄を拘束された1カ月後の2019年1月に、大連市の裁判所が死刑判決を言い渡していた。
孟CFOは無罪を主張している。
カナダのガルノー外相は声明で「中国による死刑判決の維持を強く非難する」と指摘。「われわれはこの残酷かつ非人道的な刑罰に断固反対することを中国に繰り返し伝えている」とした。
カナダのドミニク・バートン駐中国大使は記者団に、裁判所の決定を非難。中国に寛大な措置を求めた上で「今起きていることとバンクーバーで起きていることは、無関係ではない」と述べた。
カナダの野党・保守党のエリン・オトゥール党首は、与党・自由の中国に対する厳格さが十分ではないと言及。中国政府が「政治的な理由でカナダ国民の命を奪うことを計画している」とし、来年の北京冬季五輪への選手団によるボイコットを提案した。
欧州連合(EU)報道官は、中国の適正手続きのほか、この件に関する「恣意性」について懸念を表明。シェレンバーグ被告に対する寛大な措置を呼び掛けた。
中国側は、孟CFOが釈放されなければ重大な結果を招くと警告しているが、カナダ人被告の裁判と関係はないと主張。中国外務省報道官は「シェレンバーグ被告の件は、孟CFOの件と性質的に完全に異なる。この2件を関連付けることの背景には、隠された意図がある」と指摘。シェレンバーグ被告の件では確固たる証拠が得られているとし、判決手続きは法律に則って行われたと述べた。
中国では、孟CFOの逮捕後にスパイ容疑で別のカナダ人2人が逮捕されている。このほか、孟CFOの逮捕後に中国生まれのカナダ人少なくとも3人に対し、薬物犯罪に関連して死刑判決が下されている。