■井関農機 (TYO:6310)の会社概要
2. 事業内容
(1) 整地用機械
整地用機械カテゴリーでは、農業において作付け前の整地に使用するトラクタ、耕うん機、防除などに使用される乗用管理機などを扱っている。
特に欧米においては景観整備業者、ホビーファーマーや一般消費者向けに土木作業用トラクタ・景観整備用トラクタ・乗用芝刈機などの販売が好調に推移しており、2021年12月期の全社売上高に占める割合は34.6%で最大。
海外売上高においては75.5%を整地用機械が占めている。
トラクタカテゴリーにおけるフラッグシップモデルは「T.Japan(TJ)」シリーズ。
65~130馬力のレンジに「TJV5シリーズ」「TJX3シリーズ」「TJW3シリーズ」と3つのシリーズをラインナップしている。
どのシリーズも「高精度・高能率・高耐久」を実現していることに加え、ICTも導入されている点が特徴だ。
例えば、TJV5とTJW3シリーズは農機に搭載したGPSアンテナおよび通信端末を用いて農機の情報を収集できることに加え、盗難抑止機能や稼働情報管理ツールも提供している。
また、TJX3シリーズにおいては、ICTの活用により「作業管理サポート」と「機械管理サポート」を提供するAGRI-SUPPORTを農機に導入することができる。
さらに、最先端の自動運転技術を導入した「ロボットトラクタTJ Vシリーズ」は、(1)トラクタに搭乗せず、有人監視下で行うロボットモード、(2)トラクタに搭乗し、操作は自動で行うオートモード、(3)直進作業をアシストする自動操舵モードの3つの運転モードから状況に合わせたモードを選ぶことができる。
ICTを活用した農機を市場に投入することにより、農作業の効率化、省力化に大きく貢献している。
(2) 収穫調製用機械
収穫調製用機械カテゴリーでは、穀物の刈り取りと脱穀を合わせて行うコンバイン・ハーベスタ・収穫した籾を乾燥させる乾燥機・籾摺機・野菜収穫機などを扱っている。
2021年12月期の全社売上高に占める割合は12.0%と整地用機械、作業機・補修用部品・修理収入に次ぐ売上の柱となっている。
また、海外においても5.8%を占め、同じく整地用機械、作業機・補修用部品・修理収入に次ぐ大きさとなっている。
同カテゴリーにおけるフラッグシップモデルはコンバインの「HJ」シリーズだ。
トラクタと同じく「高精度・高能率・高耐久」を実現していることはもちろん、最新のICTにより効率的な作業管理と機械管理を可能にするAGRI-SUPPORTの機能を標準装備。
また、タイプによっては、遠隔監視による農機の盗難抑止、稼働情報の管理サービスを提供する「ISEKI リモート」も装備している。
(3) 栽培用機械
栽培用機械カテゴリーでは、苗を水田に移植する際に使用する田植機や野菜移植機などの製品を扱っている。
2021年12月期の全社売上高に占める同カテゴリーの割合は7.1%となっている。
同カテゴリーにおけるフラッグシップモデルは、「さなえPRJ8と同ロボット田植機」だ。
「高精度・高能率・高耐久」に加えて、さなえPRJ8にはGPS技術を用いた操舵アシストシステム「ISEKI直進&旋回アシストシステム」が搭載されている。
また、ロボット田植機は有人監視下でリモコン操作における無人作業を可能にする機能を有している。
2021年12月期、田植機のラインナップにJapanシリーズが追加されたことにより、トラクタ、コンバイン、田植機の主力製品カテゴリー全てでJapanを冠した製品が満を持して揃った。
これらは全て大型農機に分類される。
今後農地の大規模化が進む中でJapanシリーズの販売を伸ばし、農業の効率化、省力化に貢献していくことが期待される。
(4) 作業機・補修用部品、修理収入
作業機とは農機本体につける作業器具のことで畝立ての際に使用する「エコうねまぜ君」などが該当する。
その他、修理に関しては販売した農機の故障対応や故障の発生を防ぐためのメンテナンス修理などの対応を全国の整備拠点で行っている。
2021年12月期の全社売上高に占める同カテゴリーの割合は、29.7%と整地用機械に次ぐ売上規模を誇っている。
しっかりとしたメンテナンス修理を行い故障の発生を防ぐことによって顧客からの信頼を獲得できること、天候不順など外部環境に左右されることなく安定して収益をあげられることなどの理由から、近時修理・メンテナンスなど付帯サービスにも注力し増加させている。
(5) 「夢ある農業応援団」、農業用ICT
同社は農機販売などのハードに加えて、有益な営農情報を発信するなどソフト面の活動にも注力している。
「夢ある農業応援団」は「顧客の夢ある(=儲かる)農業を応援する」というコンセプトの下、「夢ある農業総合研究所(夢総研)」を中心に営農提案やサポート活動に取り組んでいる。
