■サムティ (TYO:3244)の業界環境
1. J-REIT市場
今後の成長戦略に重要な影響を及ぼすJ-REIT市場に目を向けると、2022年6月末の時価総額は約16兆3,160億円(前年末比1.4%減)、銘柄数は61となっている。
過去を振り返ると、リーマンショック後の金融引き締め等の影響により一旦低迷する局面があったものの、2012年以降は、国内景気の回復や長期にわたる金融緩和などにより拡大基調をたどってきた。
2020年に入ってからは、コロナ禍による経済全体の停滞懸念等により、ホテルや商業施設などを中心に大きく下落したが、景気変動の影響を受けにくい住宅や物流施設などは堅調に推移してきた。
また、ワクチン接種の進展による経済正常化への期待や低金利環境の継続見通しから、2021年には総じて回復傾向をたどってきた。
東証REIT指数の動向についても、好調な国内不動産市況(賃料相場の上昇等)などからしばらく好調に推移してきた。
特に、日本銀行による金融緩和政策の継続やこれまでの好調なオフィス需要などを背景として、国内外の機関投資家からは利回りを確保でき、キャッシュ・フローが比較的安定しているJ-REITに対する投資意欲は根強い。
コロナ禍の影響により、2020年3月に一旦大きく落ち込んだものの、2021年にはコロナ禍前の過去最高水準に戻ってきた。
ただ、2022年に入ってからは、米国の利上げ観測、国内でのオミクロン株感染拡大などによりやや軟調に推移している。
2. レジデンス(賃貸マンション)
賃貸マンションについては、入居者(利用者)及び投資家双方の旺盛な需要に支えられて好調に推移している。
東京都総務局の公表データによると、同社の供給エリアで高い比率を占める東京23区の人口は、東京都への転入超等を背景として増え続けてきた※1。
特に、若年層を含め、晩婚化や離婚率の増加などを背景として単身世帯の増加が目立っており、今後もワンルームマンションの賃貸需要を支えていくものと考えられる。
この傾向は、大阪や名古屋はもちろん、福岡、札幌など地方大都市圏においても見られており、国内人口が減少する一方で、人口の都市集中化が進んできた。
また、最近では在宅勤務に適したコンパクトマンションへの需要も高まる傾向にある。
それらを背景として、5大都市平均※2の賃料水準・稼働率は安定的な伸びが続いてきたうえ、コロナ禍においても堅調に推移している。
一方、投資家サイドでも、一等地物件などに海外ファンドなどからの1棟買いの引き合いが強い。
※1 ただし、コロナ禍が本格化した2020年4月以降、月別の流出入動向では、東京都への移住の見合わせや在宅勤務の増加などにより流出超過へと転じる状況も見られ、その結果、2021年12月末の人口(東京23区)は前年比で減少に転じた。
ただ、中長期的に見れば、雇用機会や都市機能などの面で東京都の魅力度は依然として高く、コロナ禍の収束とともに一極集中を避ける動きも落ち着いてくるとの見方ができる。
※2 東京(23区)・大阪市・名古屋市・札幌市・福岡市。
3. ホテル及びオフィス
ホテルに目を向けると、コロナ禍以前はインバウンド需要の拡大等を背景として高い稼働率が続いてきた。
足元ではコロナ禍の影響が長期化し、ホテル稼働率は低調に推移しているが、中長期的に見れば、ワクチン接種が普及するなかで、政府による観光立国政策や構造的な需給バランスにより、回復に向かうものと考えられる。
また、アフターコロナを見据えたプレーヤーの選別も既に始まっており、今後は事業機会獲得に向けた機運も高まっていくものと見られる。
また、オフィスについても、働き方の変化(リモートワークやサテライトオフィスの普及など)による影響には注意する必要があるものの、同社が展開する地方大都市圏においてオフィス不足は深刻な状況にあり、ビジネス機会は十分にあると捉えることができる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
1. J-REIT市場
今後の成長戦略に重要な影響を及ぼすJ-REIT市場に目を向けると、2022年6月末の時価総額は約16兆3,160億円(前年末比1.4%減)、銘柄数は61となっている。
過去を振り返ると、リーマンショック後の金融引き締め等の影響により一旦低迷する局面があったものの、2012年以降は、国内景気の回復や長期にわたる金融緩和などにより拡大基調をたどってきた。
2020年に入ってからは、コロナ禍による経済全体の停滞懸念等により、ホテルや商業施設などを中心に大きく下落したが、景気変動の影響を受けにくい住宅や物流施設などは堅調に推移してきた。
また、ワクチン接種の進展による経済正常化への期待や低金利環境の継続見通しから、2021年には総じて回復傾向をたどってきた。
東証REIT指数の動向についても、好調な国内不動産市況(賃料相場の上昇等)などからしばらく好調に推移してきた。
特に、日本銀行による金融緩和政策の継続やこれまでの好調なオフィス需要などを背景として、国内外の機関投資家からは利回りを確保でき、キャッシュ・フローが比較的安定しているJ-REITに対する投資意欲は根強い。
コロナ禍の影響により、2020年3月に一旦大きく落ち込んだものの、2021年にはコロナ禍前の過去最高水準に戻ってきた。
ただ、2022年に入ってからは、米国の利上げ観測、国内でのオミクロン株感染拡大などによりやや軟調に推移している。
2. レジデンス(賃貸マンション)
賃貸マンションについては、入居者(利用者)及び投資家双方の旺盛な需要に支えられて好調に推移している。
東京都総務局の公表データによると、同社の供給エリアで高い比率を占める東京23区の人口は、東京都への転入超等を背景として増え続けてきた※1。
特に、若年層を含め、晩婚化や離婚率の増加などを背景として単身世帯の増加が目立っており、今後もワンルームマンションの賃貸需要を支えていくものと考えられる。
この傾向は、大阪や名古屋はもちろん、福岡、札幌など地方大都市圏においても見られており、国内人口が減少する一方で、人口の都市集中化が進んできた。
また、最近では在宅勤務に適したコンパクトマンションへの需要も高まる傾向にある。
それらを背景として、5大都市平均※2の賃料水準・稼働率は安定的な伸びが続いてきたうえ、コロナ禍においても堅調に推移している。
一方、投資家サイドでも、一等地物件などに海外ファンドなどからの1棟買いの引き合いが強い。
※1 ただし、コロナ禍が本格化した2020年4月以降、月別の流出入動向では、東京都への移住の見合わせや在宅勤務の増加などにより流出超過へと転じる状況も見られ、その結果、2021年12月末の人口(東京23区)は前年比で減少に転じた。
ただ、中長期的に見れば、雇用機会や都市機能などの面で東京都の魅力度は依然として高く、コロナ禍の収束とともに一極集中を避ける動きも落ち着いてくるとの見方ができる。
※2 東京(23区)・大阪市・名古屋市・札幌市・福岡市。
3. ホテル及びオフィス
ホテルに目を向けると、コロナ禍以前はインバウンド需要の拡大等を背景として高い稼働率が続いてきた。
足元ではコロナ禍の影響が長期化し、ホテル稼働率は低調に推移しているが、中長期的に見れば、ワクチン接種が普及するなかで、政府による観光立国政策や構造的な需給バランスにより、回復に向かうものと考えられる。
また、アフターコロナを見据えたプレーヤーの選別も既に始まっており、今後は事業機会獲得に向けた機運も高まっていくものと見られる。
また、オフィスについても、働き方の変化(リモートワークやサテライトオフィスの普及など)による影響には注意する必要があるものの、同社が展開する地方大都市圏においてオフィス不足は深刻な状況にあり、ビジネス機会は十分にあると捉えることができる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)