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シナネンホールディングスは上値試す、23年3月期営業横ばい予想だが保守的

発行済 2022-10-19 09:39
更新済 2022-10-19 10:05
© Reuters.  シナネンホールディングスは上値試す、23年3月期営業横ばい予想だが保守的

 シナネンホールディングス<8132>(東証プライム)は脱炭素社会を見据えるグローバル総合エネルギーサービス企業グループである。成長戦略としてシェアサイクル事業・再生可能エネルギー事業・新規事業への戦略投資を推進している。23年3月期は営業利益横ばい予想としている。経営基盤整備に向けたDX関連投資推進が減益要因となるが、仕入価格上昇分の販売価格への転嫁やシェアサイクル事業の利益貢献などで吸収する見込みだ。全体として保守的な印象も強く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合いが悪化する中でも年初来高値圏で堅調だ。そして05年高値に接近している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。なお10月31日に23年3月期第2四半期決算発表を予定している。

■グローバル総合エネルギーサービス企業グループ

 脱炭素社会を見据えるグローバル総合エネルギーサービス企業グループである。事業区分は、エネルギー関連のエネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)、非エネルギー・海外事業としている。国内LPガス流通事業者として国内3位規模である。

 22年3月期のセグメント別構成比は売上高がBtoC事業25%、BtoB事業68%、非エネルギー・海外事業6%、その他・調整額▲0%、営業利益がBtoC事業42%、BtoB事業23%、非エネルギー・海外事業8%、その他・調整額▲27%だった。なおLPガス・灯油販売は冬場が需要期となるため、収益は下期(特に第4四半期)に偏重する季節特性がある。

■BtoC事業

 BtoC事業(エネルギー卸・小売周辺事業)は、家庭向け・小売事業者向けLPガスなど各種燃料販売事業、リフォーム・ガス器具販売などの家庭向けエネルギー周辺事業、家庭向け電力販売事業、都市ガス供給事業、LPガス保安および配送事業を行っている。

■BtoB事業

 BtoB事業(エネルギーソリューション事業)は、大口需要家向け石油製品など各種燃料販売事業、ガソリンスタンド運営事業、電源開発および法人向け電力販売事業、太陽光発電システム販売および周辺サービス事業、省エネソリューション事業、住宅関連設備事業、国内外での再生可能エネルギー事業を行っている。マイクロ風車関連事業は21年3月末にさいたま市で実証実験を開始し、22年3月期下期には積雪地帯の北海道札幌市など多様な環境での実証実験を開始している。

 21年4月には再生可能エネルギー導入・調達ソリューションのクリーンエナジーコネクトと提携し、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)に依存しない非FITの太陽光発電所を活用したバーチャルコーポレートPPA(電力購入契約)による新たなビジネスモデル展開を共同構築すると発表した。PPAは企業が太陽光や風力などの電力を発電事業者から直接、長期に購入する契約で、次の再生可能エネルギー調達手段として注目されている。

 21年8月には、非FITによる電力供給が環境省の「令和3年度オフサイトコーポレートPPAによる太陽光発電供給モデル創出事業」に採択された。22年4月には、愛知県の施設運営管理会社ホーメックスと協力し、愛知県豊田市の汚水処理施設約260ヶ所に実質再生可能エネルギー100%の電力の供給を開始した。

■非エネルギーおよび海外事業

 非エネルギー・海外事業は、シナネンモビリティPLUSのシェアサイクル「ダイチャリ」事業、シナネンサイクルの自転車販売事業(小売店舗「ダイシャリン」および卸売事業)、シナネンエコワークの環境・廃棄物処理リサイクル事業(木質系チップなど)、シナネンゼオミックの抗菌事業(抗菌性ゼオライトなど)、ミノスのITシステム事業、タカラビルメンなどの建物維持管理事業などを展開している。

 韓国での大型風力発電事業は21年度下期中の商業運転開始を目指していたが、許認可取得が当初予定から遅れているため、計画を見直して商業運転開始時期を未定に変更(21年10月8日付リリース)した。また、ブラジルにおけるバイオマス事業は撤退を決定したが、新たなバイオマス事業への展開を検討している。

 シェアサイクル「ダイチャリ」事業は、OpenStreetが提供するシェアサイクルプラットフォーム「HELLO CYCLING」を活用して、シナネンモビリティPLUSが首都圏1都3県および大阪府を中心に展開している。22年3月末時点で、ステーション数が全国2200ヶ所、設置自転車数が1万台に達し、国内有数の規模となっている。22年2月には累計利用回数が1000万回を突破した。第3の交通インフラとして定着傾向を強めている。なお23年3月期第1四半期のユーザー数は前年同期比63.1%増加、利用回数は47.7%増加した。