また、ホームページ上では低コスト稲作技術に関する情報発信を行ったり、「夢総研だより」という形で最新の技術動向に関する記事の発信なども積極的に行っている。
現時点では、情報発信をすることにより農家との接点を作り出すことを主な目的として活動を展開しているが、今後はコンサルティングサービスのような形で事業化していくことも視野に入れている。
また、農業の省力化、効率化のためにICTの活用も積極的に実施。
営農管理システムとして「ISEKIアグリサポート」「ISEKアグリサポート×アグリノート連携」、遠隔監視サービスとして「ISEKI リモート」を提供しているほか、生育管理関連としてドローンで撮影した農地の画像をクラウド上で保存する「いろは」、ドローン・人工衛星による画像解析を活用し農作業の効率化を実現する「天晴れ」などのサービスを提供している。
「ISEKIアグリサポート」が提供する機能は「作業管理サポート」と「機械管理サポート」の大きく2つに分かれる。
農機に搭載されたICTから得られるデータを記録・分析・管理することによって従来の経験や勘に頼った農業から脱却し、より効率的な農作業の実現を助けるのが「作業管理サポート」だ。
また、「機械管理サポート」では農機から得られるデータを基に農機の状態を把握できる。
事前の点検・メンテナンスを可能にし、未然に故障を予防することを可能にしている。
弊社はICTを活用した営農支援が今後ますます重要になってくると考えている。
2021年に農林水産省が行った調査によると、営農情報の管理について45.7%が「営業日誌等のノートに記載」と回答し最も高い割合を占めていたほか、スマート農機の営農への活用について84.9%が「活用していない」と回答している。
一方で、営農管理システムの活用に関しては51.8%が「活用する意向がある」と回答している。
この調査結果からICTを活用した営農支援やスマート農機の活用によって農業を効率化できる余地、伸び代がいかに大きいかが分かる。
こうした状況を踏まえ同社は、新中期経営計画の「ビジネスモデルの転換」において情報を軸にしたサービス提供や新規ビジネスの創造に注力していく方針を示している。
ICT利活用が進んでいない農業において、「ISEKIアグリサポート」が営農効率化に貢献できる部分は多くあり、同社農機の魅力を高め、売上の拡大に寄与することが期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
2. 事業内容
(1) 整地用機械
整地用機械カテゴリーでは、農業において作付け前の整地に使用するトラクタ、耕うん機、防除などに使用される乗用管理機などを扱っている。
特に欧米においては景観整備業者、ホビーファーマーや一般消費者向けに土木作業用トラクタ・景観整備用トラクタ・乗用芝刈機などの販売が好調に推移しており、2021年12月期の全社売上高に占める割合は34.6%で最大。
海外売上高においては75.5%を整地用機械が占めている。
トラクタカテゴリーにおけるフラッグシップモデルは「T.Japan(TJ)」シリーズ。
65~130馬力のレンジに「TJV5シリーズ」「TJX3シリーズ」「TJW3シリーズ」と3つのシリーズをラインナップしている。
どのシリーズも「高精度・高能率・高耐久」を実現していることに加え、ICTも導入されている点が特徴だ。
例えば、TJV5とTJW3シリーズは農機に搭載したGPSアンテナおよび通信端末を用いて農機の情報を収集できることに加え、盗難抑止機能や稼働情報管理ツールも提供している。
また、TJX3シリーズにおいては、ICTの活用により「作業管理サポート」と「機械管理サポート」を提供するAGRI-SUPPORTを農機に導入することができる。
さらに、最先端の自動運転技術を導入した「ロボットトラクタTJ Vシリーズ」は、(1)トラクタに搭乗せず、有人監視下で行うロボットモード、(2)トラクタに搭乗し、操作は自動で行うオートモード、(3)直進作業をアシストする自動操舵モードの3つの運転モードから状況に合わせたモードを選ぶことができる。
ICTを活用した農機を市場に投入することにより、農作業の効率化、省力化に大きく貢献している。
(2) 収穫調製用機械
収穫調製用機械カテゴリーでは、穀物の刈り取りと脱穀を合わせて行うコンバイン・ハーベスタ・収穫した籾を乾燥させる乾燥機・籾摺機・野菜収穫機などを扱っている。
2021年12月期の全社売上高に占める割合は12.0%と整地用機械、作業機・補修用部品・修理収入に次ぐ売上の柱となっている。
また、海外においても5.8%を占め、同じく整地用機械、作業機・補修用部品・修理収入に次ぐ大きさとなっている。
同カテゴリーにおけるフラッグシップモデルはコンバインの「HJ」シリーズだ。
トラクタと同じく「高精度・高能率・高耐久」を実現していることはもちろん、最新のICTにより効率的な作業管理と機械管理を可能にするAGRI-SUPPORTの機能を標準装備。
