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アングル:オープンAI一強に変化、基盤モデルにライバルも

発行済 2023-03-31 19:01
更新済 2023-03-31 19:10
© Reuters.  3月29日、文章や画像、音声など多種多様なコンテンツを生み出せる「生成人工知能(AI)」市場は、今後900億ドルを超える規模に拡大すると予想される。2月3日撮影(202

[ニューヨーク 29日 ロイター] - 文章や画像、音声など多種多様なコンテンツを生み出せる「生成人工知能(AI)」市場は、今後900億ドルを超える規模に拡大すると予想される。これに伴い、そうした機能をつかさどる「基盤モデル」のサプライヤーは、もはや米マイクロソフトが出資するスタートアップ企業のオープンAIだけではなくなろうとしている。

AI関連アプリ開発企業や投資家らは、この分野の先駆者であるオープンAIの競争相手を迎え入れる態勢を整えつつある。その動機は、基本的なインフラをオープンAIだけに依存することへの警戒感や、特定のタスク専門に構築されたモデルの登場期待、コスト圧縮などさまざまだ。

オープンAI以外の基盤モデルを模索するこれらの動きは、生成AIを取り巻く世界が、次の段階に進む可能性を示すものと言えそうだ。

インサイト・パートナーズのAI投資家、ジョージ・マシュー氏は、競争を引き起こした他の技術革新に基盤モデルをなぞらえる。「インターネットサービスのプロバイダーは、1つしかなかっただろうか。これと同様に、(AI関連の)エコシステムが健全に機能するためには、複数の基盤モデルが必要になる」と語り、現時点でオープンAIが先行しているからと言って、今後も唯一の選択肢になるわけではないと付け加えた。

スタートアップ企業のトーム(Tome)が提供する、より手早くスライドを作成するAIツールは当初、オープンAIが2020年に初めて投入した基盤モデル「GPT3」の上で稼働する設計だった。

だが、他のモデルと協同する実験を開始。これまでにオープンAIと競合するアンスロピック(Anthropic)のモデルを採用したほか、写真生成モデルも現在のオープンAIの「Dall-E」からスタビリティーAIが手がけるオープンソースの「ステーブル・ディフュージョン」に切り替える計画だ。

トームのキース・ペイリス最高経営責任者(CEO)は、目指すのは最も迅速で質の高い動作を可能とするモデルを見つけ出すことだと説明した。

AI関連アプリ開発企業や投資家は、より信頼性の高いサービスを提供しながらコストを抑え、数多くの特化型モデルを利用できるようにするためにも、単一のモデルへの依存度を減らすべきだ、というのが新規産業における了解事項だと口をそろえる。

ただ、オープンAIは、同社の対話型ソフト「チャットGPT」の優秀さが多くの人々を驚かせ、一躍世間に知られるようになったのは間違いない。

マイクロソフトから100億ドルの出資を受けるオープンAIに対して、アルファベット傘下のグーグルや他の企業も新たなモデル開発にしのぎを削っているとはいえ、最近オープンAIが発表した新たな基盤モデル「GPT-4」は、依然として多くの尺度に照らして業界で最も高い性能を誇っている。

<複数モデルの利点>

調査会社・ピッチブックの見通しに基づくと、生成AI市場は2026年までに981億ドルに膨らむ。

そうした中で何層にも重なるAI関連アプリを動かす基盤モデルは、ベンチャーキャピタリストや戦略的な投資家からの投資が一番集まる分野だ。オープンAIなどのサプライヤー側にとっては、基盤モデルがアプリによってどのように利用され、サービスへの対価が支払われるかが鍵を握る。

来年までに10億ドルの収入確保を目標に掲げるオープンAIが今年想定する収入は2億ドル。GPT-4の料金は1000トークン当たり0.06ドル、チャットGPTは定額利用なら月額20ドルに設定されている。

一方で、スタートアップ企業の間からは、マイクロソフトが同社のAI関連顧客と競争関係になってしまう事態を懸念する声も聞かれる。マイクロソフトの検索サービスから業務アプリに至るまで、オープンAIのモデルが組み込まれているからだ。

オープンAIと競合するコヒア(Cohere)を支援するインデックス・ベンチャーズのパートナー、マイク・ボルピ氏は「これらのアプリの一部は取り扱いに注意を要する企業データを使っており、基盤モデル上では当該企業が彼らの顧客とのやり取りを見ることができる。(だから)多くの企業はマイクロソフト、あるいはマイクロソフトが影響力を持つ企業に頼るのを不安に感じるだろう」と指摘した。

AIによる自動文章作成ツールを手がけるジャスパー(jasper.ai)はオープンAIの基盤モデルとタッグを組んだものの、単一モデルに依存したくない、とデーブ・ロゲンモザーCEOはロイターに明かした。同社は実際、既にコヒアとアンスロピックのモデルも追加採用している。

別の自動文章作成ツール企業ハイパーライト(HyperWrite)のマット・シューマーCEOは、同社がユーザーの状況に応じて異なるモデルをマッチングしていると話す。例えば、長い記事を書くならオープンAIのモデル、より迅速かつ安い価格で完全自動の文章を作成するならコヒアのモデルといった具合だ。

単にオープンAIが需要増にうまく対応していないとの理由で、別のモデルに乗り換える向きもある。

セールス文書作成支援のレジー(Regie.ai)のスリナス・スリダーCEOは「オープンAIのサーバーは頻繁にダウンする。ユーザーにはより素晴らしい体験をしてほしいし、われわれとしても複数のモデルを使えば、より低コストで問い合わせに対応するのに役立つ」と述べた。

(Krystal Hu記者)

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