 22年4月にはシナネンモビリティPLUSと、内閣府から「SDGs未来都市」に認定されている岩手県岩手郡岩手町が、「岩手町SDGs未来都市共創プロジェクト」の一環として、市街地内の交通手段の拡充を目的とした「利用者限定シェアサイクル」サービスを開始した。

 22年7月にはシナネンモビリティPLUSとOpenStreetが、神奈川県川崎市が実施する公共用地等を活用したシェアサイクル事業において、運営主体となる「OpenStreetシナネンモビリティPLUSグループ」として選定され、川崎市内全域でシェアサイクル事業の本格運用を開始した。

 22年9月には、環境ソリューション事業に取り組んでいる子会社シナネンファシリティーズが、滋賀県が実施する琵琶湖における令和4年度「水草等対策技術開発支援事業」に亜臨界水処理技術による実証実験が採択された。ダイオキシンやCO2を発生させない亜臨界水処理技術に着目し、亜臨界水処理装置製造・販売のG8インターナショナルトレーディング(神奈川県)と協力して行う。

■資本効率改善を推進

 第2次中期経営計画(20年度~22年度)は、第3次中期経営計画(23年度~25年度)の躍進に向けた基盤整備と位置付けて、定性目標に資本効率の改善、持続的成長を実現する投資の実行、社員の考え方・慣習・行動様式の変革を掲げている。

 資本効率・財務体質の改善では、既存事業の効率化と利益率向上、遊休・低稼働資産の有効活用または売却、資本効率の低い事業の撤退・売却と資本効率の高い事業への集中を推進する。

 持続的成長を実現する投資の実行では、既存事業の収益基盤強化のためのM&Aおよび建物維持管理事業におけるM&Aの実行、シェアサイクル事業・再生可能エネルギー事業・新規事業への戦略投資の実行、事業多様化や環境変化に値旺した基幹システムの整備・高度化およびDX(デジタルトランスフォーメーション)のためのIT投資を推進する。

 20年10月にはDX推進に向けて、インターネットイニシアティブ(IIJ)のデジタルワークプレース(DWP)を実現する各種サービスを採用して次世代IT基盤を構築した。21年12月には経済産業省が定めるDX認定制度に基づいて「DX認定事業者」の認定を取得した。

 22年5月には、中央電力とGMOメディアが共同開発したエネルギー業界に特化したポイントサイト構築・運営ソリューションを導入し、自社グループの顧客向けポイントモールサイト「brio point mall」が本格稼働した。将来的に会員数100万人を目指す。

 定量目標「持続的にROE6.0%以上」を生み出す事業構造確立を目指し、エネルギー関連事業ではM&Aによる顧客基盤とシェアの拡大、新規商材による顧客層の拡大と深耕などで経営基盤を強化し、非エネルギーおよび海外事業では個々の事業環境や特性に対応した成長戦略を推進する。そして既存事業の安定的成長と新規事業開発による高収益化を図る方針だ。なお株主還元は配当を基本として、配当性向30%以上を目安に安定的に配当する方針としている。

■サステナビリティ経営も推進

 SDGsへの取り組み、サステナビリティ経営も推進している。22年5月にはサステナビリティ基本方針を策定し、サステナビリティ推進委員会を設置した。22年6月には、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に対する賛同を表明し、賛同企業・団体などで構成されるTCFDコンソーシアムに参画した。

 22年7月には環境保全活動・社会貢献活動の一環として、一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団と事業別スポンサー契約を締結し、森林整備事業の支援を開始した。

 22年8月には、日本クルベジ協会が運営する「炭貯クラブ」において認証を受けたバイオ炭の農地施用によるJ―クレジットの購入契約を締結した。バイオ炭は農地の土壌改良に役立つとともに、植物が吸収したCO2を炭の中に閉じ込めて大気中への排出を抑える効果がある。今回のクレジット購入により、自社グループにおけるCO2排出量の相殺とともに、バイオ炭を活用した新規事業も検討する。

■23年3月期営業利益横ばい予想だが保守的

 23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比7.1%増の3100億円、営業利益が0.8%増の25億円、経常利益が14.4%減の28億円、親会社株主帰属当期純利益が16.6%増の29億円としている。配当予想は22年3月期と同額の75円(期末一括)としている。