また、タイプによっては、遠隔監視による農機の盗難抑止、稼働情報の管理サービスを提供する「ISEKI リモート」も装備している。
(3) 栽培用機械
栽培用機械カテゴリーでは、苗を水田に移植する際に使用する田植機や野菜移植機などの製品を扱っている。
2021年12月期の全社売上高に占める同カテゴリーの割合は7.1%となっている。
同カテゴリーにおけるフラッグシップモデルは、「さなえPRJ8と同ロボット田植機」だ。
「高精度・高能率・高耐久」に加えて、さなえPRJ8にはGPS技術を用いた操舵アシストシステム「ISEKI直進&旋回アシストシステム」が搭載されている。
また、ロボット田植機は有人監視下でリモコン操作における無人作業を可能にする機能を有している。
2021年12月期、田植機のラインナップにJapanシリーズが追加されたことにより、トラクタ、コンバイン、田植機の主力製品カテゴリー全てでJapanを冠した製品が満を持して揃った。
これらは全て大型農機に分類される。
今後農地の大規模化が進む中でJapanシリーズの販売を伸ばし、農業の効率化、省力化に貢献していくことが期待される。
(4) 作業機・補修用部品、修理収入
作業機とは農機本体につける作業器具のことで畝立ての際に使用する「エコうねまぜ君」などが該当する。
その他、修理に関しては販売した農機の故障対応や故障の発生を防ぐためのメンテナンス修理などの対応を全国の整備拠点で行っている。
2021年12月期の全社売上高に占める同カテゴリーの割合は、29.7%と整地用機械に次ぐ売上規模を誇っている。
しっかりとしたメンテナンス修理を行い故障の発生を防ぐことによって顧客からの信頼を獲得できること、天候不順など外部環境に左右されることなく安定して収益をあげられることなどの理由から、近時修理・メンテナンスなど付帯サービスにも注力し増加させている。
(5) 「夢ある農業応援団」、農業用ICT
同社は農機販売などのハードに加えて、有益な営農情報を発信するなどソフト面の活動にも注力している。
「夢ある農業応援団」は「顧客の夢ある(=儲かる)農業を応援する」というコンセプトの下、「夢ある農業総合研究所(夢総研)」を中心に営農提案やサポート活動に取り組んでいる。
また、ホームページ上では低コスト稲作技術に関する情報発信を行ったり、「夢総研だより」という形で最新の技術動向に関する記事の発信なども積極的に行っている。
現時点では、情報発信をすることにより農家との接点を作り出すことを主な目的として活動を展開しているが、今後はコンサルティングサービスのような形で事業化していくことも視野に入れている。
また、農業の省力化、効率化のためにICTの活用も積極的に実施。
営農管理システムとして「ISEKIアグリサポート」「ISEKアグリサポート×アグリノート連携」、遠隔監視サービスとして「ISEKI リモート」を提供しているほか、生育管理関連としてドローンで撮影した農地の画像をクラウド上で保存する「いろは」、ドローン・人工衛星による画像解析を活用し農作業の効率化を実現する「天晴れ」などのサービスを提供している。
「ISEKIアグリサポート」が提供する機能は「作業管理サポート」と「機械管理サポート」の大きく2つに分かれる。
農機に搭載されたICTから得られるデータを記録・分析・管理することによって従来の経験や勘に頼った農業から脱却し、より効率的な農作業の実現を助けるのが「作業管理サポート」だ。
また、「機械管理サポート」では農機から得られるデータを基に農機の状態を把握できる。
事前の点検・メンテナンスを可能にし、未然に故障を予防することを可能にしている。
弊社はICTを活用した営農支援が今後ますます重要になってくると考えている。
2021年に農林水産省が行った調査によると、営農情報の管理について45.7%が「営業日誌等のノートに記載」と回答し最も高い割合を占めていたほか、スマート農機の営農への活用について84.9%が「活用していない」と回答している。
一方で、営農管理システムの活用に関しては51.8%が「活用する意向がある」と回答している。
この調査結果からICTを活用した営農支援やスマート農機の活用によって農業を効率化できる余地、伸び代がいかに大きいかが分かる。
こうした状況を踏まえ同社は、新中期経営計画の「ビジネスモデルの転換」において情報を軸にしたサービス提供や新規ビジネスの創造に注力していく方針を示している。
ICT利活用が進んでいない農業において、「ISEKIアグリサポート」が営農効率化に貢献できる部分は多くあり、同社農機の魅力を高め、売上の拡大に寄与することが期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)