[チューリヒ 31日 ロイター] - スイス国立銀行(中央銀行)のツアブリュック副総裁は31日、次回16日の金融政策会合では、スイスのインフレ率上昇がどれぐらい長く続くかを検討し、その上で将来のスイスの金融政策の方向性を判断することになると表明した。チューリヒでのイベントで発言した。
ツアブリュック氏によると、スイスの物価上昇が賃上げの要請や国民のインフレ期待の高まりといった幅広い問題に波及していく兆候はまだない。同行は政策金利をマイナス0.75%と世界最低のまま維持しているが、賃金インフレの動きもインフレ期待の増大も中銀の方向転換の引き金になる可能性がある。
ツアブリュック氏は「これまでに比べて不確実性が高まっているのは明らかだが、物価の押し上げ要因はなお一時的なものだ」と述べた。サプライチェーンの混乱や燃料費高などが同国の物価上昇の主要因であり、いずれも長くは続かない可能性が高いとの見方を示した。通貨スイスフラン高が輸入インフレの抑制に働いているとも指摘した。
賃上げについては、米国やユーロ圏で見られるような要求の高まりはスイスでは起きていないと指摘。インフレ期待の定着を避ける上では消費者が向こう5年、10年の価格について何を考えるかが重要だとし、この点でスイスでの動きはまだ比較的乏しいとも指摘した。
スイスの4月のインフレ率は年2.5%と中銀目標の0─2%を上回り、2008年以来の高い伸びとなった。このため市場では、中銀がついに利上げを始める可能性があるとの観測が浮上している。