 売上面は現状の原油価格・プロパンCPの水準を前提として増収を見込んでいる。利益面は、経営基盤整備に向けたDX関連投資推進が減益要因となるが、仕入価格上昇分の販売価格への転嫁やシェアサイクル事業の利益貢献などで吸収して営業利益横ばい予想としている。経常利益はデリバティブ評価益減少などで減益予想、親会社株主帰属当期純利益は固定資産売却益計上で増益予想としている。

 セグメント別営業利益予想は、BtoC事業が+1.5億円の11.8億円、BtoB事業が▲3.3億円の2.4億円、非エネルギー事業が+6.7億円の8.7億円、その他・調整額が▲4.7億円(うち人件費含むDX投資で▲2.4億円、人材投資で▲1.0億円)の1.9億円としている。

 BtoC事業の+1.5億円の内訳は、在庫影響の消失で▲9.3億円、石油・ガス増販(M&A含む)で+5.2億円、石油・ガス差益改善(価格改定)で+4.1億円、住設機器等増販で+4.7億円、コスト増で▲3.2億円としている。BtoB事業の▲3.3億円の内訳は、SS事業の回復で+1.4億円、電力事業の増販で+4.6億円、住宅の増販で+1.4億円、石油事業の差益悪化等で▲7.6億円、その他コスト増で▲3.1億円としている。非エネルギー事業の+6.7億円の内訳は、自転車事業の販売回復で+1.7億円、シェアサイクル事業の料金改定と回転率向上で+4.5億円、システム事業の顧客離脱とサーバー増強で▲1.1億円、建物維持管理事業の集合住宅好調と機器工事回復で+0.8億円、その他で+0.8億円としている。

 第1四半期は売上高が前年同期比44.2%増の711億94百万円、営業利益が50百万円の赤字(前年同期は4億17百万円の黒字)、経常利益が43.8%減の3億25百万円だった。原油価格やプロパンCPの高騰に伴う販売単価の上昇などで大幅増収だが、LPガスや電力の総利益悪化、IT関連投資を含む支払手数料や人件費など販管費の増加で営業赤字だった。親会社株主帰属四半期純利益は特別利益(固定資産売却益22億51百万円)計上で4.4倍の16億40百万円だった。

 エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)は売上高が15.3%増の159億69百万円、営業利益が1億37百万円の赤字(同2億02百万円の黒字)だった。平均気温が平年と比べて高く推移したためLPガス・灯油の販売数量が減少したが、原油価格やプロパンCPの高騰に伴って販売単価が上昇して大幅増収だった。利益面は主にLPガスの総利益が悪化し、販管費の増加も影響して大幅減益(赤字化)だった。

 エネルギーソリューション事業(BtoB事業)は売上高が63.5%増の505億01百万円、営業利益が45.3%増の93百万円だった。石油事業においてBtoC事業と同様に販売単価が大幅に上昇し、販売数量も増加して大幅増収だった。利益面は、電力調達コストが上昇したが、石油事業において原油市況変動に対応した仕入施策で差益を確保し、全体として増益だった。

 非エネルギー事業は売上高が3.1%増の46億64百万円、営業利益が0.8%減の1億22百万円だった。シェアサイクル事業(シナネンモビリティPLUS)が好調に推移し、環境・リサイクル事業(シナネンエコワーク)も取引高が回復したが、自転車事業(シナネンサイクル)の自転車販売が中国上海地区のロックダウンによる生産遅れの影響を受け、抗菌事業(シナネンゼオミック)も需要一服となった。システム事業(ミノス)は電力自由化に対応した顧客情報システム(電力CIS)が伸長した。建物維持管理事業(タカラビルメンなど)は運営エリア拡大などで増収だが、今期受託開始した大型物件の立ち上げに伴う一時的経費の影響で減益だった。

 その他・調整額(全社費用含む)は売上高が38.6%減の59百万円、営業利益が1億27百万円の赤字(同21百万円の黒字)だった。前期に実施した埼玉県川口市の固定資産売却で賃貸収入が減少したことに加えて、IT関連投資に係る支払手数料や人件費が増加した。

 第1四半期は営業赤字だったが、収益は下期(特に第4四半期)に偏重する季節特性があり、通期の営業利益横ばい予想を据え置いている。全体として保守的な印象も強く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は地合いが悪化する中でも年初来高値圏で堅調だ。そして05年高値に接近している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。10月18日の終値は4035円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS265円95銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の75円で算出)は約1.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS4922円46銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約526億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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